聖マリアンナ医科大学病院
監修者の記事一覧皆様は、「臨床で発赤の褥瘡ができたと思ったら、あっという間に深い褥瘡になってしまった」という経験をお持ちではないでしょうか? 今回は、褥瘡の早期発見と褥瘡の分類についての解説をします。
【褥瘡の定義】
日本褥瘡学会では、2005年に褥瘡を以下のように定義しました。 「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」 平たく言うと、体の外から加わった力(外力)と骨の間の組織が圧迫され、血流が悪くなって組織が損傷するのが褥瘡です。以前は、褥瘡は皮膚表面に加わった圧迫が原因とされ、表層から深部に組織の損傷が達すると考えられていました。しかし、見た目には損傷のない皮膚でも、深部の組織に損傷が生じていることがあり、急激に悪化する創として、皮膚表面に現れてくることがあります。 これが、近年注目されている ”DTI (Deep Tissue Injury) ”=「深部組織損傷」の可能性があります。後ほどこのDTIについても解説いたします。
発赤を見逃さない
何よりも大切なケアとして、発赤を早期に見つけて対処することが重要です。毎日、骨の突出部位を観察し、変化が生じていないかを観察します。 発赤を発見したときには、消退する発赤(反応性充血:真皮深層の微小血管の拡張)、もしくは持続的な発赤=褥瘡(ステージ1)であるかを見分ける必要があります。その方法として推奨されている方法が、「ガラス板圧診法」または「指押し法」です。いずれも圧迫した部位が白く消退すれば、反応性充血であり褥瘡に至っていない事がわかります。発赤が消退しない場合は、ステージ1の褥瘡と判定し、褥瘡ケアの介入をしていきます。
<ガラス板圧診法>
ガラス板(透明プラスティック板)を用いて発赤部を3秒間圧迫したあとに発赤が消退するかどうかを判定する方法。

<指押し法>
指で3秒間押して、指で圧迫している部分の下(指の際から観察)を観察し、発赤が消退するか否かを判定する方法。
ステージIの褥瘡発見後のケア方法
まずは、使用しているマットレスの評価をし直し、その患者にとって十分な体圧分散能力があるかを確認します。また、体位変換方法の再確認をし、圧迫の回避を行います。 摩擦・ずれから褥瘡部位を保護するために、ポリウレタンフィルムを貼ることもあります。 フィルム材貼付後は、褥瘡部位を観察し、水泡やびらんが生じた場合には、それに応じたケアに切り替えます。 また、最近はベビーパウダーを臀部周囲に散布し、パウダーの粒子が皮膚とおむつ面の摩擦を小さくさせるような工夫をすることもあります。
米国のNPUAPの褥瘡分類について
2007年にNPUAP分類が改定され、従来の「ステージ1~4」に加え「DTI疑い」と「判定不能」の2項目が追加されました。

※NPUAPのステージ1~4は、日本褥瘡学会の褥瘡の創評価分類DESIGN分類のd1~D4とほぼ同じ状態を示しています。
DTI(Deep Tissue Injury)について
DTI (Deep tissue Injury)とは?
「圧力及び/または剪断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する、限局性の紫または栗色の皮膚変色、または血疱」と定義さています。疼痛があり、触診で硬結・軟化・ブヨブヨした感覚、温かいまたは冷たいなどの温度の変化などの組織の変質が先行して生じる場合があります。 これが、私たちが臨床で経験していた、「小さな褥瘡だったと思ったら急激に広がった。」もしくは、「あざのような(黄色かったり紫色だったり)皮膚の変化だと思ったら、急に深い褥瘡になった。」などの病変の可能性があり、発赤と混同しやすいので、見極めが重要となります。
DTIに対するケア
今までお話しした通り、DTIは急激に悪化する創として表面に現れるまで、見た目では判断つきにくく、見た目に変化が出てきたときには既に深部が損傷してしまっているわけです。まずは、DTIにならないように早期からケアを続けるのはとても大切なことです。そして、DTIの可能性を発見したときには、早期から対策をしていく必要があるのです。 具体的な対策としては、やはり体圧分散が重要となります。 DTIを疑う病変を発見したらすぐに、深部の組織の壊死の進行を少しでも阻止するよう高機能体圧分散用具を使用していきます。

国内外の褥瘡ケアガイドライン
NPUAP / EPUAP とは?
日本の褥瘡学会と同様に、海外にも褥瘡の活動をしている団体があります。 最近よく聞く、NPUAPやEPUAPって何の略語だろう?と疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか? NPUAP (National Pressure Ulcer Advisory Panel)=米国褥瘡諮問委員会 EPUAP (European Pressure Ulcer Advisory Panel)=ヨーロッパ褥瘡諮問委員会 それぞれ、褥瘡のエキスパートが集まって、褥瘡に関する考えやガイドラインなどを策定しています。
各種ガイドラインについて
2月末に米国ワシントンDCで開催されたNPUAP学会に参加してきました。この学会では、NPUAP-EPUAP合同の褥瘡ガイドラインが発表されました。 また、日本褥瘡学会からも『褥瘡予防・管理ガイドライン』が発刊され、根拠に基づいたケアに活用できそうです。 次回以降もそれぞれのガイドラインの内容を生かし、褥瘡ケアを考えましょう。
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