乳がんでは、手術・化学・放射線療法などに対する有害事象として、さまざまな皮膚障害が現れやすいことがわかっています。今回は、患者さん退院後の社会生活に焦点を当て、皮膚障害に対しどのようなケアを行っていけばよいか、3人の認定看護師にお話しいただきます。

左から、座談会出席者の金井 久子さん、佐野 加奈さん、根本 弘美さん
02 退院後の社会生活に向けた看護のかかわり
――今回は、乳がん患者さんの退院後に目を向けたいと思います。患者さんの社会生活に向けた支援として、退院後の下着選びはとても重要な要素の1つだと思います。皆さんの施設では下着選びに関して、患者さんからどのような声が聞かれますか?
金井: 皮膚障害ではありませんが、1つは術後にドレーンが入っている患者さんからの「どんな下着をつければよいですか」というものです。
パジャマの下にもう1枚肌着をつけたいけれど、前開きのものがあまりない。バリッと剥がすマジックテープがついているような介護用のものしかない。そんなとき自由にはさみで生地をカットして成形できる製品※が市販されていることを紹介したりします。
また、乳房再建術の患者さんでエキスパンダーを入れている場合は、しばらく胸を揺らさないように固定しなければなりません。しかし乳房の大きさや形には個人差があり、なかなかよいブラジャーがみつけられないという声を聞きます。
佐野: 当院では乳房再建術を受けた患者さんは、担当医の指示があるまでの術後約1カ月はブレストバンドを装着していただいています。病院によりさまざまですね。
根本: 入院病棟あるいは乳腺外科で下着を紹介され、ある程度の情報をもっている患者さんでも、実際にはどれを選べばよいかわからないという声をよく聞きます。
これがよさそうだと思って購入してみても、いざつけてみると自分の体型に合わなかったり、普段自分が使用している下着と何が違うのかわからないという声もあります。
――そのような患者さんの悩みに対して、どのように対応されているのですか?
金井: 当院では、乳房再建術以外ではこの下着を使ってくださいというお話はしていません。ただ、患者さんによっては、入院前から下着について心配している人もたくさんいます。そこで術前オリエンテーションから下着の説明はしています。
また、患者さんのなかには市販の下着にさらに改良を重ねて、全摘用のブラジャーを開発するなど、とても工夫しているケースもあります。患者会が発行する冊子などには、下着だけでなく日常ケアのヒントがたくさん紹介されていますので、そういった患者さんから発信される情報も紹介して、参考にしていただいています。
――次のページでは、それぞれの施設での情報提供の仕方についてご紹介いただきます。
佐野: 当院では退院指導が早めに入るのですが、乳房の部分切除では術後1日目、全切除の患者さんでは術後2日目に下着の説明もしています。そこから退院までの1週間にわからないことがあればフォローしていきます。
また、院内で『乳がん術後の下着・パッドのアドバイス』という下着に関する冊子をつくっており、患者サロンには下着のカタログやサンプルも置いています。この冊子はDVD化してあり、ベッドサイド端末を通して閲覧することができます。患者さんへの情報提供としてはかなり充実しているのではないかと思います。
さらに乳がん看護認定看護師や乳腺外科病棟、外来の看護師が中心になり、「下着の勉強会」を年に4回開催し、新たな下着の情報を提供しています。もちろん患者さんも自由に参加でき、下着のことだけでなく患者さん同士で悩みを相談したり、情報交換する場にもなっていますね。
スタッフも勉強会に参加し、そこで得た知識を病棟の患者さんに還元してもいます。
根本: 下着の素材やデザインなど、実際に手に取って見られるといいのですが、当院にはそのような場はないため、放射線治療部では、体格やお仕事柄に応じて、素材や下着の色や形などをアドバイスしています。
乳房の大きい患者さんでは、乳房の下縁と腹部側の皮膚が密着することで、湿潤、摩擦が生じ、皮膚密着面でこすれる場合が多く、局所的に放射線性皮膚炎を助長させる可能性があり注意が必要なのです。
このような方へは、乳房を上げぎみに支え、かつ、きつく締めすぎないサイズのブラジャーの使用をお勧めしています。特に汗をかきやすい夏場には肌触りと吸湿性がよい素材の肌着を着用し、その上からブラジャーをつけるなどの工夫も伝えていきますね。
また、仕事をしながら通院しているある患者さんは、術後に授乳用の前開きブラジャーを勧められたが、これでは洋服に合わず仕事に行けないと困っていました。1人ひとりの患者さんがどのような生活環境にあるのか情報を得た上で、下着選びへのアドバイスを行うようにしています。

患者さんの生活環境をよく理解した上でのアドバイスが大切であると話す根本さん
佐野: 患者さんへの製品情報の提供には、プラス面とマイナス面があります。
例えば、病院から紹介されてしまうと、必ずしも必要ではない製品であっても、これがなければいけないと感じて購入してしまう人もいます。その分、経済的負担になってしまう場合もあるのですが、多くの患者さんははじめて経験するがん治療を前に、より多くの情報を求めています。
ただ今のところ、患者さんから「知らなくていいことを教えられた」という声は聞かされていませんので、やはりある程度の情報提供は大切なのではないかと思っているのです。(つづく)
次回は、皮膚症状や後遺症を抱えた患者さんの長期ケアについてお話しいただきます。
※自由にはさみでカットできる、肌にやさしい肌着について知りたい方はこちら

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