乳がんでは、手術・化学・放射線療法などに対する有害事象として、さまざまな皮膚障害が現れやすいことがわかっています。今回は、症状や後遺症を抱えた患者さんの長期ケアに焦点を当て、皮膚障害にどのようなケアを行っていけばよいかお話しいただきます。

左から、座談会出席者の金井 久子さん、佐野 加奈さん、根本 弘美さん
03 症状や後遺症を抱えた患者さんの長期ケア
――乳がん患者さんは、いったん治療を終了したあとも、再発の不安を抱えて長期にわたり経過観察や定期診断・治療を続けるケースがほとんどです。また再発や転移を繰り返し、治療を行いながら、生活を続ける患者さんも現れています。この環境のなかで、皆さんが感じておられることはどんなことでしょうか。
金井: 長期わたり、残り続ける有害事象を抱えて、QOLが低下していることを患者さん自身や医療スタッフが感じるようになってきたのは、ここ数年ではないかと思います。
症状がひどく悪化することこそありませんが、頭髪を例にとると治療開始当初、化学療法が終われば生えてくるとお伝えしていたにもかかわらず、3年経ってもかつらを手放せない患者さんもおられました。
爪もすでに生え変わってはいても巻き爪が治らないとか、末梢神経障害が年単位で残っている患者さんもいます。投与方法も点滴、飲み薬、注射と増え、患者さんの悩みも多岐にわたりはじめています。抗がん剤を10年以上使い続けている患者さんも出はじめており、今後どうなっていくのでしょうか。
こんななか、当院では昨年から看護外来を開設しました。がん看護専門看護師、がん化学療法看護認定看護師、乳がん看護認定看護師、リエゾンナースなどが、患者さんの相談を受ける体制を整えました。
佐野: 私は病棟に所属しているため、退院後の患者さんと直接かかわることはあまりありませんが、外来からの依頼があればいつでもWOCとして介入できます。
当院には、皮膚排泄ケア外来があり、ストーマや褥瘡だけでなく、がん放射線療法や化学療法による有害事象の皮膚障害へも対応しています。洗剤が残りにくい低刺激性の肌着※や無縫製のシームレスな肌着※などの紹介もしています。外来は院内の多職種チームと連携しており、患者さんを囲むように多職種でフォローしています。
先日も乳がんの患者さんで、抗がん剤による皮膚障害が悪化し、潰瘍形成と爪のトラブルを抱えて在宅に移る方がいました。そこで皮膚潰瘍に対してはWOCが、爪囲炎に対してがん専門看護師が、心理面には乳がん看護認定看護師が介入し、互いに情報共有してサポートしたケースがありました。
――次のページでは、社会復帰する患者さんへの継続的な支援についてです。
根本: 放射線治療を受けている患者さんでは、治療が終わると同時に、これでスキンケアも終わりと思ってしまう人がいます。ほとんどの場合がグレード1の放射線性皮膚炎ではありますが、治療終了から1~2週間以内にケアの不足で悪化する場合もあり、積極的な基本的スキンケアの継続を1カ月程度は最低支持してします。
また、グレード1~2で放射線性皮膚炎に対するケアとして、ステロイド軟膏や抗炎症作用のある軟膏ケアを開始した方は、そのケアの終了のタイミングがわからないなどの問題が生じます。そこで、治療が終了した1週間後くらいに再来を相談し、放射線性皮膚炎とケアの評価を行ないます。ケアの継続と終了を患者さん本人とともに評価をしています。

社会復帰していく患者さんへのケアの継続と終了の時期について語る
根本: 数年前までは、治療が終了した患者さんには、「皮膚にトラブルがあれば来てください」とお伝えしていたところを、現在では「放射線性の皮膚炎に関して気になることがあれば、いつでもご相談に応じますのでご連絡ください」と伝えるようにしています。
このように治療後の相談窓口を明確にして、対応する体制を示すことで安心感が得られるように配慮をしているのです。
放射線治療は毎日来るが故に、放射線治療に関連しない事柄の相談を受けることも多くあります。このような場合には、治療終了後の経過フォローについて、乳がん看護認定看護師をはじめ、診療科つきの看護師らと情報を共有し、診察時に立ち会えるように配慮し、診察後の看護面談などでフォローしてもらえるようにしています。

看護師は、退院後も相談できる存在になることが大切と話す金井さん
――社会復帰された乳がん患者さんへの支援として、いつでも相談できる窓口を開設しておいているということですね?
金井: すでに治療を終えて社会復帰している患者さんでも、どこか身体の調子が悪いとき、やはり再発に対する不安がよぎるのではないでしょうか。そんなとき患者さんからは、「これは医療者に聞いてよいことなのか判断できない、誰に聞けばよいのかもわからない」と耳にします。
その症状は受診したほうがいいのか不要なのか、見極めがつきづらい状態で、主治医に話を聞くことはなかなかできないでしょう。そんなとき、いつでも相談できる存在になり、個々の患者さんにあわせた具体的な表現で見極めてあげる存在が必要です。
患者さんによっては、家族やキーパーソンとなる人がいるケースもありますが、独身で家族がいない、治療を終えたら他に誰に相談すればよいかわからない、と困っている場合もあります。「何かあったら私たちに聞いてね」というメッセージを発信して、付き合いも5年、10年と続くと、看護師と患者の関係であっても、それぞれの人の価値観もよくわかってきます。
そうして、完全には消えないいくつかの症状や再発の不安を抱えて、社会で歩き続ける患者さんのキーパーソン的存在となり、「一緒に歩いていきましょう」と寄りそうスタンスがこれからのがん看護の1つの姿なのかもしれません。
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