
株式会社ケープ
監修者の記事一覧はじめに
新型インフルエンザH1N1型が発生し、水際封じ込め対策としての空港検疫や学校閉鎖等と大騒ぎとなりましたが、取り敢えず沈静化し、弱毒性とわかると日本はあっという間に「いつも通り」に戻ってしまいました。
しかしながら、新型インフルエンザは決して終息したわけではなく、今も南半球を中心に感染は広がり続け、6月29日現在全世界で約7万人の感染者、311人の死者が発生しています。
日本国内でも死者こそ今のところ出ていませんが、1196人の感染者が出ており、患者は確実に増えています。今年の秋冬にも国内を第2波が襲うことが予想されており、ウィルスの変異も含めて多くの専門家が警告を発しています。

【今後考えられるシナリオ】
鳥H5N1ばかりを気にしていたら意表をついて豚H1N1として登場、大警戒をしたところ弱毒で拍子抜け(?)、気が緩んだところで(ここからはフィクション)第2波として秋冬に強毒に変異したウィルスが猛威をふるい、季節性のインフルエンザも同時に発生、抗ウィルス薬も足りず、加えてタミフル耐性ウィルスも登場、ようやく新型H1N1用ワクチンが間に合いそうになってきたところで、満を持して鳥由来H5N1と交じり合った超新型インフルエンザが登場、抗ウィルス薬にも耐性...。
これが最悪のシナリオですが、考えられないことではありません。現在はスペインかぜの時と較べ、多くの武器と情報を持っているので当時のような被害が出ることはないと思いますが、具体的な対策をとらない限り甚大な被害が発生する可能性があります。
【今やらなければならないこと】
弱毒で大したことはなかった、騒ぎ過ぎだったとの批判がありますが、当初は正体がわからない病原体に対して強毒性のH5N1型を想定し、最高レベルで新型インフルエンザに対峙したのは当然の対応です。但し、その後実態がわかるにつれて柔軟に体制を変化させていくことができれば良かったのですが、今回はこの「柔軟に体制を変化させていくこと」が十分に事前に議論されておらず、混乱となりました。
ただし、この事態は日本政府だけでなく、WHOもウィルスの性質は考慮に入れず、感染の拡散度合いにより警戒水準を決定していたため警戒レベルだけが上がって実態にそぐわない過剰な対策が発動され、混乱を招いたというのが真相だと思われます。
今回のH1N1の発生は、むしろ予行練習および準備期間の機会を与えられたと認識し、来るべく第2波に向けて強毒に変異した場合でも対応できる最大限の防御体制を整える必要があります。
すべての医療機関がやらなければならないこと
6月25日に厚労省より新型インフルエンザの医療体制を含めた運用指針の改訂版が発行されました。本文は下記URLをご参照下さい。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/06/info0625-02.html
ここでは秋冬に向けて全国的かつ大規模な患者増加が起こる恐れ有りと警告、基礎疾患を有する患者で重症者が増加する可能性についても強調し、医療体制について大幅に加筆されました。 ポイントは下記の通りです。
- 発熱相談センター 文字通り、受診する医療機関がわからない人への適切な医療機関の紹介
- 外来部門における対応 全ての医療機関で診療を実施、その際の院内感染対策を徹底。空間的、時間的に発熱患者とその他の患者を分離し、特に基礎疾患を有する患者への感染が及ばないよう十分に感染対策を講じる
- 入院部門における対応 指定医療機関以外の一般医療機関でも入院を受け入れ。原則、陰圧病床は不要であるが、気管内挿管、人工呼吸器の使用時などは陰圧病床の活用を検討。都道府県の判断により、ハイリスク病院(透析やがん、産科等)を発熱患者の診療を原則行わない医療機関と定めることができる
また、改訂に当たっての基本的な考えとして、
- 重症患者の救命を最優先とする病床の確保および医療体制
- 基礎疾患を有するハイリスク患者の院内感染対策の徹底
- 秋冬に向けた第2波の性状の変化の早期探知
患者・医療従事者を感染から守る
今後強毒への変異が恐れられている新型インフルエンザですが、これまでのシリーズで述べてきた通り、その感染経路がほぼ予想されていることからその対策は非常にシンプルです。ウィルスの変異によりワクチンが効かなかったり、抗ウィルス薬に耐性が出る可能性が大きいことから、これらに過大な期待は禁物ですが、前回述べた個人防護具PPE、空調システムの整備は非常に重要です。再度ご確認下さい。
ポイントは、「基礎疾患のあるハイリスク患者を感染から守る」、そして「医療従事者を感染から守る」ことです。 6月26日にCDCの週報MMWRに「医療従事者の新型インフルエンザ感染」に関する研究が緊急報告としてアップされました。
院内感染した11名の医療従事者のうち、サージカルマスクおよびN95マスクを着用していたのは3名だけだった。この3名のうちN95を着用していた1名もフィットテストをしたことがなく、他2名はN95や目の防護は時々しかしていなかったというものです。
データ数が少なく情報も完全でなかったため、PPEの有用性を決定づけるものではないとの前置きがありましたが、PPEに関する勧告を履行していなかった医療従事者が罹患した事実がここに示されています。要訳は下記URLをご参照下さい。
http://www.micks.jp/news/headline/cdc20090626.html
また、外来において空間的に発熱患者とその他の患者を分離する方法として、前回もご紹介しましたが、簡易かつ安価に廊下を陰圧で封鎖できるユニットがあります。このユニットは空間を仕切るだけでなく、その封鎖部分にHEPAフィルターによる陰圧空間を実現し、汚染を物理的に遮断し、他の基礎疾患を有する患者や医療従事者の安全を守ることができます。

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