ONS(Oral Nutrition Supplementation)の重要性
がん患者さんでは、がん自体による直接的な影響のほか、手術や薬物治療の副作用に伴う食欲低下により、しばしば体重減少を認めます。
痩せは健常者においても死亡率を高めるほか(図1)1)、がんの発症にも関わる2)といわれ、日常的な骨格筋量の観察と、必要に応じた運動・栄養介入が求められます。
図1 一般的な死亡率とBMIの関係
患者さんの活動性を高めるには、十分なカロリーを摂取していただく必要があります。しかし、疾患や患者さんの状態により、通常の食事だけでは充分量の摂取が困難な場合も少なくありません。その際に有用なのが経口的栄養補助(Oral Nutrition Supplementation;ONS)です。
ONSの摂取で栄養の土台をしっかり築くことにより、通常の食事を食べられる気力と体力をつけることが期待されます。
最近の報告3)によれば、ONSの活用によって医療コストの削減、在院日数の短縮、30日以内の再入院リスクの低下に繋がったとも報告されており、ONSの有用性が裏付けされています。
栄養剤使用の実際と工夫
最近、外来で抗がん剤治療を受ける患者さんが増えています4)。
抗がん剤治療中に食事の面で困ったことがある方は、全体の半数以上を占めているにも関わらず、医師や栄養士から具体的な栄養指導を受けたり、栄養補助製品を使ったことのある人はまだ限られています5)。
外科治療に関しても、特に消化器がんの患者さんでは術後に体重が減少しがちで、しかも一旦減少した体重をもとに戻すのは至難の業です。そのため、患者さんにはONSの必要性をしっかりと伝え、継続的なONSにより栄養を確保することが重要です。
食道がん患者さんは、受診した時点で既に体重が減少していることがあります。
当科では、術前化学(放射線)療法時からONSを取り入れ、健常時体重以上に体重を増やしていきます(図2)2)。そして手術に耐えられる栄養状態を築き、術後に体重が減少しても、健常時の体重になるような管理を心がけています。
図2 術前化学(放射線)療法のONS介入イメージ
次のページは「積極的なONSがもたらすもの」「吉田先生からのメッセージ」です。
積極的なONSがもたらすもの
当科では食事摂取が可能な患者さんにも24時間持続の鼻腔栄養を術後3~6ヵ月、積極的に行っています。
なぜなら、先に述べた通り、受診時に既に健康時体重を下回っていることが多くあるからです。全身の免疫機構の多くが腸管に存在しているため、持続的な腸の使用を心がけています。
化学療法、外科療法、放射線療法というがんの三大治療法を繋ぐ上で、腸を意識した栄養の土台作り、シームレスな栄養管理は欠かせません。
実際に、この一連の栄養管理が体組成や栄養状態にどう影響しているのか、後方視的に検討した結果、がん治療中の各場面に応じたONSが体重維持と栄養状態の維持・改善に寄与する可能性が示唆されました。
継続的なONSを行うには?
ONSの利点は食事の負担を減らしつつも、最低限の栄養を確保できる点です。
例えば食事量が思うように増えない場合、思い切って夕食の量をいったん半分に減らしてみるのも良いかもしれません。
それができるのも、ONSで栄養の土台が築けているからです。地道にONSを続けることが気力や体力を回復させ、再び食事摂取量を増加していくことができるのです(図3)。
ONSは長く継続していただくことが重要です。その意味では、1回当たりの服用量を少なくし、多くのフレーバーから患者さんの嗜好にあう経腸栄養剤を選択することもONS選択のポイントです。
図3 ONSの介入イメージ
吉田先生からのメッセージ
がん治療を受けられる患者さんの治療や病気に対する不安を取り除き、明るい気持ちで過ごしていただけるようにすることが、我々医療従事者に与えられた使命です。
その意味で、積極的な栄養管理による体重減少の抑制は、周術期の合併症抑制や抗がん剤治療の副作用の軽減のみならず患者さんのQOL向上にとって大変重要な意味を持つと考えます。
参考文献
1)Rumiko Hayashi et al:Body Mass Index and Mortality in a Middle-aged Japanese Cohort.Journal of Epidemiology 15(3)70-77,2005.
2)国立研究開発法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ
3)TJ Philipson et al:Impact of oral nutritional supplementation on hospital outcomes.Am J Manag Care.19(2)121-8,2013.
4)国立がん研究センター中央病院独自調査、中医協総-1、H25/11/15
5)Q-life2014/2/28記事(http://www.qlife.jp/square/feature/nutrition/story39658.html)
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