小那木裕貴子
解説者の記事一覧超高齢社会に伴い増加する高齢な患者への看護。高齢者の皮膚は、さまざまな理由から脆弱化し、些細なずれや摩擦によって、スキンテアを起こしやすい状態にあります。しかし、スキンテアの予防や処置の方法をしっかりと確立できている施設は、まだ多くはありません。そこで、スキンテアを予防する方法や、またスキンテアの悪化を防ぐための創傷管理方法について紹介します。
高齢者の多い医療現場では皮膚が脆弱化・菲薄化したスキンテアリスクの高い患者さんも
東京都新宿区にあるJCHO東京新宿メディカルセンターは、長年「東京厚生年金病院」として親しまれてきた医療施設で、2014年4月より現在の名称になりました。「患者さまの立場に立った親切で心温まる医療」と「住民にとって必要な地域医療」の提供を理念とし、地域医療との連携が密接で、高齢の患者が多いという特徴があります。同院の内科病棟も、70~80歳の患者さんがほとんどで、なかには100歳を超える患者さんもいます。
船木さんは同院の看護ケア推進室で、皮膚・排泄ケア認定看護師として、院内の皮膚・排泄ケアに関する教育と相談業務を一身に担っています。
最近よく耳にするようになった“スキンテア”という言葉ですが、これは “主として高齢者の四肢に発生する外傷性創傷であり、摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって、表皮が真皮から分離(部分層創傷)、または表皮および真皮が下層構造から分離(全層創傷)して生じる( Payne R. & Martin M, 1993)”と定義されています。つまり、摩擦・ずれにより発生する外傷性創傷です※。
船木さんは、日常業務のなかでスキンテアを起こす患者さんが増えていると感じており、その理由についてこう話します。
「高齢者はもともと皮膚が脆弱化・菲薄化しており、日常のささいなずれや摩擦でスキンテアは発生します。
例えば、体位交換や車椅子での移動、入浴リフトでの介助、手術室でのベッド移乗時などに、無防備な状況で皮膚がぶつかって剥がれたり裂けてしまったりします。また、絆創膏を剥がすときに一緒に皮膚が剥離してしまうケースもあります。
更に、抗がん剤治療やステロイドを長年使って皮膚が菲薄化している方、抗凝固薬や抗血栓薬を使用している方は、皮下出血を起こしている部位の皮膚の結合が脆弱となっています。
このような方はスキンテアのリスクが高まります。当院でも高齢の患者さんや抗がん剤による治療をしている患者さんが多く、月に3~5例はスキンテアの患者さんの処置をします」
スキンテアへの処置 3つのポイント
スキンテアの処置にとって大切なことは、「洗浄と出血コントロール、感染徴候の観察、撥水と保護が基本」と船木さんは説明します。
1.洗浄と出血コントロール
まず創部を洗浄し、出血の有無を確認する。すみやかに出血への処置を行う。
●日本創傷・オストミー・失禁管理学会が提唱する「STARスキンテア分類システムガイドライン」※に従い、創部と皮膚の状態を評価する。
●皮弁を可能な限り戻し、出血がある場合は止血効果の高いアルギン酸塩創傷被覆材(ソーブサン®など)を使う。 皮弁を戻した創部の例
●広範囲に紫斑となっている場合(写真上)も、アルギン酸塩による創傷被覆材を使用すると早期に紫斑が改善され、紫斑部の皮膚の生着も進む(写真下)。
2.感染兆候の観察
外傷であり、感染に移行しやすいため、通気性の良い被覆材で保護し、数日は被覆材を交換して感染徴候を観察する。
●受傷直後で明らかに感染や出血がないときは、上皮化を早めるために閉鎖環境を提供できる、シリコン製の創傷被覆材で閉鎖する。
●透明でない被覆材では、誤った方向に剥がさないよう、被覆材に矢印で剥がす方向を記すとよい。
次のページは「3.撥水と保護」、「被覆材を使用する際の注意点」です。
3.撥水と保護
●創部に浸出液がある場合や浸軟リスクのあるテアでは、浸軟を生じると創部や周囲の皮膚がより脆弱化し、剥離範囲の拡大のおそれがある。
●そこで撥水クリーム(リモイス®バリアやキャビロンTMスキンバリアクリームなど)などを創周囲に加え皮弁にも塗布し、保護効果のある創傷被覆材を用い創部を安静にしたところ、中央の遊離していた皮膚が生着し、皮膚欠損部の上皮化も早く進んだ。
【転倒し表皮剥離を起こした例】
カテゴリー2a(皮膚の欠損、皮弁の色は悪くない)。エスアイエイド®で保護し、2 日後にコンサルテーションがあった。 両下腿に、静脈うっ滞性皮膚炎による色素沈着があり皮膚の乾燥著明。
リモイス®クレンズで洗浄し、リモイス®バリアで周囲を保湿・保護し、ソーブサン®+生食+エスアイエイド®で処置し、6日後、中央部の皮膚が生着したため、閉鎖湿潤環境に。
スキンテアの処置では創部の感染を防ぐため数日は閉鎖環境にせずに観察を
被覆材を使用する際に、注意したいことがあると船木さんは言います。
「受傷直後でも、感染の可能性が低い場合や明らかに出血がない場合には、上皮化を早めるために、すぐに閉鎖性の創傷被覆材を使うことが基本となりますが、いきなり創部を閉鎖してしまうと、その後、感染が広がるケースがあるのです。
そこで当院では、2~3日はドレッシング材をこまめに交換して観察することを勧めています。様子をみて感染徴候がなければ、ソフトシリコン製のドレッシング材などで閉鎖します。紫斑があると真皮の結合ができていないため、容易にスキンテアを起こしやすく、シリコン製のドレッシング材で保護することが重要となります。このときに重宝するのが“エスアイエイド®”です。
エスアイエイド®は、創傷保護用のシリコーンゲルドレッシングで、適度な粘着力を特徴としているため、粘着力が強すぎずに剥がしやすく、通気性が良い点がスキンテアの管理に向いています。特に、こまめに交換しても、皮膚や創部を傷つけることなく管理できます。
また、観察の際のポイントは、誤った方向に剥がして創部を悪化させないよう、特に皮弁が残っている場合は被覆材に矢印を書き、剥がす方向を記すことです。これは、日本創傷・オストミー・失禁管理学会も推奨しています」
次回は「皮弁が残るスキンテアや皮下出血のあるスキンテアへの処置例」について解説します。
※日本創傷・オストミー・失禁管理学会(http://www.jwocm.org/)2015年6月16日確認
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