高齢患者さんの皮膚はさまざまな要因により菲薄化、脆弱化しやすくスキントラブルが起こりやすい状態となっています。
最近取り上げられているスキンテア(以下、テアとする)もその一つです。
そこで、今回は高齢者ケアに携わるエキスパートがテアの原因として考えられているドライスキンとテープトラブルの予防について解説します。
高齢者の脆弱な皮膚に起こるトラブル
高齢者の皮膚の特徴としては、まず新陳代謝の低下が挙げられます。新陳代謝とは古い皮膚から新しい皮膚へ生まれ変わるサイクルのことをいい、この サイクルの正常な周期は28日といわれています。
しかし、新陳代謝が低下した高齢者はこの周期が延長するため、なかなか新しい皮膚へ再生されず傷の回復が遅れるというわけです。
その他、いくつもの要因により高齢者の皮膚は脆弱化しています(表1)。

【表1】高齢者の脆弱な皮膚
そして、最大の特徴といえるのがドライスキンです。表皮の角質層は、皮脂膜によって外界の刺激から身体を守ると同時に、体内からの水分の蒸発、乾 燥を防ぎます。
しかし、加齢とともに角質の水分量が減少、皮脂成分の分泌も低下するため、ドライスキンに傾いてしまいます(図1)。
ドライスキンは掻痒感を伴うことが多く、掻破することで創傷形成や炎症、感染症の誘因となるだけではなく、食欲の低下や意欲低下、睡眠障害、夜間 不穏など生活自体に影響をきたすことがあります。
ドライスキンになると皮膚のバリア機能は破綻していますから、乾燥が助長され、軽微な外力であっても過度な摩擦刺激となり、皮膚が損傷されるリスク が高くなります。
高齢者の場合は、認知機能や運動機能の低下もみられます。そのため、移乗する際には方向転換がうまく行えずふらついてしまったり、ゆっくり腰かけられずドシンと座ってしまい、車いすのフットレストやベッド柵などにぶつかってしまうことが多々見られます。
さらに、介助を受ける機会も多く、その際に生じる人為的な摩擦刺激や機械的刺激によって、創傷を形成してしまうことがあります。高齢者の皮膚は脆弱となっていますので、腕を優しく掴む行為でも、簡単に皮膚を損傷させてしまうことがあるのです。

【図1】皮膚の構造
次ページでは、スキンテアとはどんなものかについて解説します。

このような創傷をみたことありませんか? 骨突出部ではなく、圧迫が原因でもなく……一体なんなのだろう? と思ったことはないでしょうか。
これらの創傷をテアといいます。ドライスキンであることや介助を要するために、人為的な摩擦やずれなどの刺激が加わりやすい高齢者の皮膚に起こりやすい創傷です。
テアとは、「主として高齢者の四肢に発生する外傷性創傷であり、摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって、表皮が真皮から分離(部分層創傷)、または 表皮および真皮が下層構造から分離(全層創傷)して生じる」(日本語版STARスキンテア分類システム用語集より引用)と、定義されています。
テアの原因はさまざまありますが、高齢者の皮膚が脆弱であること自体が原因といえます。そこに、テープによる剥離や一時的な摩擦・ずれが加わって 生じるものと考えられています。
前述したようにドライスキンの場合には、わずかな外力によっても皮膚が損傷してしまいます。自立していればかからない外力も、要介助状態ではかか る場面が多く、テアのリスクは高まります。
つまり、ドライスキンに傾きがちで、ADLや認知・運動機能が低下しがちな高齢者の場合、テアは誰にでも起こりうる創傷と考えられます。
予防のためには総合的なケアが必要なのですが、ここでは、テアの原因のうちドライスキンとテープトラブルの2つを取り上げ、予防策についてまとめます。
次ページでは、ドライスキンとテープトラブルの予防について解説します。
ドライスキンとテープトラブル予防のための愛護的ケア
ドライスキンとテープトラブルの予防としては次のようなことが挙げられます。
愛護的スキンケア
高齢者の皮膚ではアルカリ中和能も低下しており、弱酸性の皮脂膜に戻すために時間がかかるため、皮膚、皮脂膜と同じ弱酸性の低刺激洗浄剤の使用を お勧めします。
また、ごしごし擦ると皮膚を傷つけるので泡でなでるように洗います。身体を拭くときも擦らず、押さえ拭きをします。
便失禁時にもごしごし擦るように拭き取らずに、つまみ取るようにしやはり押さえ拭きをします。
洗浄後は保湿ローションやクリームを塗ってしっかりと保湿しましょう。このときも、擦らずにやさしくなでるように、包むように、押さえるようにし て塗ります。
また、保湿はできれば1日2~3回行うとよいでしょう。
非固着・微/低粘着のテープの選択
テープはできるだけ貼らなくてすむ工夫をすることが大切ですが、どうしてもテープを使用しなければならないときは、剥離刺激の少ない皮膚にやさしいものを選択します。
当院では主にスキナゲートTMや優肌絆®を使用しています。
肌のコンディションで使用感が異なることから、十分なアセスメントの上、適切なものを選びます。
ドライスキンや凹凸のある皮膚、保湿後のしっとりした皮膚には基材が柔らかく追従性の高いスキナゲートTMを選択します。
しかし、スキナゲートTMは柔らかいため、貼る途中でよれてしまったりくっついてしまったりして、患者さんや家族が上手く貼れない場合があります。
その際には、基材が硬めの優肌絆®を選択します。

【図2】東京都健康長寿医療センターにおけるテープの使い分け
愛護的なテープの貼り方、剥がし方
テープトラブルの大きな原因となるのがテープの貼り方・剥がし方です。適切なテープを選択しても、間違った貼り方・剥がし方をすれば、トラブルが起こります。正しい方法を理解することが大切です。
●貼り方 あらかじめ必要な長さ、枚数に切っておき、圧をかけずにガーゼ等の固定したい物に沿わせて貼ります(図3)。
テープを切らずに貼付すると、皮膚にテンションがかかってしまい、テープトラブルの原因となることがあります。
●剥がし方 片手で皮膚を押さえ、テープの角度を90度以上にして、ゆっくりと剥がしていきます(図3)。

【図3】医療粘着テープの貼り方、剥がし方
外力(圧迫、摩擦など)の低減
体位変換では患者さんを引きずらずに安楽な体位に整えます。
ベッドの頭側挙上では、股関節基部とベッドの下肢屈曲部を合わせ、下肢から挙上し、必ず背抜き・足抜き・肩抜きなどを行い圧や摩擦を解除します。
環境整備
湿度が低いと皮膚は乾燥します。そのため、濡れたタオルをベッド柵にかけたり、必要であれば加湿器の導入を検討し、適度な湿度を保てるように整え ます。
また、ベッド柵やフットレストにカバーを付けたり、寝巻は長袖にしたり、レッグウォーマーやアームウォーマーなどを着用するのも効果的です。
テープ貼付時には、患者さんの肌のコンディションを整えることが一番で、その上で患者さんの皮膚に合ったテープ選択が大切です。
テープについて詳しく知りたい方はこちらからご覧ください
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