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用語の説明

道徳的苦悩とは、価値観や信念に基づいて「こうするべきだ」と判断しているにもかかわらず、何らかの理由で行動できないときに生じる精神的な苦痛や葛藤のことを指す。NANDA-Iの看護診断では「選択した倫理的または道徳的な決定や活動を、実行できないことへの反応1)」と定義されている。

例えば、生活習慣病の患者さんが運動習慣を身につけられなかったり、自らの意思で禁煙外来に通院している患者さんが、我慢できずに喫煙してしまい、自己肯定感の低下が生じるケースなどがある。

道徳的苦悩を引き起こす背景としては、意思決定にかかわる人々の意見が一致しない、治療やケアの方向性についての選択が難しい、終末期における療養方針の決定が困難であるといった状況が挙げられる。また、限られた時間のなかで決断を迫られる状況や、周囲の判断に従わざるを得ない場合も、自らの意思が尊重されないと感じることで、苦悩を深める一因となる。

道徳的苦悩は表面に現れにくく見過ごされやすいが、患者さんの尊厳やQOLに深くかかわる問題である。看護師は患者さんが自身の価値観に沿って意思決定できるよう信頼関係を築き、患者さんと家族との意思疎通を調整するとともに、必要に応じて多職種との連携や心理的支援を行うことが求められる。

用語を使用した例文

  • 患者さんが治療方針に対して葛藤を抱えていることから、道徳的苦悩と判断し看護計画を立案した。

引用・参考文献

  • 1)T.ヘザーハードマン,編:NANDA-I 看護診断 定義と分類 第12版.医学書院,2021,p.447.

執筆・監修者

林 洋

東京有明医療大学

監修

山﨑博貴

執筆

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