2018年12月3日、獨協医科大学(栃木県下都賀郡)にて、「―知覚・痛覚定量装置―PainVisionの運用と有用性」セミナーが開催されました。
獨協医科大学麻酔科学講座の山口重樹先生の座長のもと、東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座麻酔科学・周術期医学分野の山内正憲先生、東北大学病院生理検査センターの三木俊先生が、知覚痛覚定量分析装置PainVision(ペインビジョン)を用いた痛み・知覚の定量評価と治療への活かし方について解説しました。
共催:獨協医科大学/ニプロ株式会社
2018年12月3日、獨協医科大学(栃木県下都賀郡)にて、「―知覚・痛覚定量装置―PainVisionの運用と有用性」セミナーが開催されました。
獨協医科大学麻酔科学講座の山口重樹先生の座長のもと、東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座麻酔科学・周術期医学分野の山内正憲先生、東北大学病院生理検査センターの三木俊先生が、知覚痛覚定量分析装置PainVision(ペインビジョン)を用いた痛み・知覚の定量評価と治療への活かし方について解説しました。
共催:獨協医科大学/ニプロ株式会社

鎮痛効果の客観的評価

東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座 麻酔科学・周術期医学分野 教授 山内 正憲 先生
痛みには心理・社会性痛、侵害受容性痛、神経障害性痛の3つの種類があり、身体的な痛みとしては、侵害受容性痛と神経障害性痛の2つが基本となります。
侵害受容性痛はヒリヒリ、ピリピリ、ズキズキといった、いわゆる炎症に伴う痛み、神経障害性痛はしびれる、しめつける、触るだけでも痛いといった、いわゆる神経が直接障害されることによって起こる痛みを指します。帯状疱疹を例にとると、急性期の神経に沿った皮疹に伴う痛みはおもに侵害受容性痛で、その後6カ月以降も続く帯状疱疹後神経痛のほうは神経障害性痛になります。
刺激をだんだんと強くしていくと、ある段階から痛みを感じるようになります。痛み反応が起こる刺激強度を侵害刺激、それよりも弱い刺激を非侵害刺激と呼びます。痛み刺激が繰り返されると、同じ刺激に対する反応が増強されることが知られています(痛みの感作)。神経障害性痛では、痛み刺激をより強く感じてしまう痛覚過敏や、非侵害刺激のはずのわずかな刺激でも痛み反応が起きるアロディニアなどがみられます(図1)。

痛みの種類や強さを厳密に判断・評価し、定量化するのは極めて難しいことですが、これまでにサーモグラフィ、超音波エラストグラフィ、そしてPainVision(ペインビジョン)といった方法で、痛みの定量化が図られています。
サーモグラフィは、鎮痛によりストレスが軽減されると血流が増加し、体温が上昇することを利用したもので、測定しているのは痛みではなく温度です。超音波エラストグラフィは、超音波を用いて組織内の硬さ分布を画像化したもので、測定者のテクニックに左右される難しさがあります。いずれも神経ブロックの効果判定などに用いられています。
ペインビジョンは、痛みを電気刺激に置き換えて評価する方法です。痛みに直接アプローチすると同時に、測定者のテクニックに左右されにくい利点があります。電流値を少しずつ上げていき、初めに感知する「最小感知電流値(電流知覚閾値)」と痛み刺激として感じる「痛み対応電流値」を測定することで、痛みを数値化します。
同じ刺激(痛み対応電流値)であっても、電流知覚閾値の低い敏感な人と、電流知覚閾値が高く鈍感な人では、痛みの意味合いは変わってきます。痛み対応電流値と電流知覚閾値の差が、その人が感じている痛みの大きさを表しています(図2)。

痛みの治療には、「痛い」「痛くない」だけでなく、病態診断や生理的な状態を考えることが重要です。それには患者さんの主観だけでなく、電流の量に変換して客観的に痛みを数値化することは非常に有効です。さらに、さまざまな場面で患者さんへの説明ツールとしても役立っています。
ペインビジョンの運用と測定

東北大学病院 生理検査センター 生理検査部門長 三木 俊先生
ペインビジョンは、痛みと知覚を数値化できる検査です。東北大学病院では、電子カルテ上での検査のオーダーと、統合画像管理で検査結果の閲覧が可能なシステムを構築し、運用しています。
痛みの評価には各種疼痛やしびれ、鎮痛薬の薬効評価があり、知覚の評価としては糖尿病神経障害、手根管症候群、加齢に伴う神経障害、神経再生、その他疼痛などによる知覚過敏の評価が挙げられます。
測定原理は、測定したい痛みの強さをいわゆる電気刺激に置き換えることで、電流値として数値化しています。
安静・リラックスした座位で、前腕内側にディスポ電極EL-BANDを装着して50Hzの電流を少しずつ流し、電極部に違和感を認めたとき、ボタンを押してもらいます。この電流値が神経の感じやすさ「最小感知電流値(電流知覚閾値)」を示します(図3)。神経鈍麻になると、大きな電流値しか感じなくなります。さらに電流を上げていき、測定したい痛みの大きさと電極部の刺激の大きさが同等と感じたとき、ボタンを押してもらいます。こちらの値は痛みの大きさ「痛み対応電流値」を示します(図4)。原則として3種類の電流上昇時間を用い、3回測定の平均値を用います。


痛み評価のための指標として、電流知覚閾値と痛み対応電流値を用いて「痛み度」を算出します。
★「痛み度」の算出方法
痛み度=100×(痛み対応電流値-電流知覚閾値)/電流知覚閾値
(痛み対応電流値-電流知覚閾値)は、痛みの大きさから、痛みとして感じていない刺激の大きさを差し引いたもので、実際に感じている痛みの大きさを示しています。
当院では、糖尿病患者さんはじめ、知覚異常に気づいていない人が多くみられることから、電流知覚閾値を測定することが増えています。薄型に改良した指先用電極EL-PATCHを用いて、手足の指先の電流知覚閾値を調べることが可能になり、末梢神経障害の評価に役立っています。
患者さんからは「測定するまで、母指の知覚が悪くなっていることに気づかなかった」「痛みを言語化するのは難しいので助かる」といった声が寄せられています。同じ痛みであってもがまんできない痛みと感じる人と、全く平気な人がいることが、数値化されてみえることは素晴らしいことだと思います。痛みを視覚化して適切な治療につなげたり、薬剤の効果が得られているかの判断にも活用できる可能性を秘めていると考えます。
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