患者さんがご臨終を迎え、本人の人格やその尊厳を失わないよう、ご遺体がケアする人の手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。
第3回では、包帯で手首をしばった部分に圧迫跡ができ、不可逆変化により元の状態には戻らないというお話をしました。
今回は「顔をしばたために起こってしまった死後変化」の事例と、その対処法としてのエンゼルメイクの使用用具のご紹介をします。
顔をしばったために起こりうる現象
ご遺体の口が大きく開いているとき、それを閉じるためにいままで全国のケアの現場では、やむなく包帯をあごの下にまわし頭頂部でぐるりとしばることがありました。
しかし包帯で顔をしばることにより、組織間浮遊液の移動が止められて、局所的浮腫をもたらします。さらに、ご遺体の死後変化による皮膚の「乾燥」と「脆弱化」(第3回)の影響が進んでいる関係で、しばった箇所は輪っか状の圧迫跡につながります。
顔はとくに露出している部分ですので、圧迫跡がついてしまうと、非常につらい印象になります。ご家族から「しばったら息苦しそう」「首を吊ったのかと思われてしまう」という声が聞かれたこともありました。
そこで、エンゼルメイクの「その人らしい装いに整える」考えをもとに、お顔やその周辺に圧迫跡が極力残らない方法、顔まわりをしばらない工夫をご紹介しましょう。
表皮が削れると真皮が露わになります。そのことで乾燥がさらに加速します。ほんの短時間に乾燥が進んだことにより色が茶褐色に変化し、水分が失われて硬くなり革皮様化が起きたのです。
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