荒川直美
解説者の記事一覧(協賛:株式会社ジャンパール)
乳がん術後の患者さんは、肌トラブル、リンパ浮腫、ボディイメージの変容など多くの問題に直面します。
最後まで治療をやり抜くためには、患者さんへの看護師による適切なセルフケア支援が欠かせません。
患者さんの抱える問題を軽減し、よりよいQOLを保てる指導をすることが重要です。
看護師が行うべきセルフケア支援の方法を、具体例と共に実践的な講義の中からお伝えします。
副作用のつらさが、治療の妨げになる患者さんがいる
土井さんはまず、急速に進歩、多様化してきた乳がん治療の変遷を紹介。これに伴い副作用も多様化し、つらい症状が増えたことから、途中で治療を断念してしまう患者さんが多い現実を説明しました。
治療法ごとの副作用について解説し、肌トラブルを中心に具体的な例を示しました。手術で起こるのは、縫合によるひきつれや癒着、知覚障害、分泌腺の障害。放射線療法によるのは、乾燥性皮膚炎、落屑、色素沈着。ホルモン療法では老人性乾皮症が起こる場合があり、化学療法では、乾燥、肌荒れ、発疹、くすみ、しみ、爪の変化、ハンドフット症候群ほか多様な症状がみられます。
最近増えている分子標的薬によっても座瘡様皮疹、脂漏性皮膚炎、乾皮症などが起こります。さらに、治療に伴うストレスからも肌荒れ、かゆみなどの肌トラブルが生じ、引っかき癖や抜毛癖が起こることも紹介しました。
医療とセルフケアの両輪で、副作用を乗り越え治療を完遂
土井さんは、これらの副作用を予防・軽減することが、治療の完遂を可能にすると強調。生命予後にも影響を与えることから、副作用対策の重要性を提唱しました。
副作用はつらさをもたらす半面、治療効果の現れでもあります。それを患者さんに示し、これまであまり顧みられなかった副作用に対する医療的処置を行うことで、治療成績を上げられると土井さん。特に退院時のスキンケア指導は保険適用であり、医療的処置とともに適切に行うことが求められると話しました。
また、副作用による肌トラブルには、セルフケアによる予防・軽減も有効です。看護師は通り一遍の情報提供で満足せず、患者さんがきちんと理解し、積極的に実践できるよう、いつ、何を、どの程度、どのようにと、より具体的な指導をすることが治療完遂のもう一つの決め手になると訴えました。

セルフケア支援のあり方─保湿オイル、入浴剤の活用例
土井さんは、肌トラブルに対するセルフケアのカギは「保湿」であり、「乾燥させない」「こすらない」「日に当てない」が三大原則であると話し、具体的対策を述べました。
- ●オイルやクリームで保湿する。放射線療法や化学療法では、治療開始前から予防的に行うとよい。ただし、放射線照射直前、直後は避ける
- ●肌を刺激しないよう、洗浄・入浴に配慮し、柔らかく圧迫のない下着を選ぶ。皮膚に強い力のかかる運動は避ける
- ●直射日光に当たらないよう、日焼け止めクリームを塗り、マスク、帽子、日傘などで日よけをする
また、実際に効果を感じた例として保湿オイルと入浴剤を挙げ、バイオイルによる使用感試験の結果(33例)を紹介。術後の患者さんが3カ月間バイオイルを使った結果、縫合創の改善が早まり、乾燥はほぼ全例で改善。放射線療法による乾燥や色素沈着の改善にも有効例が多く、術後早期(6カ月以内)に使用を開始した患者さんほど改善度が高かったことを報告。
さらに、オイルで術後の傷跡をマッサージしたことが、肌トラブルの改善だけでなく、患者さんに傷跡や自分をいたわる気持ちをもたらし、治療継続につながった例を紹介、これが次の一歩を踏み出すきっかけになると述べました。
一方、カミツレの入浴剤(華密恋)にも副作用軽減の効果があると話し、オイルと組み合わせることで保湿効果がより高まった例を挙げました。
セルフケア指導には、具体的な働きかけが必要で、続けるコツの指導も重要であると指摘。バイオイルによるセルフケアを指導する際には、実際に患者さんの肌に塗ってみせ、適切な量や塗り方を示すことで、自発的なケアに導くという土井さん自身のやり方を示しました。
そのほか、「ひきつれやリンパ浮腫予防のストレッチを指導する場合は、患者さんと一緒に行ってやり方を示す」「乳がんの健側での自己触診を指導する場合は、しこりの感触を体験させるため、ペットボトルのキャップをタオルで包み料理用ミトンに詰めたものを用意して触らせる」など、実演も交えた具体的なアドバイスがありました。
セルフケアを支援するさまざまな取り組み
(湘南記念病院かまくら乳がんセンターの例)
ストレッチとダンスを取り入れた楽動体操 インストラクターの指導で術後のリハビリ体操を行っている。がん体験者のプロダンサーがボランティアでウォーキングや簡単なダンスを指導。

ハイキング・温泉旅行と勉強会 患者さん、家族、医療者が参加。行動を共にし、同じ料理を食べることで、患者さんと医療者、患者さん同士の距離が縮まる。がんとの付き合い方などの勉強会も開催。
ビューティーセミナー 療養中も変わらない気持ちで生活するために有効な美容法をアドバイス。治療で眉毛が抜けた場合のメイク方法などすぐに役立つノウハウ指導のほか、化粧をすることが自分を支えるために重要な意味を持つことを伝える。
\ この記事をシェアする /














