医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。しかし、病棟業務の中では、複数の患者への治療や処置が決められた時間に適切に実施されなければならないことが日常的です。また、心身が辛い中で療養している患者は、忙しそうに働いている看護師に対して、自分から治療上の悩みや困難さを訴えるのも勇気のいることでしょう。
そこで今回、患者の病いの語りをデータベース化しているDIPEx-Japanの協力のもと、看護師が患者に対応する上で知っておくべき患者の気持ち・考えを解説します。
語ることは患者が自分自身の考えを整理する機会になる
患者さんの入院目的はそれぞれ異なりますが、治療目的で入院された場合、看護師は当然のようにその目的に合わせて看護を計画し、実践します。
しかし、治療を受けるということに100%納得し、気持ちの整理がついた状態で入院される患者さんばかりではありません。特にその治療がその人の今後の生活や自分らしさに影響をもたらすものである場合、迷ったまま入院される方もいます。
45歳で乳がん治療のために乳房全切除術を受けた女性(インタビュー時47歳)
「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン 乳がんの語り」より
39歳で乳がんの診断を受けた女性(インタビュー時44歳)
「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン 乳がんの語り」より
この患者さんたちは、迷うために十分な時間や情報や医療者の支援があり、その人なりの意思決定に至ったケースです。
治療選択や治療を受けるかどうかで迷っている患者さんを目の前にしたとき、まずどんな点で迷っているのかを聞いてみることが大切です。
もし医師が伝えた医学的な情報について十分に理解できないと話されたら、患者さんが理解できる形に噛み砕いて説明したり、情報の整理を一緒に行います。
話を聞いてみると、悩んでいる理由は大抵その患者さんにとって大切にしていることやもの、人が関係しています。その思いを十分に語ってもらうことが必要です。
患者さんは語ることを通して、考えを整理したり、別の見方に気づいたりして、その人なりの結論を導きだすことが可能になります。
治療上、時間的猶予なく決断を迫られることもあります。患者さんがよくわからないうちに、どんどん進んでしまったということがないよう、折に触れて声かけをし、よく思いに耳を傾けてみましょう。
いくら迷って決めても結果が望ましくなければ、後悔はつきものですが、迷った時間やそこに寄り添ってくれた医療者の存在はその後の闘病生活を送る上で支えになっていくと思います。
「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(通称:DIPEx-Japan)
英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。
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