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第24回 腫瘍マーカーと患者さんの心―前立腺がん治療のPSA値からのサムネイル画像
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金井 一薫(かない ひとえ)

NPO法人ナイチンゲールKOMIケア学会 理事長/東京有明医療大学 名誉 教授

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医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。しかし、看護の現場では、複数の患者への治療や処置が決められた時間に適切に実施されなければならないことが日常的です。また、心身が辛い中で療養している患者は、忙しそうに働いている看護師に対して、自分から治療や生活上の悩みや困難を訴えるのも勇気のいることでしょう。

そこで、患者の病いの語りをデータベースとして提供しているDIPEx-Japanのウェブサイトから、普段はなかなか耳にすることができない患者の気持ち・思い・考えを紹介しながら、よりよい看護のあり方について、読者の皆さんとともに考えてみたいと思います。


がん治療の効果を確認し、再発を早期に発見する際の指標となる、腫瘍マーカー。

数値の医学的な意味を説明することは、医療者の重要な役割の一つですが、患者さん自身が数値をどのように受けとめているかに目を向けると、患者の心に寄り添うケアを考える、大切なヒントが見つかります。

ここでは前立腺がん治療に用いられるPSA値を例に、患者の思いに触れてみましょう。

PSA値とともに揺れ動く、患者さんの思い

60歳のときに前立腺がんと診断され、治療を受けた経験のある男性(インタビュー時60歳)

――今までご自分の中で他の方の体験で特にこういうことが知りたくて、前立腺がんの掲示板で聞いたっていうことってどんなことがありますか。

この方の語りからは、手術療法、放射線療法など、選択した治療によって、治療後の値に違いがあることなど、具体的な情報を丁寧に伝えるだけでも、数値に振り回されない生活を取り戻す、有力な指針になることがわかります。

60歳のときに前立腺がんと診断され、治療を受けた経験のある男性(インタビュー時64歳)

この方は、小線源療法後のPSAバウンス現象を、事前に十分認識していました。それでも実際わが身に起こったときには、ひどく慌てたと言います。

たとえ医学的な知識を十分に持っていても、不安、恐怖がよぎる。知っていることと体験することは別物で、心は揺れるものなのです。

PSA値との長い付き合いは、医療者の想像以上に患者のQOLを左右する関心ごとです。

十分な情報提供はもちろんのこと、再発や進行の不安に揺れる心に目を向け、その人なりの値との付き合い方を協働で模索していく。簡単ではありませんが、このような医療者のかかわりがあればこそ、PSA値を、ただ不安をあおる数字ではなく、今を大切に生きるための情報へと変えることができるのではないでしょうか。

「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(通称:DIPEx-Japan)

英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

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