

NPO法人日本呼吸ケアネットワーク(JRCN)
提供者の記事一覧共催:第62回日本透析医学会学術集会・総会/株式会社メディコン
2017年6月16~18日、第62回日本透析医学会学術集会・総会がパシフィコ横浜で開催されました。18日に行われたランチョンセミナー「急性血液浄化療法におけるバスキュラーアクセスカテーテルの役割」では、2名のスペシャリストから近年注目されている急性血液浄化療法の安全な実施について自験例を交えた講演がありました。
急性腎障害(Acute Kidney Injury:以下、AKI)は近年注目されている疾患です。司会の根木茂雄先生によると、2016年に日本腎臓学会、日本集中治療医学会、日本透析医学会を含む5学会による「AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016」が発刊され、さらに今年5月に行われた第60回日本腎臓学会学術総会においても、シンポジウムのテーマに取り上げられています。
AKIに対する治療としての急性血液浄化療法には、血液浄化量や開始時期など解決しなければならない問題がたくさんあります。それらの問題ともかかわるバスキュラーアクセスは血液浄化療法の経路として、トラブルなく機能させなければなりません。
急性血液浄化におけるカテーテルの重要性について
旭川医科大学病院の宗万孝次先生は、急性血液浄化におけるバスキュラーアクセスに求められるカテーテル性能、カテーテルの違いによるカテーテルトラブルの頻度の違いを紹介しました。
バスキュラーアクセスに求められるカテーテル性能について
血液浄化を安全で効率よく行うためのバスキュラーアクセスの条件としては、「100~300mL/分程度の血流量が得られる」「血液浄化回路との連結・離脱が簡単で、頻回の使用に耐える」「閉塞・感染・動脈瘤形成などの合併症を起こしにくい」などが挙げられます(図1)。このうち、血流量の確保はシャントにとってもカテーテルにとっても非常に重要なポイントです。急性腎不全で血液浄化が必要な場合や、慢性腎不全の透析導入時、シャントトラブルがあった場合などには、一般的にバスキュラーアクセスカテーテルが用いられるため、安定した血流量を確保できるカテーテル選択が求められます。

「脱血不良・閉塞」の原因とその対策
代表的なカテーテルトラブルとして、「脱血不良・閉塞」「感染」「挿入時合併症」があります。なかでも「脱血不良・閉塞」は大きなトラブルであり、原因としてはカテーテルの脱血孔が血管壁を吸引することで生じるへばりつき現象が挙げられます。
へばりつき現象は、透析時に起こる脱血流量の増加や透析後半にみられる血管内流量の減少が影響して起こります。また、カテーテルの脱血孔の偏在も原因の1つとなります。そこで、カテーテル全周に側孔をもつコアキシャル型や、へばりつき現象が少ないエンドホール型のカテーテルを選択することが1つの対策となります。
カテーテルの違いによる脱血圧および脱血不良頻度の比較検討
このようなトラブルを低減するねらいで、当院ではエンドホール型の「パワートリアライシス®」(株式会社メディコン)を使用しています。「パワートリアライシス®」を使用し始めてから、看護師を含めたスタッフが脱血不良の頻度の低下を感じるようになりました。
そこで、2015年8月~2016年9月の期間にICUで血液浄化を行った患者のうち、血流量100mL/分での血液浄化施行症例かつ脱血圧への影響を考慮するため、ベッドの高さを一定とし、脱血圧データと脱血不良によるアラーム発生頻度の履歴を調べることができた65件について、カテーテルの違いによる差を検証しました。対象カテーテルは、「パワートリアライシス®」を含む4つの製品です。
検討方法は、治療終了後に血液浄化装置より脱血圧データと脱血不良アラームの発生頻度を抽出し、比較検討を行いました。
結果として、脱血圧については、他の製品が-49.2~-44.9mmHgであったのに対し、「パワートリアライシス®」は-30.5mmHgと、有意に低値でした(図2)。

また、回路交換1回あたりの脱血不良アラームの平均発生頻度についても、他の製品が9.9 ~ 30.1回と比較して、「パワートリアライシス®」は1.0 回と、少ない結果が示されました(図3)。

宗万先生は、「私たち医療スタッフが感じていた印象とデータが一致しました。カテーテルを適切に選択し、安全な急性血液浄化療法の施行につなげていきたい」と締めくくりました。
重症患者に対する急性血液浄化の問題点とバスキュラーアクセスカテーテルの選択
札幌医科大学医学部の巽博臣先生は、ICUでの臨床経験から重症患者の病態に関連した持続的腎代替療法(Continuous Renal Replacement Therapy:以下、CRRT)を紹介するとともに、急性血液浄化の安全・安定的な施行のための取り組みを紹介しました。
重症患者におけるCRRT血液浄化管理の難しさ
CRRTは循環動態が不安定な重症患者に用いられるため、治療効果を得るには、長時間の安定した施行が求められます。血管透過性が亢進して血圧が低下した際に、輸液を負荷しますが、単純に輸液を負荷するだけでは過剰輸液となり、病態の悪化を招くこともあります。炎症が強く過凝固になれば、頻繁な回路の交換や返血不能につながります。
また、脱血不良が発生した場合は、脱血側と送血側の逆接続や、血液浄化療法を中断・中止しなければなりません。このように重症患者に対する血液浄化管理は難しいといえます。
CRRTの安全・安定的な施行を妨げる「中断」
CRRTの安全性と安定性を妨げる要因には、血液浄化の「中断」があります。長時間の安定した施行が治療効果をもたらすCRRTにとって、中断は大きな問題です。
そこで、2014年1~9月に当院のICUで3日以上のCRRTを施行した19症例を対象に、治療中断時間(Down time)とその要因について、後方視的に検討しました。CRRTは持続的に施行されますが、実際は治療中断時間が生じています(図4)。中断要因としては、「定期的な回路交換」37例、「一時的な離脱」9例、「回路内凝固による回路交換」2例という結果でした(図5)。


当院では、Down time短縮のため、臨床工学技士が、回路・膜の施行時間(Life time)を予測し、回路交換のタイミングを決定しています。また、回路交換前に別の新しい回路を準備してから、速やかに交換をすることで定期交換によるDown timeを短縮する取り組みを行っています。
CRRTでの「脱血不良」を解消するバスキュラーアクセスカテーテルとは
バスキュラーアクセスカテーテルの留置部位によっては血管壁への接触などにより、十分な脱血流量が確保できず、CRRTの中断や中止を余儀なくされることがあります。カテーテルトラブルに対しては、脱血側と送血側の逆接続やカテーテルの位置調整や入れ替えによる処置を行うため、患者への身体的負担のみならず医療者への労務負担にもつながります。
当院では、脱血孔・送血孔ともに立体流線型に成型され、サイドホールを有するカテーテルデザインとなっている「パワートリアライシス®」を2017年4月までに93例に使用しています(図6)。

脳室―腹腔シャント(V-Pシャント)感染による腹膜炎症例において、当初は右内頸静脈から他のバスキュラーアクセスカテーテルを留置し、CRRTを開始しましたが、脱血不良のアラームが頻繁に鳴り、輸液も必要としました。
そこで、左内頸静脈から「パワートリアライシス®」に入れ替えて留置したところ、十分な血液量を確保することができ、アラーム対応も輸液投与も不要になりました。左内頸静脈からの挿入は、解剖学的に上大静脈の右壁に接触しやすいにもかかわらず脱血量を確保できたのは、流線型のエンドホールとサイドホールという構造によるものではないかと、巽先生は推察しています(図7)。

当院で使用した93例においては、脱血不良は経験していません。血管透過性が亢進する急性期の重症患者においても、「パワートリアライシス®」の使用により、安定的なCRRTの施行ができています。また、造影CT検査を行うこともある重症患者においても、バスキュラーアクセスカテーテルを介して、造影剤注入を行っています(図8)。

重症患者に急性血液浄化療法を行う際は、患者の病態を十分に考慮したうえで、安全性と安定性が図れるようカテーテルを適切に選択していくことが重要です。
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