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第12回 せん妄はなぜ起こるの?⑤直接因子-手術についてのサムネイル画像
取材
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餅田 佳美(もちだ よしみ)

東大阪市立総合病院 医療安全管理室 室長

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大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


▼せん妄についてまとめて読むならコチラ
せん妄とは? せん妄の症状と看護


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

3つめの直接因子とは?

井上先生:「ここまでの講義で、せん妄の直接因子のうち身体疾患と薬剤について解説しました。せん妄の直接因子の3つめは何でしたか?」

看護師Aさん:「『手術』です!」

井上先生:「その通りです。よく覚えていましたね。

この『手術』は、ほかの直接因子2つと決定的に違う点があります。例えば、身体疾患がせん妄の直接因子であればその治療をしますし、薬剤が原因であればその薬剤の中止を検討します。つまり、いずれも介入が可能というわけです」

看護師Aさん:「なるほど。術後せん妄の場合は、手術が直接因子とわかったとしても、既に手術が終わった後のせん妄なので、そこに対しては介入ができないということですね」

井上先生:「その通りです。ただ、だからと言って術後せん妄は何もできないということではありません。むしろ、術前に予防的な介入を行うことが可能で、かつ効果的です」

看護師Aさん:「なるほど。では、どのような介入をすればよいか、教えて下さい」

井上先生:「まず最初にすべきことは、術後せん妄が起こりやすい、いわゆる『せん妄ハイリスク』の患者かどうかを術前に見極めることです」

看護師Aさん:「それには、前に勉強した準備因子が役に立ちますね」

井上先生:「その通りです。準備因子を複数有している患者は『せん妄ハイリスク』ですので、その場合は早目に予防策を講じておく必要があります」

看護師Aさん:「具体的な対策を教えて下さい」

次のページは具体的な対策についてです。

井上先生:「例えば、せん妄ハイリスクの患者が術前・術後に不眠を認めた際、安易に睡眠薬(ベンゾジアゼピン受容体作動薬)を投与しないよう、あらかじめ注意しておくことが重要です」

看護師Aさん:「前回で、“約束指示”の危険性について学びました」

井上先生:「そうですね。もう少しわかりやすく説明しましょう。

『20歳の女性が足を骨折して入院し、手術後に不眠を認めたためレンドルミンを処方しました』どうでしょうか?」

看護師Aさん:「特に問題ないと思います」

井上先生:「そうですね。では、これはどうですか?

『認知症で施設入所中の90歳の女性が足を骨折して入院し、手術後に不眠を認めたためレンドルミンを処方しました』」

看護師Aさん:「前の例と比べて、かなりの確率でせん妄になりそうです。なるほど、せん妄ハイリスク患者かどうかという違いがあるのですね」

井上先生:「その通りです。そもそも、せん妄ハイリスク患者は術後にせん妄を起こしやすいわけですから、そこに睡眠薬(ベンゾジアゼピン受容体作動薬)を使用することは絶対にやめましょう」

看護師Aさん:「よくわかりました。そのほか、手術の前にできることがあれば教えて下さい」

井上先生:「特にせん妄ハイリスクの場合、術前に患者・家族に対してせん妄について十分説明しておくことです。

せん妄は、一般的にはほとんど知られていません。術後におかしな言動がみられた際、家族は『急に認知症になってしまった』などと考えることが多いようです。そこで、早目にせん妄について説明し理解をしてもらうことで家族の安心感につながりますし、患者にとって落ち着ける環境をつくるために協力してもらうこともできるわけです」

看護師Aさん:「とても大事なことですね。これから気をつけるようにします。でも、せん妄について、うまく説明できるか自信がありません・・・」

井上先生:「せん妄の説明には、ぜひパンフレットを使って下さい。パンフレットを使う利点は、以下の通りです」

看護師Aさん:「なるほど。パンフレットがあれば、看護師でも説明しやすいですね」

井上先生:「その通りです。パンフレットに沿って説明すればよいので、要領よく説明できますし、漏れもなくなります」

看護師Aさん:「患者・家族にとってもメリットがあるのですか?」

井上先生:「繰り返しになりますが、せん妄については知らない人がほとんどです。そのため、一度にいろいろ言われても頭に残らないかも知れません。パンフレットがあれば視覚的にも理解しやすくなりますし、なにより何回も読み返せるわけです」

看護師Aさん:「よくわかりました。でも、パンフレットを一から作るのは大変そうですね」

井上先生:「もしよければ『岡山大学病院精神科リエゾンチーム』のHPからパンフレットのPDFをダウンロードできますので、自由に使ってみて下さい」

看護師Aさん:「ありがとうございます!早速使ってみるようにします」

井上先生:「では、今日はここまでにしましょう。次回は『可逆性・不可逆性せん妄』について解説したいと思います」

看護師Aさん:「よろしくお願いします!」

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