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第18回 せん妄に対するチームアプローチ-岡山大学病院せん妄対策チームの取り組み-【実践編2】のサムネイル画像
取材
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餅田 佳美(もちだ よしみ)

東大阪市立総合病院 医療安全管理室 室長

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大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


▼せん妄についてまとめて読むならコチラ
せん妄とは? せん妄の症状と看護


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。担当患者さんが手術後にせん妄を発症したことを機に、せん妄について体系的な講義を受けました(第1回第16回)。その知識を実臨床で活かすべく、再び井上先生に伺いました。

岡山大学病院でのせん妄への取り組み

看護師Aさん:「私の病院では、今度せん妄対策に取り組むことになりました。先生の病院では、どのようなせん妄対策をしているのですか?」

井上先生:「岡山大学病院では、術後せん妄の一次・二次予防に力を入れています。せん妄の一次予防とは『せん妄の発症を防ぐこと』、二次予防とは『せん妄を早期に発見し治療およびケアをすること』ですね。」

看護師Aさん:「いずれもとても大切なことですよね。どのような患者さんを対象にしているのでしょうか?」

井上先生:「手術予定の患者さん全員を対象とはしていません。高齢・認知機能低下・頭部疾患の既往など、前に勉強した『準備因子』を複数有しているような、『せん妄ハイリスク患者』が対象です(第9回講義参照)。」

看護師Aさん:「なるほど。せん妄になりやすい患者さんをあらかじめ把握して、対策を立てるわけですね。では、なぜ術後せん妄をターゲットにしたのですか?」

井上先生:「例えば、緩和医療でもせん妄はよくみられますが、原疾患の進行に加えて、高カルシウム血症やオピオイドなど、直接因子が複数であることがほとんどです。その点、術後せん妄はせん妄の直接原因が『手術』とシンプルであり、せん妄発症の時期が『術後』と予測が立つため、対策がマニュアル化しやすいと言えます。」

看護師Aさん:「よくわかりました。では、せん妄対策の内容を具体的に教えて下さい。」

次のページは「せん妄対策の具体的な内容です」

井上先生:「では、順を追って説明しましょう。岡山大学病院周術期管理センターでは、手術が決まった患者さんはまず外来で手術に関する説明を看護師から受けます。その際に、せん妄のハイリスク項目を評価します。」

看護師Aさん:「どのような項目ですか?」

井上先生:「せん妄のハイリスク項目は、

①70歳以上
②認知症あるいは認知機能低下
③頭部疾患の既往
④せん妄の既往
⑤アルコール多飲

の5つです。このうち1つでも該当すれば、患者さんとご家族にせん妄についてパンフレットを使って詳しく説明をします。そして、『せん妄ハイリスク患者』としてせん妄対策チームに紹介されることになります。」

看護師Aさん:「パンフレットがいかに有効かということは、第12回の講義で勉強しました。患者さんやご家族があらかじめせん妄について理解しておくことは、とても大切ですよね。

ところで、せん妄対策チームとはどのようなチームなんですか?」

井上先生:「せん妄対策チームは、精神科医師、看護師、臨床心理士、薬剤師、ゼネラルリスクマネージャーといった、多職種からなるチームです。以下の表1のように、それぞれの専門性を活かした介入ができるのが特徴で、評価した内容は病棟スタッフに伝えられ、関わる医療スタッフ全員で対策を行うことになります。」

表1 せん妄対策チームの介入内容

職  種対策の内容
精神科医師術前・術後の不眠時・不穏時指示を病棟スタッフに推奨する
看護師せん妄の促進因子(視力・聴力や疼痛など)を評価し、適切な対応を病棟スタッフに推奨する
臨床心理士認知機能などを検査で評価する
薬剤師内服薬のうちせん妄ハイリスク薬をチェックし、薬剤の中止などを病棟スタッフに推奨する

*ゼネラルリスクマネージャーはせん妄に伴うインシデント(転倒・転落など)に関わる

看護師Aさん:「チームで対策を始めて、どのような効果がありましたか?」

井上先生:「まず、病棟スタッフの意識が変わりました。せん妄の早期発見・介入の重要性が認識され、スクリーニングに力を入れるようになった病棟もあります。また、医師によっては不眠時指示を見直すようになった方もおられます。」

看護師Aさん:「せん妄ハイリスクの患者さんの不眠には、安易にベンゾジアゼピン系の薬剤を出さないことが大切でしたよね。」

井上先生:「その通りです。不眠時指示を見直すだけでも薬剤性せん妄を減らすことにつながるので、とても大きなことだと思います。

また、Whitlockら(2011)によると、手術患者の9-87%に術後せん妄がみられるとされています。せん妄対策チームが介入してから、せん妄ハイリスクと評価された食道がん患者の術後せん妄発症率は9.6%で、これは食道がんの手術が極めて高侵襲であることを考えても、大変少ない数字です。」

看護師Aさん:「そもそもせん妄ハイリスクの患者のせん妄発症率ということですから、とても効果的ということですね」

井上先生:「そのほか、チームからの推奨となると、個々の医師や看護師からの推奨よりも医療スタッフに採用してもらいやすく、適切な評価や対応が浸透しやすいように思います。」

看護師Aさん:「よくわかりました。教えていただいた取り組みはとても素晴らしいとは思うのですが、私の病院には精神科医の先生も専門看護師さんも心理士さんもいませんし、とても同じようなチームは作れません。せん妄で困っている医療スタッフは多いのですが、日々業務が忙しい中でせん妄対策に時間を確保できるスタッフは限られているように思います」

井上先生:「大学病院は職種がたくさん揃っているのでこのようなチームをつくることが可能ですが、多くの病院ではリソースが不足しがちと思います。ですので、それぞれの病院の事情に合わせて、出来そうなことを無理なく取り入れる、その参考にしてもらえれば幸いです。

また、せん妄はインシデントと関連しますので、医療安全管理部(ゼネラルリスクマネージャー)がせん妄対策を主導しているところもあるようです。」

看護師Aさん:「よくわかりました。私の病院では、まずはパンフレットを使うこと、そして不眠時指示を見直すこと、この2つをやってみたいと思います。」

井上先生:「せん妄は、臨床現場では看護師さんが一番苦労されていると思いますが、対策はできるだけ多職種で行うのが理想です。ぜひ、頑張って下さい!

では、これでこのシリーズは全て終わりになります。長い間ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!」

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