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第17回 興奮が強いせん妄患者への対応の具体例【実践編1】のサムネイル画像
取材
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餅田 佳美(もちだ よしみ)

東大阪市立総合病院 医療安全管理室 室長

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大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


▼せん妄についてまとめて読むならコチラ
せん妄とは? せん妄の症状と看護


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。担当患者さんが手術後にせん妄を発症したことを機に、せん妄について体系的な講義を受けました(第1回第16回)。その知識を実臨床で活かすべく、再び井上先生に伺いました。

臨床でよく遭遇するせん妄の問題点

看護師Aさん:「先生、お久しぶりです。これまでの講義で学んだことをスタッフの間で共有し、病棟で活かすようにしています。」

井上先生:「それは何よりです。今回は実践編として、『興奮が強いせん妄患者への対応』について、具体的に解説しましょう。」

看護師Aさん:「よろしくお願いします!」

井上先生:「看護師さんからよくされる質問のひとつに、『せん妄で興奮している患者さんにどう対応すれば良いのですか?』というものがあります。」

看護師Aさん:「私も夜勤の時に困ることがあり、なかなかうまく対応できません。どのようなことに気をつければ良いのでしょうか?」

井上先生:「まず、対応を考える際に『せん妄=意識障害』であることを常に頭に入れておく必要があります。これは、せん妄の診断基準(第1回)にもありましたね。」

看護師Aさん:「夜中怒りだして手がつけられなかった患者さんが、翌朝にはケロっとしてそのことを全然覚えていないことがあります。」

井上先生:「『夜間せん妄」という表現があるように、せん妄は日中は症状が目立たず、夕方から夜にかけて症状が強く現れます。夜中に興奮状態となったエピソードを全く覚えていないか、うろ覚えだったりするのは、まさに意識の障害ですね。」

看護師Aさん:「そう考えると、興奮が強いせん妄の患者さんに理詰めで説得しようと試みるのは、無理がありそうですね。」

井上先生:「その通りです。強い口調で言うとそれが逆に刺激になり、怒らせてしまうこともあるようです。

では、実際のやりとりを例に挙げて解説しましょう。まずは、せん妄患者への悪い対応例です。」

次のページは「せん妄患者への悪い対応例」です。

せん妄患者への悪い対応例

66歳の入院患者(男性)。夜中、入院患者が荷物を抱えて部屋から出て行こうとしているところを看護師が発見。

看護師:「あら、どうしたんですか?」
患者 :「・・・仕事に行く・・・」
看護師:「仕事?そんな格好で仕事なんて行けませんよ。それに夜中ですよ」

→ 頭ごなしに言動を否定してしまう

患者 :「いや、仕事に行く!」
看護師:「今、入院しているの、わかってるんですか?入院中にこんな格好で出歩かれたら困ります!」
患者 :「入院なんかしてない!仕事に行く・・・」
看護師:「入院してますよ! 」
患者 :「してない!してない!」
看護師:「他の患者さんに迷惑になります!」
患者 :「もう~・・・あ~・・・仕事に行く!」
看護師:「病室に戻りましょうか」
患者 :「さっき、電話があったから」
看護師:「電話?」
患者 :「仕事に来いって・・・」
看護師:「そんな電話なんて、なかったですよ」
患者 :「あったの・・・」
看護師:「空耳じゃないですか。もしかしたら幻覚かも」
患者 :「ちがう!ちがう!」
看護師:「本当にもう~ 困るわ~。病室に戻りましょう」

→ 感情的になり対応が強引

患者 :「明日、納品があるから・・・」
看護師:「明日?明日っていつですか?」
患者 :「明日・・・明日は8月・・・8月・・・うん。8月、8月!」
看護師:「今ね、まだ1月ですよ」
患者 :「そんなことない!」
看護師:「そんな簡単なこともわからないんですか!」

→ 自尊心を傷つける発言

患者 :「うるさい!」
看護師:「早く病室へ戻りましょう!さあ早く!」


井上先生:「いかがでしたか?」

看護師Aさん:「いくつか、自分でも思い当たることがあります。。。」

井上先生:「どうしても感情的になってしまうこともありますよね。続いて、せん妄患者への良い対応例です」

せん妄患者への良い対応例

66歳の入院患者(男性)。夜中、入院患者が荷物を抱えて部屋から出て行こうとしているところを看護師が発見。

看護師:「あら、どうされました?どうされましたかね・・・?」

→ 静かな落ち着いたトーンで話しかける

患者 :「うん、帰ります」
看護師:「帰るって、どちらに帰られるんですか?」

→ 最初から言動を否定せず、まず理由を聞く

患者 :「仕事、仕事があるんで・・・」
看護師:「そうですか。仕事に行かれるんですね。でも夜中ですから、私も心配です。どちらのお仕事に行かれるのか、教えてもらっていいですか?」

→ 刺激しないよう気遣いながら言葉をかけ、理由を把握する

患者 :「会社から・・・電話・・・電話があって・・・」
看護師:「電話、ですか?」
患者 :「早く納品するようにって、さっき電話があって・・・」
看護師:「あぁ、そうなんですね」

→ ある程度理由がわかれば深く詮索しない 否定も肯定もせず話を合わせる

患者 :「すぐに行かないと。納品があるから、明日」
看護師:「そうですか。明日なんですね」
患者 :「そうそう」
看護師:「今、夜中ですけど、明日の朝ではいけないんでしょうか?」

→ 患者の決断や行動を先延ばしにするよう努め、着地点を探る

患者 :「ん~・・・明日の朝じゃ遅いかもしれんな・・・。迷惑もかかるし・・・」
看護師:「そうですね、迷惑かけるかも知れませんもんね・・・。心配ですよね」
患者 :「うん・・・」
看護師:「明日って、いつですか?」

→ 本当にせん妄かどうか、会話の流れで見当識障害の有無などを確認する

患者 :「明日は・・・8・・・8月?うん。8月・・・」
看護師:「そうですか。・・・8月ですね。でも、どうですか、少し寒かったりしませんか?」
患者 :「う~ん・・・」
看護師:「靴も履いておられませんし、寒そうですし・・・。もう少し暖かいところで、どうしたらいいか、ちょっと相談しましょうか」
患者 :「う~ん・・・」
看護師:「お部屋で少しお話しをしませんか。お仕事のことが気になるのもよくわかるので、そのあたりのことももう少し教えていただきたいと思いますから・・・」

→「仕事」という理由への注意をそらし、部屋へ戻るよう言葉をかける

患者 :「う~ん・・・」(と病室に移動しかける)
看護師:「じゃ、こちらの病室のほうに移りましょうか・・・。では、どうぞ」


井上先生:「いかがでしょうか。それぞれ、太字の部分がポイントになりますので、ぜひ参考にして下さい。」

看護師Aさん:「具体的でとてもわかりやすかったです。これもスタッフの間で共有するようにします!」

井上先生:「では、今回はここまでです。次回がいよいよ集大成となる最終回です。『せん妄に対するチームアプローチ』として、岡山大学病院せん妄対策チームの取り組みをご紹介します。」

看護師Aさん:「次回も楽しみにしています!」

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