血液の中に含まれているガスには、酸素や二酸化炭素などがあります。
こうした血液ガスを分析することでいったい何がわかるのでしょうか。
まずは、体のしくみと血液ガスについて見ていきましょう。
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血液ガス分析とは?基準値や読み方について
呼吸と酸塩素平衡の障害はどの数値に現れる?
血液ガス分析の数値が示すこと
血液ガス分析では、最低限、PaO2・SaO2・PaCO2・pH・HCO3-・BEの6項目について覚えておきましょう。このうち、pH、PaO2、PaO2は直接測定し、HCO3-、SaO2、BEは計算で求めます。
また、呼吸器・循環器障害を見る上ではPaO2、SaO2、PaCO2が、酸塩基平衡障害ではPaCO2、pH、HCO3-、BEが主な指標です。PaCO2値はガス交換と酸塩基平衡の両方に使われる重要な値ということを覚えておきましょう。
血液ガス分析のデータ値が何を示しているかがわからなければ、患者さんの体で何が起きているのかを推察することはできません。血液ガスを読む前に、これらの基準値と意味をきちんと理解しておくことが大切です。

次ページでは、「呼吸器・循環器機能を評価するデータ値」と「アシドーシス・アルカローシス」について解説します。
呼吸器・循環器機能を評価するデータ値
■PaO2 動脈血酸素分圧
Pはpressure(圧力)、aはartery(動脈)を表し、酸素化の評価に用いられます。
酸素分圧とは1気圧の中にどれだけの酸素量があるかを表しています。体内でのガス交換は、圧の高低差によって行われ、赤血球は酸素分圧が高いところで酸素を受け取ります。そして、酸素分圧が低いところで酸素を放出します。つまり、酸素分圧は動脈血では高く、静脈血では低いわけです。
PaO2の基準値は80~100Torr、生命維持に最低必要な酸素分圧は60Torrで、これを下回れば呼吸不全と診断します。
■SaO2 動脈血酸素飽和度
Sはsaturation(飽和度)、aはartery(動脈)を意味し、動脈血の酸化ヘモグロビンの比率を表します。
酸素化の指標としては最も信頼性のある値で、基準値は96~98%程度です。
基準値を下回る原因としては、呼吸器疾患でガス交換が十分にされていない、貧血などで酸素と結合できるヘモグロビンが少ない、心疾患などによる血液循環の障害などがあります。
■PaCO2 動脈血二酸化炭素分圧
動脈血中のCO2の量を表します。
ガス交換と酸塩基平衡の指標として、血液ガスの中でも重要なデータと言えます。基準値は40±5Torr。呼吸不全などで呼吸状態に障害があると、CO2の排出が阻害されて体内に蓄積し、値が上昇して高二酸化炭素血症をきたすことがあります。
PaCO2の上昇は肺胞低換気を、低下は肺胞過換気を示します。呼吸が速く、深くなると過換気によってCO2は減少します。
酸塩基平衡を評価するデータ値
■pH 水素イオン指数(power of hydrogen)
水溶液中のH+濃度のことで、酸性あるいはアルカリ性の強さを示します。
化学的にはpH7.0が中性で、それ以上はアルカリ性、それ以下は酸性となります。ただし、細胞内で産生される大量のCO2排泄のために、体内にはHCO3-をはじめとする塩基があるので、血液pHの基準値は7.40±0.05となっています。
前述のように、pHの値はHenderson-Hasselbalchの式(第3回参照)で求められるので、pHに異常がある場合は、HCO3-とPaCO2を調節している肺または腎機能や代謝に障害があることが考えられます。
■HCO3- 重炭酸イオン
体内でH+が産生されたとき、血液が酸性に傾くのを抑えるためにH+を受け取る塩基の一つで、酸塩基平衡の指標として用いられます。
揮発性酸以外にも硝酸や硫酸、塩酸といった不揮発性酸の緩衝に作用するなど、緩衝作用に使われる緩衝系物質の中で最も主要な役割を果たしています。
pHを規定する因子で、基準値は24mEq/L。HCO3-は腎臓で調節されており、減少する主な疾患・病態としては糖尿病や慢性腎不全などがあります。
■PaCO2 動脈血二酸化炭素分圧
前出参照。
■BE ベースエクセス(Base Excess)
BEとは、37.0℃、PaCO2が40Torrにある血液をpH7.40に戻すためには、どれだけの量の酸や塩基が必要かを表しています。
この値がマイナスならば、酸が蓄積しているということで、つまりアシデミア(代謝性アシドーシス)になっていることがわかります。逆にプラスであれば、塩基が過剰な状態、アルカレミア(代謝性アルカローシス)になっていると考えられます。
ただし、呼吸性と代謝性の混合障害を算定することはできません。あくまでも、血液の代謝性因子を見るための指標の一つと考えるとよいでしょう。

アシドーシスとアルカローシス
血液ガス異常の基本形は4つ
血液ガスの異常には、
1. 呼吸性アシドーシス
2. 呼吸性アルカローシス
3. 代謝性アシドーシス
4. 代謝性アルカローシス
の4つのパターンがあります。
呼吸性は肺の障害によって起こり、代謝性は腎臓あるいは細胞での代謝機能障害で起こります。
臨床の場ではそのほかに、これらが合併した混合性酸塩基平衡障害が存在しますが、血液ガスを見る上で、まずはこの基本形を理解しておくことが大切です。

1 呼吸性アシドーシス
■概要
ガス交換や換気がうまくいかず、血液中からCO2が排泄されないことによってCO2濃度が上昇し、血液pHが酸性に傾いている病態です。
■原因
1. 肺胞低換気
2. 呼吸不全
3. COPD
4. 肺炎などの呼吸器疾患
5. ギラン・バレー症候群
6. うっ血性心不全
■注意点
基本はCO2濃度の上昇で、
1. PaCO2>40Torr
2. 血液pH<7.35
を示します。
代償性変化としては、急性、慢性によって腎臓の代償作用が異なりますが、一般的に「HCO3->35 mEq/L」になることはまれなので、その場合は代謝性アルカローシスの合併を疑います。
2 呼吸性アルカローシス
■概要
呼吸苦によって呼吸が速く・深くなることで、血液中からCO2が過剰に排泄されてCO2濃度が下降し、血液pHがアルカリ性に傾いている病態です。
■原因
1. 肺炎や喘息などによる軽い呼吸困難
2. 疼痛や不安など精神的理由に起因する過換気症候群
■注意点
基本はCO2濃度の低下で
1. PaCO2<40Torr
2. 血液pH>7.45
を示します。
代償性変化としては、急性で腎臓の代償作用によってHCO3-が低下します。PaCO2 が15Torr以下になった場合は死亡率が高く、代謝性アシドーシスの合併や重症例を考えます。
次ページでは、「代謝性アシドーシス」「代謝性アルカローシス」について解説します。
3 代謝性アシドーシス
■概要
体内で産生される酸が増加したり、HCO3-が再吸収されずに体外に排出されることで血液中のHCO3-が減少し、血液pHが酸性に傾いている病態です。
■原因
1. 慢性腎不全
2. 糖尿病性ケトアシドーシス
3. 乳酸性ケトアシドーシス
4. 尿毒症
5. 重度の下痢
■注意点
基本はHCO3-の減少で
1. HCO3-<24mEq/ L
2. 血液pH<7.35
を示します。代償性変化としては、肺胞過換気によるPaCO2の低下がみられます。
4 代謝性アルカローシス
■概要
H+やCl-の喪失、腎臓でのHCO3-排泄の低下などによって相対的にHCO3-が増加し、血液pHがアルカリ性に傾いている病態です。
■原因
1. 激しい嘔吐
2. 胃液の喪失
3. 利尿薬の過剰投与
■注意点
基本はHCO3-の増加で
1. HCO3->24mEq/ L
2. 血液pH>7.45
(『ナース専科マガジン2012年10月号』より転載)
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