
佐藤(佐久間)りか(さとう(さくま) りか)
解説者の記事一覧本連載では、摂食嚥下障害を初めて学ぶ方も理解できるよう、摂食嚥下障害の基本とともに、臨床症状や実際の症例を通じて最新の嚥下リハ・ケアの考え方を解説します。
摂食嚥下障害の検査にはどんなものがある?
臨床でスタンダードに用いられている摂食嚥下機能の検査には、嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)があります。
嚥下臨床を進めていくにあたり、嚥下機能検査は必須ではありません。食事観察やバイタルサイン、聴診等を駆使し、嚥下障害の原因疾患を併せて考えるとかなりの嚥下機能が推察できます。私自身も聴診器だけを持って嚥下診察を行っている病院・施設があります。
しかし、やはり検査所見があると予知性が高まったり、患者さんへの説明がスムースになったりするので助かります。今回はVFとVEの特徴と、結果の解釈の仕方について解説します。
嚥下造影検査(VF;VideoFluoroscopic examination of swallowing)
嚥下機能検査のゴールドスタンダードとされており、レントゲン室で行う検査です。
VFでは、造影剤入りの食品を食べているところをレントゲン動画で撮影・記録して、嚥下諸器官の解剖や動き、食品の動きを観察します(図1)。一般には側方から撮影しますが、左右の対称性を見たいときは正面からも撮影します。嚥下の5期のうち準備期、口腔期、咽頭期、食道期を観察することができ、誤嚥の有無を確認しやすいのが利点です。レントゲン室でしか検査できないこと、被曝をともなうことが大きな欠点といえます。

造影剤入りの食品を食べるところをレントゲン動画で撮影して評価します
嚥下内視鏡検査(VE;VideoEndoscopic examination of swallowing)
2000年代に入り急速に広まってきた嚥下機能検査です。経鼻的に内視鏡を挿入し、安静時、嚥下時の咽頭・喉頭を観察します(図2)。内視鏡を挿入する違和感はありますが、被曝がないために長時間の観察ができ、検査機器に携帯性があるため病室や在宅など場所を選ばずに検査ができるというのが最大の利点です。
嚥下の瞬間は粘膜が内視鏡先端に触れるために、真っ白になって見えませんが、その前後をしっかりと観察することでVFと同程度の誤嚥検出率があると報告されています。

経鼻で内視鏡を挿入し,食べているところの咽頭腔を観察する検査です
嚥下検査における結果の解釈の仕方
VFもVEも検査であり、日常のすべての嚥下を観察しているわけではありません。検査中に観察される嚥下動作はせいぜい数十回であり、用いる検査食も限られており、普段の食事の嚥下を完全に再現した検査は不可能です。VEは内視鏡を挿入する違和感のために、検査を理解できない小児や認知症の患者さんでは体動を抑制しながらの検査になることもあります。こう聞くと「使えない検査」と思われるかもしれませんが、そうではありません。「検査所見から日常の食事中の嚥下を推察する」のがポイントです。
具体的に例をあげると、VEの違和感で患者さんが暴れてしまい、抑制しながら行ったVE検査で誤嚥がなかったとします。となると、「抑制していない日常の食事は、もっと安全に食べられているだろう」と解釈できます。ぜひ「検査場面の所見」だけで判断するのではなく「日常の嚥下」を推察して方針を決定してください。そのためには嚥下機能検査の前に、しっかりと食事場面を観察し、検査の目的を明確にしておく必要があります。食事場面の観察無しの「とりあえずの検査」からは十分な情報が得られません。
誤嚥発見!
嚥下機能検査は誤嚥を見つけるためだけに行うのではありません。嚥下諸器官の動き、食塊形成の様子、嚥下反射が生じるタイミング、咽頭残留などなど、さまざまな観察ポイントがあります。とは言っても、やはり誤嚥、とくに不顕性誤嚥(ムセ、咳嗽反射が生じない誤嚥)が観察できるというのは検査の大きな利点です。
では検査で誤嚥が見つかったら、どういう解釈・判断をしますか?
結論から先に言うと「誤嚥しているから経口摂取禁止」は間違いです(嚥下を診なれていない施設では実際に「誤嚥を見つけて禁食」という指示が出されています…)。誤嚥していても咳で喀出できれば肺炎にはなりません。喀出できなかったとしても誤嚥したものが肺に侵襲性がなく、少量であれば臨床では問題になりません。「誤嚥=誤嚥性肺炎」ではないということです。
誤嚥が見つかった場合にまず行うことは、誤嚥が最小限になるような、食事内容や食事時の姿勢、嚥下訓練のメニューを見つけることです。もちろん大量の誤嚥を認めた場合は、経口摂取の制限を指示することもあります。ただそのときも検査の結果だけでなく、これまでの肺炎・発熱の頻度、呼吸機能、免疫機能、生命予後、などを総合的に考えて判断しなければなりません。そのためにも「とりあえず検査」ではなく、検査前の十分な診察・観察が必要なのです。

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