大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。
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せん妄とは? せん妄の症状と看護
今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。
せん妄の3つの因子とは?
看護師Aさん:「最近うちの病棟でもせん妄対策に取り組もうという話が出ているんですが、何から手をつけたらいいのかわかりません。どうすればいいでしょうか?」
井上先生:「せん妄はいろいろな要因が複雑に絡み合って起こるので、どうしても対策が難しいと感じてしまいますよね。せん妄へのアプローチを考える上で、せん妄の3つの因子について理解しておくことがとても大切です」
看護師Aさん:「3つの因子って何ですか?」
井上先生:「せん妄には、大きく分けて『準備因子』『直接因子』『促進因子』の3因子があります。それぞれ、『準備因子』はせん妄になりやすい素因、『直接因子』はせん妄を引き起こす直接原因、『促進因子』はせん妄を悪化または遷延化させるものになります」
看護師Aさん:「言葉だけ聞くと、少し難しそうですね」
井上先生:「そういう声をよく耳にします。ここでは、焚き火に例えて、できるだけわかりやすく説明しましょう」
看護師Aさん:「焚き火ですか?」
次ページ:せん妄を焚き火にたとえてみると?
井上先生:「下の表を見て下さい。ここでは、焚き火が燃えているのを“せん妄が起こっている状態”とイメージして下さい。焚き火が燃えるためには、下地となる『薪』と、実際に火をつける『ライター』と、燃え続けるための『油』が必要になります」
看護師Aさん:「なるほど。『薪』に当たるものが準備因子、『ライター』が直接因子、『油』が促進因子というわけですね」
井上先生:「その通りです。繰り返しになりますが、このように3つの因子を整理して覚えておくことが、せん妄の治療やケアを行う上でとても重要なんですよ。準備因子や直接因子、促進因子の具体的な内容については、また次回以降に詳しく解説します。今回はひとつだけとりあげます。
「環境の変化」というのは、3つの因子のどれに当てはまると思いますか?」
看護師Aさん:「ICUとか、環境が変わってせん妄になる患者がいるように思うので、直接因子でしょうか?」
井上先生:「そう考えている医療スタッフは多いようですね。環境の変化が直接因子というのは実は間違いで、せん妄を悪化させたり長引かせるもの、すなわち促進因子になります」
看護師Aさん:「そうなんですか?患者がせん妄になったら早目に退院させたほうがいいと思っていましたが、違うのでしょうか?」
井上先生:「せん妄の原因が、例えば高カルシウム血症にあるとしましょう。その場合、退院して家に帰って、果たしてせん妄がおさまるでしょうか?」
看護師Aさん:「高カルシウム血症に対する治療が必要なわけですから、いくら慣れた環境だからといっても症状は改善しないですね」
井上先生:「その通りです。確かに患者を取り巻く環境に配慮することはとても大切な視点ですが、環境の変化はあくまでも促進因子であることに注意しておきましょう」
看護師Aさん:「なるほど。各因子について、もっと理解を深めておくことが必要そうですね」
井上先生:「今日はここまでです。次回からは、3つの因子のそれぞれについて、もう少し詳しく解説していきます。」
看護師Aさん:「次回もよろしくお願いします!」
次回は「せん妄の発症や重症化を防ぐ!」について解説します。
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