
株式会社ケープ
監修者の記事一覧看護師の皆様こんにちは、モレーンコーポレーションです。私たちモレーンは、1993年の設立以来、全国の医療機関向けに感染管理(インフェクション・コントロール)を専門にコンサルティング・セールスを行っています。
さて、第1回は、ずばり「新型インフルエンザ対策」。本来なら「感染対策の基礎編」からスタートすべきですが、連日、新聞やTVで報道され、「感染列島」という映画も上映されていることから、一般国民の関心が高まっているこの問題について「医療従事者」としてどのように取り組むべきかを最初に取り上げたいと思います。

はじめに
フェーズ3。
WHOが定めた新型インフルエンザ発生を警戒する段階が6段階中、3段階(フェーズ3)に達しています。鳥からヒトへ感染するH5N1型鳥インフルエンザの感染症例が減少傾向にあるとはいえ止まらず、連日、インドネシアやベトナム、中国等で発症、死亡が報告されており、ヒトーヒト感染が現実化する(フェーズ4~6)のも時間の問題だとされています。
国立感染症研究所によるとインドネシアでは確認されているだけで既に139例の鳥インフルエンザが報告され、その内、113例が死亡(致死率81%!)という異常事態です。
また、中国では今年に入ってから8例が発生し、その内5名が死亡、中国の正月に合わせてヒトの大移動が始まっていることから感染拡大が懸念されています。厚生労働省の予想では、新型インフルエンザが発生すると日本国内だけで64万人が死亡するとされています。実際、過去のパンデミック、1919年のスペインかぜでは日本国内で39万人が死亡(当時日本人口:約5500万人)、世界全体でも約5000万人が亡くなったといわれています。
医薬品の技術進歩や医療体制の充実、栄養状態の向上等、90年前と同じ惨劇が繰り返されるとは考えにくいですが、交通手段の飛躍的な発達や人口過密により、爆発的なスピードで感染が拡散する可能性があり、ヒトがまだ経験したことがない病原体(新型)であることからも、ひとたび発生すれば大惨事になる可能性があります。
どの医療機関にも例外なく患者さんが来る?
厚生労働省のガイドラインでは、新型インフルエンザの患者が国内で発生した場合、感染症指定医療機関(特定、第一種、第二種)で入院治療を行うとしています。
しかし、これらは全国で344施設しかなく、総病床数も約1700床しかありません。これに対して、実際にパンデミックが発生した場合、医療機関への受診者数は2500万人、入院者数は200万人と想定されています。
早期封じ込め対策が功を奏すれば、感染症指定医療機関のみでの対応も可能かもしれませんが、多くの専門家はひとたび患者が国内で発生してしまえば、封じ込めは困難であり、非常に短期間でパンデミックに突入すると考えられています。
実際、厚労省の「医療体制に関するガイドライン」でもパンデミック期以降は、原則、全ての医療機関で新型の診療をすることを想定しており、一つの病棟を専用にするなどの体制を求めています。
モレーンコーポレーションが毎年行っている「患者意識調査(全国3000人対象)」でももし、新型インフルエンザの症状が出た場合、45.6%の患者が「小規模病院・クリニックを受診」、19%の患者が「大学病院を受診」と答えています。詳細はこちらを参照下さい。
政府は各都道府県に対し、発熱情報センターや発熱外来を設置し、新型に対応する病院、しない病院を定め、医療体制が破綻しない様、勧告していますが、上記の状況からも全ての医療機関は、患者が殺到することを前提に準備をする必要があります。
新型インフルエンザの感染経路
感染対策として最も重要な事の一つに、その病原性微生物の感染経路の特定があります。新型インフルエンザはまだ発生していないので、その感染経路を特定することはできませんが、通常のインフルエンザが手指などに付着したウィルスを体内に取り込む「接触感染」や、咳やくしゃみ、唾などの飛沫の曝露による「飛沫感染」であることから新型インフルエンザに対しても基本は、「接触・飛沫感染」と言えます。
しかしながら、エアロゾルが発生する処置や患者に近接しなければならない(2メートル以内)等、特にリスクが高いと考えられる場合は、他の予防策と共に「空気(感染隔離)予防策」も考慮に入れる必要があります。

新型インフルエンザの感染対策
まだ発生していないので断定はできませんが、感染経路の予測ができることからその感染対策は非常にシンプル。下記の5点となります。

ワクチンと抗ウィルス薬
日本政府は現在、新型インフルエンザに備えて、プレパンデミックワクチンを約2000万人分、抗ウィルス薬のタミフルを約2800万人分、リレンザを約135万人分備蓄しています。プレパンデミックワクチンは、その効果や安全性を確認するために医療従事者約6000人に事前接種されましたが、まだ最終的な結果は確認されていません。
また、安全性が確認された場合でも、このワクチンは新型に変異する可能性が高いと思われる鳥インフルエンザH5N1型から製造されているので、H5N1型以外のウィルスが新型になった場合、その効果は期待できないことから過大な期待は禁物です。
パンデミックワクチンは言うまでもなく、新型インフルエンザが発生してからでないと製造できないので発生第1波には開発製造が間に合わないため、少なくとも基礎免疫をつけることができるプレパンデミックワクチンの接種が、現時点でのワクチンの第一選択となります。
抗ウィルス薬に関しては、備蓄量の増加が期待されていますが、昨今、タミフルに耐性を持つインフルエンザウィルス(H1N1)も発生してきており、新型にも耐性が出るかどうかは、現時点ではわかりませんが、警戒を怠ることはできません。新型インフルエンザ対策としてこれらの医薬品の備蓄量を政府が増やすことができない理由として、予算や有効期限の問題もありますが、上記の様な問題がジレンマとしてあります。
第1回は、新型インフルエンザの概要および医薬品に関して述べましたが、第2回はこれに引き続き、個人防護具を中心に具体的対策について触れたいと思います。どうぞご期待下さい。
\ この記事をシェアする /










