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これからの血友病治療における課題と看護師の役割―血友病治療のさらなる向上のために―【PR】

2017.08.12
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吉川 喜美枝

聖マリアンナ医科大学病院 看護部 師長

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土谷 貴子

札幌徳洲会病院 外来 看護師

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小野 織江

産業医科大学病院 血友病センター 血友病ナースコーディネーター・ 看護師

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聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 看護師

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西田 恭治

国立病院機構大阪医療センター 感染症内科 医師

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解説
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大八木秀和

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血友病治療ではチーム医療が重要です。昨今、個別化治療が血友病でも取り上げられているなかで、看護師は患者さんに近い存在として、患者さんの生活環境の変化、薬の使用状況、出血状態にいち早く気づくことができ、モチベーションの向上にも貢献できます。
血友病治療の最前線で活躍する医師と看護師が集まり、今後の血友病治療における看護師の役割について討論しました。それぞれの実体験から血友病患者さんのアドヒアランス向上に向けてのヒントがみえてきました。
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変化する血友病治療と アドヒアランスへの認識

血友病は、先天的に血液凝固第Ⅷまたは第Ⅸ因子が欠損、欠乏して出血傾向を来す遺伝性出血性疾患で、欠乏している凝固因子を注射で補う補充療法が治療の根本となります。
1983年に健康保険で在宅自己注射療法が認可され、患者さんや家族は病院以外での止血管理が可能となりました。さらに、2000年前後からは出血の有無にかかわらず一定間隔で補充療法を行うことで出血を起こさないように維持する定期補充療法が止血治療の主流になり、患者さんの治療アドヒアランスを良好に維持させることが患者さんのQOLを維持向上させると考えられています。

アドヒアランスの概念は、HIV領域で薬物療法が確立した1997年を境に広がっていきました。
当時のHIVの治療では、適切な用法・用量で薬を飲めばウイルスの値が下がり免疫機能が回復する一方、薬の錠数が非常に多く、飲む回数やタイミングもまちまちであることに加え、強い副作用もあったため、1年間継続できる患者さんは半分程度で、残り半分の方たちをどのように治療に向かわせるかが課題となっていました。
現在は 薬が進歩し、1日1回1錠の治療も一般的となり、服薬を継続する困難さは克服されつつあります。このように、時代とともにアドヒアランスへの取り組みも変わってきます。

チーム医療、包括医療、アドヒアランスという言葉は、どの領域でも一般的になっていますが、血友病治療においても重要なキーワードです。看護師はチーム医療や包括医療において中心的な役割を担って、患者さんのアドヒアランスを支えています。
そこで今回、日常的に血友病治療に携わる看護師に集まっていただき、看護師の役割や医療が進歩しても未だ残る課題について話し合っていきたいと思います。
(以上、解説:西田 恭治さん)

西田 恭治さんの写真

西田 恭治さん

輸注記録はアドヒアランス確認の第一歩

●西田:現在の治療は「定期補充療法」が中心ですが、血友病患者さんのアドヒアランスは思春期や青年期に特に低くなるという状況があります(図1)。アドヒアランスの確認はどのようにしていますか?

年齢ごとの定期補充療法のアドヒアランスのグラフ

●下司:医師と患者さんの医療面接に同席したり、個別に面談を行うことで、きちんと輸注できているか記録を忘れていないかをチェックしています。普段はきっちり輸注できている患者さんでも、人間関係や生活環境が変わるとアドヒアランスに影響するため、環境の変化も聞き取るようにしています。
また、本人は定期的に輸注できていると自覚していても、よく確認するとそうではない場合があるので、私たちと患者さんの認識にズレがないかを確認することが大切だと感じています。

●西田:内服薬でしたら外来時に尋ねるしかないのですが、定期補充療法は本来でしたら輸注記録で確認できるはずなのです。しかし治療施設にアンケート調査を行うと、輸注記録の実施は約3~4割程度です。
ただし、これは患者さんの問題だけでなく、医療者側の問題もありそうです。医師が興味を示さないので、記録はしていても医師と共有し、提出していないという患者さんもいます。皆さんの施設の状況はいかがですか?

●小野:当院では輸注記録は家庭注射、自己注射を指導する際の指導項目に組み込んでいます。日本血栓止血学会の血友病在宅自己注射療法の基本ガイドラインにも謳われていますので、輸注の一連の動作と同様に、注射のあとの記録は当たり前の手順であると指導するようにしています。

●戸草内:当院では、輸注開始時に輸注記録の説明を行い、記入するよう指導しています。
受診の際に必ず医師がチェックをするため、毎回持参するよう説明もしています。輸注記録を医師が見ることで、問診で聞き取ったことと相違がないか確認ができます。患者さん自身がオンデマンドの注射をしていたことを忘れてしまっていたときなど、受診時に輸注記録を確認することで、そのときの症状や程度・対応の振り返りも患者さんと一緒にできています。

戸草内 智恵さんの写真

戸草内 智恵さん

●西田:私が大阪医療センターに着任した当時、血友病を専門としている医師はおらず、輸注記録をつけている患者さんは1人もいませんでした。そこから輸注記録をつけてもらうようにしていったのですが、治療開始時から教育する場合と違って、途中からの患者指導はとても苦労しましたね。「どうしてそんな記録つけなければいけないの。今までの先生はつけろと言わなかった」と。

●吉川:途中から輸注記録をつけてもらうには、患者さんが何らかのメリットを感じないと継続は難しいと思います。いくら必要性を説いたところで、今までしていなかったことに取り組むことを、患者さんは面倒くさいと感じるのではないでしょうか。注射するのも手間なのに輸注記録までという患者さんには「大変だよね」と患者さんの気持ちを受け止め、「私たちもわかるよ」と伝えて、「だけど必要なんだよ」とその必要性を伝えます。

●和田:以前当院では、自己注射導入時は記録していたのに、いつの間にかつけなくなるなど、輸注記録をつけていない人が多くいました。
しかし、医師が医療面接時に必ず輸注記録を確認するようになって、患者さんの意識が少しずつ変わってきました。私たち看護師がいくら患者さんに説明しても、医師から提出を求められないと、記録をつけて病院まで持ってくる行動まではつながりにくいと感じています。提出のなかった患者さんには「次回は必ず持ってきてくださいね」と言って意識づけしています。ときどき、つけ忘れた患者さんが外来前に廊下で一所懸命書いています。それも意識づけされてきた証拠かなと思っています。

会談中の和田さん、小野さん、戸草内さん、吉川さんの写真

輸注記録を 継続させるための工夫

●西田:患者さんのアドヒアランス向上のためには輸注記録をつけてもらうことが重要ですが、継続のために工夫していることはありますか。

●小野:診察を行う医師が必ず「輸注記録を見せてください」と確認しています。患者さんの前で医師が輸注記録を確認することが、患者さんの家庭での補充療法に関心をもっていることへのメッセージとして伝わると思います。
また、頑張っていることをほめることが継続のモチベーションにつながると思いますので、看護師は積極的にほめることを心がけています。

●吉川:医師はあまり患者さんをほめなかったりするので、「こんなに書いてこれなかったのに書いてくるようになってすごいですよね」などと口添えをして、医師からもほめてもらえるようにすることもあります。

吉川 喜美枝さんの写真

吉川 喜美枝さん

●土谷:当院も、医師が患者さんに「輸注記録を持ってきましたか」と毎回確認するので、多くの患者さんが輸注記録をつけています。出血状況の確認のためにもなるべく輸注記録を提出してもらい、患者さんや家族と一緒に見て対話を重ねることで、輸注記録の大切さを自覚してもらうようにしています。

●小野:どうしても輸注記録がつけられない人には、ほかの方法を一緒に考えていくことも看護師の役割だと思います。
以前、どうしても記録がつけられない小学校4年生の患者さんがいました。既存の輸注記録の言葉が難しく、母親が携帯電話に記録するため、母親にお任せで自分の仕事と認識しづらかったのだと思います。そこで型通りの記録帳ではなく自由帳を使って、「注射をした日」「製剤の名前」「投与単位数」「注射をした理由」と項目を作り罫線を引いて、手書きの輸注記録帳を作りました。「これに書いてね」と渡したら書くことができました。今は小学校6年生になりますが、上手に継続できています※。
また、紙媒体の記録を面倒くさがる青年期の患者さんには、携帯電話の輸注記録アプリが投与記録の習慣づけに有効なケースもありますが、病院に記録が残らないという難点もあります。

※紹介した症例は臨床症例の一部であり、全ての症例が同様の結果を示すとは限りません。

土谷 貴子さんの写真

土谷 貴子さん

患者さんとの関わりが治療継続のモチベーションに

●西田:良好なアドヒアランスの要因の1つに、「看護師との良好な関係」があります(図2)。これは、患者さんの年代によってもだいぶ変わってくるのですが、皆さんが患者さんのモチベーションを維持するために工夫していることはありますか。

定期補充療法継続のモチベーション説明図

●和田:患者さんが成長して、自分で日常生活に気をつけるようになると、小学生の頃のように動きまわらなくなり、出血が少なくなることがあります。また、就職してデスクワークになると出血が少なくなることもあります。これを患者さんが「もう出血しなくなった」と勘違いし、受診率や輸注量が低下することがあります。
そこでタイミングを見計らい、「もし、また出血して周囲を驚かせたり、休んで迷惑かけたりしたらあなたが困るでしょう」と働きかけます。「忙しくて受診できなかったら、電話でいいから相談してね」とも伝えています。

●吉川:思春期になると、反抗期も重なり保護者と会話しなくなるので、私たち看護師とも疎遠になりがちです。ですから、看護師から「久しぶりだね。最近調子はどう」と声かけして、外来受診から脱落しないように心がけています。
逆に「もううちの子は自己管理できるはず」と、保護者が子どもに丸投げしてしまい、子どもの受診率が下がったことがありました。

和田 育子さんの写真

和田 育子さん

●西田:思春期の患者さんには、1人だとしっかり会話ができるのに、保護者がいるとうまくコミュニケーションが取れなくなることがありますね。

●土谷:保護者が子離れできておらず、先回りして医療従事者との間に入ってしまうためではないでしょうか。
よくあるのが、保護者のモチベーションだけが高く、子どもとの乖離が生じていることです。そういった傾向がみられたときには、まず子どもだけと医療面接し、あとから保護者と話す方法をとっています。「自立に向けてサポート中です」と保護者には説明していますね。個別に話を聞くと、子どもと保護者で話が食い違っていることもよくあり、新しい課題に気づくこともあります。

●小野:成人の場合では、職場や配偶者に遠慮し、周りの人ではなく、看護師に頼ってくる患者さんもいらっしゃいます。
私たち看護師は、支援者が少ないなかで頑張らなければならない患者さんのよき理解者として、個々のライフスタイルを適切に把握し、長期にわたり受診が滞っている患者さんや、定期補充療法中の患者さんには製剤の残数がなくなる時期に声かけを行うなど、患者さんの療養生活が良好に維持されるようにサポートすることが大切だと思います。

●戸草内:成人の方では仕事との兼ね合いも考慮する必要があります。
先日、非常用の住所と電話番号を再確認した際に、ついでに通勤時間や通勤手段、職場に製剤を持っていっているかどうかなども確認し、必要に応じてアドバイスをしました。

小野 織江さんの写真

小野 織江さん

患者さんの理解を促し出血予防につなげる

●西田:新薬の作用時間を延長できる半減期延長製剤が登場し、出血管理が変化してきました。オンデマンド療法しかなかった時代には輸注記録のなかに出血部位の記載欄がありましたが、治療の進歩でゼロブリーディング(年間出血回数がゼロ)も可能となりつつある現在では、それらの項目の必要性は低下しているかもしれません。
しかし、輸注回数がほぼ出血回数に近かったオンデマンド療法時代とは異なり、定期補充療法では輸注回数が出血回数とはならず、輸注記録無しでは出血の有無がわかりにくい時代になりました。

●和田:患者さんのなかには、輸注記録には記載してないが、定期補充療法の合間に違和感を覚える人がいることがあります。この違和感は、輸注記録からはわからないため、患者さんからしっかりと医師に伝えてもらわなければなりません。

●西田:例えば、従来製剤を使用して出血ゼロだった患者さんがイロクテイト®(半減期延長型製剤の1つ)に切り替えたことで、同じ出血ゼロでも違和感がなくなったなど状態が異なる場合があるということですね※。輸注記録に書くほどではない軽微な出血による違和感ですね。

●和田:そうです。違和感があるときにすぐに製剤を輸注するのか、軽い違和感なので次の定期補充療法のタイミングまで待つのかは、患者さんの捉え方次第になってしまいます。
もし微出血が起きていて後者を繰り返すことになれば、関節症が進行してしまいます。これを防ぐにはどのようにしていますか。

●土谷:私は「違和感イコール出血かもしれないから、とりあえず輸注して」と伝えています。

●吉川:患者さんは看護師にだけ言うこともありますので、その際には「それは医師に直接伝えたほうがいいよ」と伝えますし、我々からも医師に連絡をします。

●下司:逆に製剤だけをお母さんが取りに来て、「出血はないって言っていました」と言っている場合でも、輸注記録を見て出血が確認できることがあります。「出血があるようだけど、何か言ってました?」と聞くと、「ああ、そういえば1か月くらい前に痛いって言っていた気がします」と話してくれました。1か月くらい前の話になると記憶もあやふやになるので、聞き取りと輸注記録を併用することが必要だと思います。

下司 有加さんの写真


下司 有加さん

●西田:患者さんによって出血に対する問題意識にも差があるようですね。問題意識を確認するためにしていることはありますか。

●吉川:レントゲンやMRIを使って医師から説明してもらっています。患者さんが大丈夫と思っていても、実は出血していて骨に影響が出ていることを伝えます。

●小野:自己注射指導のときには、製薬会社から提供されているDVDやビデオアルバムで血友病性関節症のしくみの映像を見てもらいます。関節内に出血が起こると関節の中でどんなことが発生し、どのように変化していくかを表現した映像です。
幼少期から定期補充療法を続けてきた青年期の患者さんは、関節内出血をあまり経験せず育ってきていますので、定期補充療法の大きな目的である血友病性関節症の発症・進展予防についての意識が低いと思われます。自分の目に見えないところでの反復性の出血で、身体に障害を及ぼすような問題が起こるということを、視覚に訴えて理解してもらうのが目的です。

●和田:言葉で説明されるだけでは、なかなか理解しづらいことも、映像で見せられると理解しやすく印象にも残りやすくなります。映像や模型などあらゆるものを駆使して、患者さんの理解を深める手伝いをすることも、私たち看護師の重要な役割ですね。

西田さん、下司さん、土谷さんの写真

※紹介した症例は臨床症例の一部であり、全ての症例が同様の結果を示すとは限りません。
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(ナース専科マガジン2017年9月号より転載)

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