
ここで解説する内容はすべて一般的な手術を受ける場合の術前の抗菌薬投与の話です。手術とは関係なく、術前から治療として抗菌薬投与が必要な疾患をもっている場合などでは、その疾患の治療も必要となりますので医師の指示を確認しましょう。
無菌操作であれば菌はゼロ?
手術といえば、空気がとてもきれいで滅菌ガウンや滅菌手袋を装着して、無菌操作を行う場所と思っている人は非常に多いでしょう。なぜ、そこまで手術室では無菌操作が必要かというと、やはり皮膚を切開することが一番に挙げられます。皮膚は体内への微生物の侵入を防ぐ最も有能なバリアといえます。

そのバリアである皮膚を切開することは体内に微生物が入る隙を与えることになるため、手術中の患者さんは非常に感染しやすい状態となります。つまり、感染を起こさないために空気の清浄度を保ち、無菌操作を行っているのです。
先ほどから「無菌操作」といっていますが、実際のところ手術野の微生物の数が0であることはまずありません。滅菌手袋や滅菌ガウン、滅菌器械を使用しており、つい「無菌操作」といってしまいますが、「滅菌」は確率的な考え方をしており、滅菌とは「無菌性保証水準(sterility assurance level:SAL)」が10-6以下とされています。SALの考え方は少しややこしいですが、簡単にいうと滅菌された器械が100万個あった場合、そのうち1個にしか微生物が残っていないのであれば「滅菌」ということです。そのため、滅菌された器械にも菌が存在する可能性があります。
また、手術を行うために皮膚を切開しますが、その皮膚の表面には本来さまざまな菌が存在しています。皮膚は人体ですので、器械のように高圧蒸気滅菌や低温プラズマ滅菌などを行うことはできません。そのため、よく使用される消毒薬、10%ポビドンヨードを用いて皮膚の消毒を行います。しかし消毒ではすべての微生物を殺滅することはできませんので、手術野には少なからず微生物が存在していると言えます。そしてこれらの微生物が増殖してしまうと感染が起こります。
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