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第13回 せん妄の治療やケアはどうするの?①可逆性・不可逆性せん妄のサムネイル画像
取材
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餅田 佳美(もちだ よしみ)

東大阪市立総合病院 医療安全管理室 室長

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大きな手術後やがんの終末期などに極めて高頻度にみられる「せん妄」。せん妄は、注意力や意識が低下することで患者さんが転倒・転落したり、幻覚が見えて暴れたりと治療を大きく阻害するものです。特に低活動型のせん妄は見落としがち。本連載ではそんなせん妄へのアプローチ法をやさしく解説します。


▼せん妄についてまとめて読むならコチラ
せん妄とは? せん妄の症状と看護


今春から外科病棟に配属された看護師のAさん。担当患者さんが手術後にせん妄を発症してしまい、日夜悪戦苦闘・・・。これを機に、せん妄について体系的に勉強したいと考えています。

せん妄の区分

井上先生:「せん妄には「可逆性せん妄」「不可逆性せん妄」という2つの分け方があるのは知っていますか?」

看護師Aさん:「正直なところ、あまりわかっていません」

井上先生:「この概念は、緩和医療では特に重要になります。可逆性せん妄と不可逆性せん妄では薬物療法やケアの内容などが違ってくるのです」

看護師Aさん:「そうなんですね。では、具体的に教えて下さい」

井上先生:「下の表を見て下さい。

せん妄を認めた場合、何が直接因子になっているかをつきとめ、それが治療可能なものかどうかを評価することで、そのせん妄が可逆性なのか不可逆性なのかを区別することができます」

井上先生:「可逆性せん妄とは、直接因子が治療可能なせん妄のことを言います。例えば、感染が原因のせん妄であれば抗生剤の投与でせん妄からの改善が見込めますし、薬剤によるせん妄であれば原因薬剤の中止でせん妄が治りますよね」

看護師Aさん:「なるほど。それに対して、肝不全や腎不全など、進行する臓器不全に伴うせん妄は改善が難しいので、不可逆性せん妄というわけですね」

井上先生:「その通りです。ただし、確かに病状の進行に伴うせん妄は回復困難な場合が多いのですが、終末期であってもせん妄の約半分は一時的な回復が可能とされていますので、あきらめずにアプローチすることが大切です」

看護師Aさん:「わかりました。では、具体的な治療について教えて下さい」

次ページは具体的な治療についてです。

井上先生:「まず、可逆性せん妄と不可逆性せん妄では目指すゴールが違います。可能性せん妄であればせん妄からの回復を目標としますし、不可逆性せん妄であればせん妄の部分症状の改善を目指すことになります。

可逆性せん妄の治療は、直接因子の除去と薬物療法です。薬物療法では主に抗精神病薬を用いますが、まずはせん妄の原因を取り除くことが重要です」

看護師Aさん:前の講義(第10回)でも、せん妄治療の原則は直接因子に対するアプローチがメインで、薬物療法はあくまで対症療法であることを勉強しました」

井上先生:「そうでしたね。それに対して、不可逆性せん妄では原因を取り除くことが難しいので、薬物療法がむしろメインになります。この場合、多くは睡眠の確保や不穏のコントロールを目標とした薬剤療法になります」

看護師Aさん:「よく理解できました。ひとつ質問です。この表では、不可逆性せん妄の薬物療法として、ベンゾジアゼピンが挙げられています。ベンゾジアゼピン受容体作動薬はせん妄を引き起こすのではないのですか?」

井上先生:「そこはよく誤解されるところです。ポイントは、『抗精神病薬との併用』という点になります。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の単独使用はせん妄を惹起する可能性があるので、必ず抗精神病薬と併用することです。持続鎮静を行うなどの場合は単独で使用することもありますが、十分量(しっかり鎮静がかかる量)用いることが重要になります」

看護師Aさん:「よくわかりました。鎮静について、もう少しだけ教えて下さい」

井上先生:「不可逆性せん妄の場合、しばしば間欠的鎮静や持続鎮静が考慮されます。鎮静を行うかどうかの判断は、当然ですが医療スタッフのみで行うのではなく、患者や家族の意向を十分把握し反映する必要があります。これについては、日本緩和医療学会『苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン』も参考にして下さい」

看護師Aさん:「最後に、ケアについてはどうでしょうか?」

井上先生:「患者に対する具体的なケアの内容については、第14回の講義で詳しく解説します。患者と同様に、家族に対するケアも決して忘れてはいけません。特に、不可逆性せん妄の場合は家族の無力感や疲弊が強くなっていることもありますし、また鎮静についての考えを求められたりとストレスフルな状況にあると言ってもいいでしょう」

看護師Aさん:「医療スタッフはどうしても患者のみに目が向きがちですが、家族ケアの視点も大切なんですね」

井上先生:「その通りです。ぜひ看護ケアに活かして下さい。では、今回はここまでです。次回は『促進因子と患者へのケア』について解説しましょう」

看護師Aさん:「看護師の役割がポイントになりそうですね。よろしくお願いします!」

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