スキンケアの基本は「洗浄」「保湿」「保護」です。そして最初の「洗浄」の良し悪しでスキンケアの仕上がりは変わるといわれます。今回は「洗浄」をテーマに皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)の皆さんに、それぞれの立場からお話しいただきました。「洗浄」における落とし穴や工夫など、臨床でのケアに役立つヒントがありました。自分のケアを振り返るチャンスにもなりそうです。

【出席者】
右:浦田克美さん
東葛クリニック病院・看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師/おむつフィッター3級
中:斎藤容子さん
東邦大学医療センター大森病院・看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師
左:西島安芸子さん
静岡県立静岡がんセンター・看護部 皮膚・排泄ケア認定看護師
● スキンケアは「洗うこと」から始まる
—現場の看護師さんたちの「洗浄」に対する意識はどうでしょうか?
浦田:
当院では、看護師たちの「おむつの中はきれいにしたい」という意識が強く、方法にバラつきはありますが、積極的に洗浄する意識は根づいているようです。
斎藤:
洗浄は、スキンケアの基本中の基本として、スタッフに浸透していると思います。みんなビニール袋に洗浄剤を入れて、きめ細かい泡を上手に作り、自主的に泡洗浄に取り組んでいますよ。
西島:
当院はがんセンターですが、がん患者さんには特有の皮膚トラブル、がん性創傷、放射線皮膚炎、リンパ漏などがあり、WOCNへの相談や指導を受ける機会が多いため、私たちWOCNを通して洗浄の重要性は理解していると思います。
ただ、少しイレギュラーなケース、表面が凹凸しているがん性創傷やヒリヒリ感がある放射線皮膚炎などになると、看護師も患者さんも洗浄を怖がります。洗浄できるかどうかの判断と洗浄方法の選択の仕方には、まだ課題があるかもしれません。
—洗浄の課題はありますか?
斎藤:
皮膚の状態にかかわらず、洗浄=優しく洗えばよいとする傾向はありますね。真菌感染を起こしている部分や褥瘡の壊死組織を取り除きたい場合などは、しっかり洗浄しなければなりません。状態と目的に応じた洗浄方法を指導する必要性は感じています。
浦田:
ときどき、洗浄の大切さがわかっているからこその間違いはありますね。せっかく泡立てた洗浄剤を使っているのに、こびりついた便をぐいぐい擦って刺激を与えてしまったり、下痢があるたびに1日に何度も洗って、皮膚のバリア機能を落としてしまっている姿を目にします。まじめな看護師ほどやりがちですね。
次のページでは、「きちんと落とす工夫」「やってしまいがちな落とし穴」についてお話いただきます。
● きちんと落とすための工夫は?
—なかなか汚れが落ちないとき、うまく洗浄ができないときはどうすればよいですか?
西島:
おむつかぶれや下痢による腸液でただれた皮膚には亜鉛華軟膏を塗りますが、たっぷり塗ると泡だけでは落ちません。そこでオイルで落としてから洗浄するように伝えています。
浦田:
私も同じです。こびりついた便、皮脂の汚れ、落屑、垢などは、オリーブオイルで汚れを浮かせてから洗浄するように伝えています。一度洗浄してから保湿クリームを塗り、ゆっくり汚れをふやかして翌日洗浄する方法もあります。何が何でもそのとき落とそうとすると、患者さんに苦痛を与え、皮膚のダメージにもつながりかねません。時間をかけて落とすことも大切ですね。
斎藤:
同感です。ひどい汚れでは、1度に100%落とそうとせず、何度か洗浄を繰り返して落としていけばよいと伝えています。皮膚の生理機能を維持しつつ、感染を起こすような不潔な状態が続かないようにすればいいわけです。

繰り返し洗うことが大切だと話す斎藤さん
西島:
緩和ケアでは、洗浄行為の時間そのものが患者さんの負担になることがあります。横を向くことすらつらい患者さんに、無理な洗浄は行いません。患者さんと家族の安楽を最優先する工夫を考えます。例えば、洗い流し不要の洗浄剤を使えば、ケア時間を短縮することができます。WOCNの腕の見せどころでもあります。
● やってしまいがちなケアの落とし穴
—きちんとしたケアが提供されている一方で、ついやってしまいがちな「洗浄」の落とし穴があったら教えてください。
浦田:
「泡で洗う」という言葉が一人歩きしている気がしています。泡で出てくる洗浄ポンプがないと泡を作ろうとして、患者さんの皮膚にじかに洗浄剤をこすりつけて泡立てている看護師がいました(笑)。

ケアの落とし穴について話す浦田さん
西島:
ありますね。ガーゼで泡立てたあとに、ガーゼごと擦り洗いをして、せっかく作った泡を台無しにしているケースもありました。
浦田:
泡であれば何でもよいだろうと、目の粗い泡のまま洗浄に使っていることもありますね。泡の質、泡の立て方にも注意が必要だと思います。
斎藤:
洗浄後の保護の話になりますが、赤みのあるおむつかぶれに対し亜鉛華軟膏で保護する際に、ステロイド剤と混合して使用した例をみたことがあります。混合すると軟膏の流動性が増し、硬度も変わって皮膚付着性は低下。結局、患部の保護がうまくいかず、炎症が悪化することがあります。看護師がこの落とし穴を知っていれば、医師に別々に処方してもらう依頼ができますね。
西島:
分子標的薬では、副作用としてざ瘡様皮疹が現れます。顔面を含めた全身にできる皮疹にはステロイド剤が処方されますが、患者さんは洗わずに重ね塗りしてしまうことが多いのです。ひどいときには皮疹に膿を生じてしまいます。WOC外来で気づけば、「洗ってから塗る」ことを指導していますが、化学療法外来の看護師さんからも、直接洗い方を伝えてもらえるとよいと思いますね。

がん患者さんならではのスキンケアを話す西島さん
● スキンケア上達のコツはここにある
—「洗浄」をはじめスキンケアをよりよいものにしていくためには、どのようなことに気をつけたらよいでしょう。
斎藤:
スキンケアの基本は「洗浄」「保湿」「保護」ですが、その前に「観察」があることを忘れないでほしいです。皮膚障害の発生を防ぐ予防的なスキンケアをするのか、皮膚障害に対する治療的なスキンケアをするのか。さらに、トラブルがあるなら、その原因は──何か成分が関与する化学的なものなのか、不適切なケアによる物理的なものなのか、あるいは、発汗阻害や蒸れなど皮膚が生理機能を保てないための生理的なものなのか、まず観察してからスキンケアに取り組んでほしいですね。
西島:
患者さんの皮膚に対して、自分の顔にしているくらい親身でていねいなケアができていますか? と、私はよくスタッフに尋ねます。自分の顔であれば、毎日いろいろなスキンケア製品を試して、よいものを探して使っていますよね。同じ思いでやっていますか? と聞いています。また、「自分の親に受けさせたいスキンケアを患者さんにも提供しましょう」ともアドバイスしています。
浦田:
「いま、患者さんに行っているケアが、何十年か経ったとき自分が受けたいケアになっていますか?」と尋ねると、皆ドキッとするようですね。本当に適切で患者さんに寄り添ったケアになっているか、つねに確認してスキンケアを提供していける私たちでありたいですね。
【コラム】私たちも「ミノン体験」してみました!


第一三共ヘルスケアが開発
低刺激性処方の洗浄料シリーズ「ミノン」
浦田:
洗浄後のつっぱり感を評価するには顔が一番わかりやすいので、「ミノン全身シャンプー」と「ミノンスキンソープ」で顔を左右片側ずつ洗ってみました。
斎藤・西島:
それは考えましたね(笑)
浦田:
この方法が一度で一番よく比較できるのです。洗顔後は左右どちらもつっぱり感がなくしっとりとうるおいが残っている感じでした。
西島:
「弱酸性タオル」は、ふわふわな表面としっかり洗えそうな裏面があり、とても泡立ちがよくて使いやすい印象です。
斎藤:
落ちにくい軟膏が、このタオルならやさしく洗っても落ちそうですね。この小さい版のタオルがあれば、病棟内でも使えるかも!(笑)
浦田:
このタオルは背中を洗うのによいサイズですね。皮膚は脆弱だけれどどうしてもタオルで洗わないと気がすまないという男性患者さんは多いのです。そういう方に試してもらいたいですね。
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