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監修者の記事一覧国立精神・神経医療研究センター病院は、精神疾患、神経・筋疾患、発達障害を専門とするナショナルセンター病院であり、神経難病病棟におけるパーキンソン病患者さんの割合はおよそ7割に及びます。豊富な事例をもつ同院から、転倒対策を行った例と医療・福祉サービスを利用して在宅へ移行した2例を紹介します。
国立精神・神経医療研究センター病院は、精神疾患、神経・筋疾患、発達障害を専門とするナショナルセンター病院であり、神経難病病棟におけるパーキンソン病患者さんの割合はおよそ7割に及びます。豊富な事例をもつ同院から、転倒対策を行った例と医療・福祉サービスを利用して在宅へ移行した2例を紹介します。
事例1:パーキンソン病患者の転倒対策における事例検討
座長:梅津珠子先生
国立精神・神経医療研究センター病院 看護師長

演者:菊池汐里先生、
国立精神・神経医療研究センター病院 看護部 看護師

環境調整と服薬管理により転倒対策を行った事例<Aさん>
神経内科の看護師である菊池汐里先生から、転倒対策事例としてAさんの報告がありました。
1.事例紹介<Aさん>
パーキンソン病 Yahr3 60代女性
・2000年:歩幅が小さいと指摘された。
・2005年:山に行ったときに枝に絡まって転倒した。
・2006年:A病院神経内科受診。ドパミン受容体作動薬2剤の内服を開始した。Bクリニックで漢方や鍼治療を受けた。
・2007年:Cクリニックへ転医、抗パーキンソン剤の内服開始。
・2009年:動悸、息切れ、食欲低下、体重減少が出現。薬が効くときと効かないときがあった。うつ病と診断されて四環系抗うつ薬内服開始した。
・2010年:on時の筋強剛はなし。Off時の焦燥感や不安感があった。内服は規則正しくできていたが、ジスキネジアが少しずつ出てきていた。
・2011年:Wearing Offの自覚はなかった。周囲から「本当にパーキンソン病なの?」と言われるほど変動がなかった。
・2014年:転倒の回数が増えた。毎日転ぶようになった。
・2015年:食事中にむせていた。誤嚥性肺炎で入院した。
Aさんは、ヤール3、60歳代の女性です。パーキンソン病の患者さんはすくみ足を防ぐために広いスペースを確保することもありますが、Aさんはふらつきも強く、動く際に支えとなるものが必要な状態でした。そこで病室のテーブルとベッドを近づけ、ぎりぎり1人立てるだけのスペースを確保し、余分なスペースをなくしました。「Aさんが移動時にテーブルに手をつけるようになったことで、姿勢が安定して転倒がみられなくなりました」と、菊池先生はその効果を話します。
また、歩行介助の仕方も工夫しました。Aさんはすくみ足が出やすく、看護師が手を引いて歩行介助しても1歩目がなかなか出ませんでした。そこで歩行の開始時には、声掛けによるキューを出すようにしました。「すくんだとき、『せーの』という声掛けで患者さんの足が出るようになります。また横で『イチ、ニ、イチ、ニ』と声を掛けることも有効です。そのとき患者さんに、頭の中でもリズムを唱えてもらうと歩きやすくなります」と具体的なコツを話しました。
さらに、薬剤調整で入院することも多いPD患者さんのために、薬剤調整中の注意点も述べました。一般に薬剤調整中には薬の効果が出すぎたり出なかったりして転倒が多くなります。そこで看護師は、患者さんの動きが普段と違わないか、振戦、すくみ、無動(寡動)、ジスキネジアの様子や出現の時間帯、症状の持続時間や変化などを注意深く観察することが大切です。
「こうした変化を把握するには、患者さんの症状日誌が有用です」と菊池先生は言います。縦軸が身体の動きやすさ、横軸が時間である症状日誌は、溜まれば有用なデータにもなるため、認知が保たれている患者さんには積極的に記載してもらうとよいことを勧めました。
その他、PD病患者さんのおよそ半数がもつといわれ、Aさんにもみられていた嚥下障害について、胃ろうを造設し、胃ろうから与薬することで薬が確実に内服できるようになったこと、薬の確実な内服により症状コントロールがつき、誤嚥リスクも低減したこと、その結果QOLの向上と転倒対策が同時にできたことを伝えて報告を終えました。
事例2:パーキンソン病患者の転倒対策における事例検討
座長:梅津珠子先生
国立精神・神経医療研究センター病院 看護師長

演者:菊池汐里先生、
国立精神・神経医療研究センター病院 看護部 看護師

医療・福祉サービスを使って在宅へ移行した事例<Bさん>
さらに、菊池先生から在宅移行事例としてBさんの報告がありました。
1.事例紹介<Bさん>
・80歳代、女性
・パーキンソン病 Yahr4(発症してから7年経過)
・姿勢異常(腰曲がり・首下がり)が著明で、リハビリ目的で入院
・移動は主に車椅子を使用
・入院前は毎日転倒していた
・MMSE20/30点、幻覚あり
・同年代の夫と2人暮らし
・遠方に住む長男は、病気に対する理解が不足していた
Bさんは、ヤール4、80歳代の女性です。腰曲がりと頸下がりが著明で、リハビリテーション目的で入院しました。車椅子に乗った状態でもかなり頸が下がり円背がみられ、在宅では毎日転倒していました。介護保険は要介護3、パーキンソン病で指定難病を取得し、身障者手帳は取得していません。週に入浴を含むデイサービス4回、訪問看護が1回入っていました。
入院時は、胸・腰椎部周辺の痛みで寝返り困難、近位見守りによる立位の保持のみ可能でしたが、入院中のリハビリテーションにより姿勢が改善したため、主治医、病棟看護師、退院支援看護師、リハビリスタッフによる多職種カンファレンスを行い、退院に向けた支援の方向性を検討しました。
在宅療養について、Bさんと、介護者である夫、キーパーソンである長男の考えを聴取したところ、Bさんは外出やデイサービスを楽しみにしているのに対して、夫は更衣を含む外出の準備に負担感があり、長男はBさんの疾患への理解が不足していることがわかりました。そこで、外出準備についてはヘルパーを導入し、長男へは主治医から再度の病状説明を行いました。また、Bさんの外出したい思いを叶え、機能を維持するためにも、リハビリスタッフを抱える訪問看護ステーションに変更しました。
退院1か月後の訪問リハビリテーションからの報告では、Bさんは歩行練習を継続しており、ADL・QOLは入院前より向上していると考えられるとの報告でした。
医療・福祉サービスを使って在宅へ移行した事例<Cさん>
演者:三好智佳子先生
国立精神・神経医療研究センター病院 看護部 慢性疾患看護専門看護師

神経内科の看護師である三好智佳子先生からは、家族による退院拒否がみられたものの、医療・福祉サービスの導入により在宅移行したCさんの事例が紹介されました。
1.事例紹介<Cさん>
・C氏 70歳代 男性
・パーキンソン病 Yahr3(発症してから19年)
・低体温症で他院へ緊急搬送された後、かかりつけの当院へ転院
・入院時は肺炎・せん妄状態で、身体管理のためベッド上安静同年代の妻と2人暮らしだが、介護疲れ・うつ状態になっている
・自宅から1時間以内の場所に娘が住んでいる
Cさんは、ヤール3、70歳代の男性です。デイサービス利用中に意識レベルが低下し他院に救急搬送されました。精査の結果、PDに関連する意識障害が疑われ、かかりつけの当院に転院となりました。
Cさんは一時、肺炎を併発して、せん妄状態がみられましたが、状態が落ち着き、リハビリテーションを経て歩行器で歩行するまでADLの改善が見られました。そこで自宅退院への調整に入ったところ、妻が介護負担を理由に自宅への受け入れを拒否。しかしCさんは自宅退院を希望したため、妻の介護負担を減らす目的で、医療・福祉サービス導入の検討を行いました。
多職種カンファレンスを行ったところ、問題点は、(1)夜間の排尿介助が妻の負担になっていること、(2)内服アドヒアランスが悪く、Cさんが服薬を自己調整しており体調悪化につながった可能性、(3)自宅退院したいCさんと拒否する妻との調整が必要である点が浮かび上がりました。
そこで(1)夜間排尿については、オムツは締め付け感への拒絶があったため、安楽尿器を導入、(2)内服アドヒアランスについては、定期的な服用の重要性を伝えるとともに、飲み忘れ防止タイマーを使用、(3)意見の調整については、妻の負担を考え一度他院に転院し、病状の回復を待ったうえで在宅療養に移行ということになりました。
これらの結果、内服アドヒアランスは良好となり、飲み忘れはなくなりました。また自宅にベッドを導入することでCさんは夜間に起き上がれるようになり、安楽尿器を使用しなくても自力でトイレ移動できるようになりました。
三好先生は、「PDのように長期療養を必要とされる患者さんでは、入院・転院・退院後の外来受診までを念頭に置くことが重要です」とし、継続看護を意識することの大切さを説きました。

事例検討を報告する菊池汐里先生と三好智佳子先生
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