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第6回 血液ガスデータから体内での酸素化を評価するのサムネイル画像
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野口裕幸

臨床工学技士

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サチュレーション(SpO2)とは?基準値・意味は?低下の原因と対応


「酸素化を評価する」ということ

酸素飽和度とはO2とヘモグロビンの結合率

「酸素化を評価する」ということは、「ガス交換によって必要な酸素(O2)がきちんと取り込まれているかどうかをみる」ことです。その指標の一つが酸素飽和度を示すSaO2です。これにより、ヘモグロビンと結合している酸素の割合をみることになります。

ガス交換によって取り込まれたO2は、動脈血の血漿部分に溶け込み溶存酸素となります。さらに、その溶存酸素の多くは動脈血に含まれるヘモグロビンに結合されて結合酸素になります。血液中のO2の大半は結合酸素であり、溶存酸素はごくわずかしか存在しません。

ヘモグロビンは1gあたり、およそ1.34mLのO2と結合することができます。例えば100mLの血液中に基準値14gのヘモグロビンがあると14×1.34=18.76で、18.76mLのO2がヘモグロビンと結合していることになります。(図1)

ヘモグロビン結合説明図


図1 結合

SaO2は、すべてのヘモグロビンとO2が結合している状態=100%が最高値となり、測定したSaO2の値が100%に近ければ近いほど、酸素化が良いということになります。

ちなみに、SaO2が100%となった状態で酸素投与し続けても、すでにヘモグロビンはすべてのO2と結合しているため、結合酸素の量に変化はありません。

酸素飽和度(SaO2)は酸素分圧(PaO2)に規定される

一方、SaO2つまりO2とヘモグロビンの結合率は、酸素分圧PaO2によって変化します。PaO2が上昇すれば、それに見合っただけSaO2も上昇しますが、その変化の割合は一定ではないので、グラフ(酸素解離曲線)にすると線が真っすぐにならないことが知られています。

次ページは「『酸素解離曲線』を理解しよう」について解説します。

「酸素解離曲線」を理解しよう

PaO2値がわかればSaO2値は予測できる

O2の多くはヘモグロビンと結合することで運搬されます。そして、その結合率は酸素分圧PaO2によって変化します。

まずはPaO2とSaO2がお互いにどのような関係にあるのかを理解することが大切です。PaO2とSaO2の標準的な関係を示したのが酸素解離曲線です。

酸素解離曲線


図 酸素解離曲線

横軸:PaO2、縦軸:SaO2です。このグラフの特徴は、形状がS字状になっていることです。

次ページは「動脈血と静脈血の正常値」について解説します。

動脈血と静脈血の正常値を理解しよう

この酸素解離曲線をみるときは、動脈血と静脈血の正常値を理解することがポイントです。

■動脈血の正常値

動脈血のPaO2の正常値は、80 ~100Torrとされています。このときのSaO2の値は95~97%(SaO2の正常値)です。

一般的に、血液ガス分析の測定は侵襲性の高い検査であるため、パルスオキシメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2を用いています。ですから、SpO2が95%以上であれば、PaO2もまた80 ~ 100Torrの正常値にあると考えます。

SpO2が95%を下回るようであれば、正常値より低下していると推察します。

■静脈血の正常値

一方、静脈血の場合、正常値は、PaO2が40Torr、SaO2が75%とされています。

正常な状態であれば、ヒトは心臓から末梢まで血液を循環させて、血液中の25%のO2を体内の組織へ放出していると考えられます。

SaO2の変化率は一定ではない

SaO2の最高値は100%で、それ以降は酸素量が増加しても値は一定です。

酸素解離曲線は、SaO2 PaO2が60Torr、SaO2が90%より高い状態では、ゆるやかなカーブを描きます。この値を下回ると、急角度でカーブは下降します。

つまり、PaO2の値が少し低下しただけで、SaO2の値は大きく下がります。PaO2が70Torrから60Torrへ下がると、SaO2は93%から90%へと3%低下します。

よく、医師が「サチュレーションを92%以上に保つように」と指示を出すのは、一気にSaO2が低下してしまうためなのです。

酸素化の評価のしかた

酸素化の評価を行う場合、最終的には、主な指標であるPaO2とSaO2の両者をみて評価しますが、血液ガスデータをみるときには、まずはPaO2の値をみます。

これは、SaO2はPaO2で規定され、PaO2に変化があれば、基本的にSaO2に影響が出ると考えられるからです。そのため、酸素化を評価するには、PaO2の値の目標をどこにおくかが重要になります。

ポイントとしては、PaO2の正常値に加え、患者さんの

1. 年齢
 2. 基礎疾患
 3. 現時点での病態

3つの要素を合わせてアセスメントする必要があります。

PaO2の評価


図 PaO2の評価

次ページに続きます。

POINT1 年齢をみる

PaO2は年齢によってその正常値が異なります。年齢ごとの正常値は、一定の計算式で求められます。

年齢に応じたPaO2の正常値の求め方


図 年齢に応じたPaO2の正常値の求め方

通常、酸素化の目標値は、PaO2を80Torr以上に設定することが多いと思います。しかしこの計算式からすると、70歳では79Torrとなり、80Torrを下回ります。

つまり、10歳代や20歳代の場合には、100Torrを目指しても構いませんが、70歳以上の患者さんの場合は、あまり高い数値を求めなくてもよいということになります。95歳くらいの患者さんになると、計算式で求められる数値より、もっと低くても大丈夫というケースもあります。

年齢別のPaO2の正常値


図 年齢別のPaO2の正常値

POINT2 基礎疾患をみる

心筋梗塞や不整脈、喘息の発作、貧血など場合は、酸素化の目標数値を高めに設定することが必要になります。これらの疾患の場合、サチュレーション(SaO2、SpO2100%を目標数値とします。

しかし、COPDなどの病態では、もともと安定時のPaO2の値が低いことが多いため、目指す数値は90%以上など低めになります。

POINT3 現時点での病態をみる

目の前の患者さんのバイタルサインに変化があるとき、何l/分の酸素投与をすれば、どのくらいのサチュレーション、脈になるのかを考えます。例えば、どんどんサチュレーションが下がっているとき、COPDだからと酸素投与を控えていたら、呼吸困難は悪化するばかりです。サチュレーション90%をキープするために、どのくらいの酸素投与が必要なのかを評価していきます。

このように、酸素化を評価するときは、患者さんの年齢や疾患、病態を踏まえた上で、現在の酸素吸入の方法をアセスメントする必要があります。治療で目標とする数値も、基準値はあくまでも目安であると考え、患者さん個々の状態に応じて設定していくことが大切です。

PaO2の異常をみる

PaO2が低い場合、低酸素症状に注意

PaO2が低くなると、それに伴いSaO2も低下します。低酸素が疑われる場合、血液ガスを測定していればPaO2を、血液ガスデータがなければSpO2をみます。

一般的に病棟では「低酸素かな」と思ってもすぐに血液ガスを検査することはほとんどありません。多くの場合、パルスオキシメーターによってSpO2を測定することになります。そのため、以下はSpO2として解説します。

■1 患者さんの様子を観察する

SpO2の正常値は95~97%ですが、それが93%以下になると、顔色が悪い、調子が悪いなど患者さんの様子から、見た目でもその低下を推察することができます。

低酸素が疑われる数値が示されたら、まずは呼吸回数、脈拍数などのバイタルサイン、顔色や疼痛の有無などの一般状態を観察して、患者さんに低酸素状態の徴候があるかどうかを確認します。SpO2値以外に明らかに低酸素状態を示すサインがあれば、低酸素状態にあるとして対応します。

低酸素状態になるのは、

1. 酸素を取り込むための呼吸
 2. 酸素を運ぶ役割の血液
 3. 血液を循環させるポンプの役割をもつ心臓

このどれかに異常があると考えられます。従って、低酸素の徴候はこの3つに現れます。

主な症状は、

1. 頻呼吸
 2. 呼吸困難
 3. 脈拍・血圧上昇
 4. 不整脈
 5. 意識障害
 6. チアノーゼ

など。

また呼吸は、

1. 呼吸回数が増加していないか
 2. 胸郭の動きは正常か
 3. 呼吸音に異常はないか

をアセスメントします。

低酸素状態の場合には、緊急を要することもあるので、すぐに医師やほかのスタッフを呼び、酸素療法や血液ガス分析を行うなどの先の処置に備えます。

■2 データの信頼性を確認する

SpO2値が低くても、患者さんの顔色が良く、脈拍も速くなく、呼吸もゆっくりで、低酸素状態とは考えられにくいこともあります。その場合は、出ているデータの信頼性に問題がないかを疑い、低く出ているSpO2値が正しいかどうかの評価をします。

■パルスオキシメーターは正しく作動していますか?

パルスオキシメーターは、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの赤色光と赤外光の吸光度の違いを利用して、酸素飽和度を測定します。従って、センサーを装着している部位の脈が感知できないと、その値の信頼性は低くなってしまいます。

特に、指先に装着する場合は、末梢血管の収縮、爪の変形・肥厚などがあると、正確なデータを得ることができず、誤差を生じることになります。

脈拍を感知しているかどうかの表示は、使用している器具の種類によって異なります。簡易タイプでは、脈拍が同期しているか、脈拍同期を示すマークの点滅が弱くないかをみます。波形が表示されるタイプでは、高低差のある波形がみられるかを確認します。

■患者さんが体を動かしていませんか?

そのほか、SpO2に誤差が生じる要因として、患者さんの体動があります。脈波をきちんと感知していても、患者さんが動き回っていたり、指先を動かしていたりすると、数値が正しく出ないことがあります。

じっとしていられない人、けいれんや震えのある人、イライラしている人などは正確な値を得にくいので、必要があるときには、血液ガス分析を行います。

■患者さんに貧血はありませんか?

また、ヘモグロビンの飽和度に依存しているパルスオキシメーターでは、患者さんのもともとのヘモグロビンがどのような値であるのかを知っておく必要があります。

貧血の患者さんは、O2を運搬するヘモグロビンの量が少ないため、あまり正確な値が得られません。なかでも貧血が進んだ患者さんでは、常に高めのSpO2値を示します。しかし実際は、ヘモグロビンの量が少ないため患者さんは常に息苦しく、呼吸回数が多く、脈拍も速いといった低酸素状態を示すことがあります。

この場合、酸素療法を行っても血液中に含まれるO2の値は改善しないため、自覚症状は変わらないことが多いでしょう。根本的な治療は貧血を正すことです。そこで患者さんのヘモグロビン値を把握しておくことが大切です。

SpO2以外に低酸素状態を示すサインがみられない場合は、患者さんの状況にもよりますが、慌てずにしばらく時間を置いてから再測定します。再測定の場合には、血流があり脈波を拾えそうな部位を探してパルスオキシメーターを装着し、正確な数値を得ることができるようにします。

低酸素状態の患者さんの状態はこうなっている

■1 肺胞低換気状態

何らかの原因で、吸ったり吐いたりする力が弱くなり、1分間に肺を出入りする空気の量が相対的に少なくなっている状態です。

この状態を呈すると体内に取り入れることのできるO2の量が少ないために、SpO2が低下します。この場合、多くの患者さんはCO2の排泄も同時に障害され、PaCO2が高値になっています。

■2 換気血流比の不均衡(V/Qミスマッチ)

肺胞毛細血管の血流量が多い部分の肺胞換気が不良になっています。

気管支れん縮(喘息発作)や肺炎、肺水腫、COPD、気管支拡張症などが原因です。一部の肺胞が十分換気されない状態になり、そこを流れる静脈血が十分酸素化されないために、全体として動脈血の酸素分圧が低下します。換気の悪い肺胞が肺の中のあちこちに点在しているイメージです。

■3 シャントがある

静脈血が酸素化されないまま動脈血と混ざり合う現象をシャントといいます。

解剖学的原因(先天性のファロー四徴症など)と、病的原因(痰による気管の閉塞や、大葉性肺炎などで肺の一部の換気が全くされないため、その部分を通る肺毛細血管を流れる静脈血が酸素化されずにそのまま左心房に流れ込む状態)があります。肺動脈と肺静脈の間の一部が、ガス交換できないままつながってしまうことで起こります。

■4 ガス交換障害がある

肺胞と毛細血管の間には、肺胞毛細血管膜という膜があり、O2とCO2はその膜を通してガス交換されています。この膜が何らかの原因で厚みが増すと、ガス交換に時間がかかるようになり、結果的に低酸素血症になります。

原因は、肺水腫で分泌物が溜まる、間質性肺炎で肺胞毛細血管膜(間質ともいう)に炎症が起こって厚くなる、ARDSやALIなど急性の炎症で肺胞毛細血管膜が厚くなる、などが考えられます。

【シャントには2種類ある】

1. 解剖学的シャント

シャントは健康な人にも存在します。それが解剖学的シャントです。解剖学的シャントは、心拍出量の3%程度あり、SaO2の正常値が100%ではなく97%であるのはそのためです。3%のうち、心臓を栄養する冠動脈に1%、気管支や気管を栄養する気管支動脈に1%とされ、そのほかに血中に含まれる異常なヘモグロビンによる1%がおおよその量とされています。

2. 病的シャント

気管支に何かが詰まったり、肺胞がつぶれたりして、酸素を受け取れない血液が混ざることを病的シャントといいます。動脈に流れるシャントの比率をシャント率といいますが、このシャント率が50%になるとPaO2は改善しないといわれています。こういった状態になると、非常に強い低酸素症状を起こす可能性があることを念頭に置いておきましょう。

PaO2値が高い!

一般的に、PaO2値が高くても、特に問題とはなりません。SaO2の最高値は100%で、そこからどんなに酸素を投与しても変化しないためです。

ただし、

1. 慢性呼吸不全の患者さん
 2. PaCO2やHCO3が異常に高い人

は、高いPaO2は大きな問題となるので、みていくことが必要です。

通常、呼吸中枢は、PaCO2の上昇に伴い呼吸回数を増やして換気を促し、バランスを保ちます。しかし、PaCO2が常に高い場合は、PaCO2値での呼吸コントロールができないため、PaO2値で呼吸をコントロールしています。

つまり、PaO2が低い ── 酸素が少ないから呼吸をする、という状態になっています。従って、PaO2値が高くなると呼吸刺激が減少してしまい、最悪の場合には呼吸停止となってしまうのです。

1. 慢性呼吸不全であるかどうか
 2. その人の通常のPaCO2やH3の値はどのくらいか

を確認する必要があります。

次ページは「PaO2が高い患者さんの状態」について解説します。

PaO2が高い患者さんの状態とは?

酸素吸入をしている患者さんのPaO2が高いということは、患者さんは良好な状態にあるということです。むしろ必要以上の酸素を吸っている状態といえます。

ただし、中にはそれでも息苦しさを訴える患者さんもいます。その主な原因として考えられるのは、貧血と精神的理由です。

また、何らかの理由で思うように息が吸えないと(例えば、和服を着て帯を締めているなど)、いくらSaO2やPaO2の値が良くても息苦しさを感じることがあります。

(『ナース専科マガジン』2012年10月号より転載)

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