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第30回 たんぱく質と塩分制限をされている患者さんのサムネイル画像
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高梨あさきのプロフィール画像

高梨あさき

順天堂大学医療看護学部/大学院医療看護学研究科 講師

執筆者の記事一覧

[macoさん から提供された事例]
2型糖尿病で肝硬変(腹水あり)が既往にある患者さん。さらに糖尿病性腎症3期があり、医師からの指示ではたんぱく質1.0g/kg・塩分7gと制限されていました。理解力はあったため、良質たんぱく質の具体例・塩分制限・食後の安静などを指導しました。

→こんなとき、あなたならどうアセスメントする?


みんなの回答

まずは、事例を読んでどのようにアセスメントするかを聞きました。回答者数は75人。

Q1.事例のような患者さんの退院指導にあたる際に、まずは患者さんからどのような情報を得ることが必要だと考えますか。Q2.この患者さんにはどのようなリスクがあると考えられますか。Q3.この患者さんに指導する場合、あなたならどのようなアプローチをして、どのようなことを伝えますか。ニックネーム
普段、どの様な食事をしているか。好きな食べ物は何か。日常生活動作量など入院中は治療食で血糖値や腎機能をコントロールできるが、退院後は自分、もしくは家族が食事を作るため、糖尿病や腎症の悪化が考えられる食事制限でストレスにも繋がるため、精神面(性格)を入院中に観察する。理解力があり、食事制限に意欲的ならば、酢や出汁などで味気を感じるレシピ本を見せながら説明し、本人ができそう、かつ、好きな食事に近いレシピを一緒に考える。必ず管理栄養士による栄養指導を受けてもらう匿名さん
本人の嗜好、食習慣、病識があるか、家族構成、仕事内容腎不全糖尿病の合併症があり、その上肝硬変があるので、リスキーな状態qさん
普段の食生活も含めた生活リズムや、家族やキーパーソンがいるのか、どのくらいの病識があるかなど腹水が今以上に溜まることで、呼吸困難になったり生活に支障が出る可能性。また糖尿病性腎症3期ということで、すぐにはならないかもしれないが尿毒症になるリスクがある病識にもよりますが、今の病状と今後起こりうるリスクを説明した上で悪化させないための生活指導をする。家族も巻き込めるなら、家族にも説明するとがぴさん
普段の食生活食生活の乱れによる腹水貯留。塩分過多献立の立案をあらかじめしておく。間食をしないさくらさん
食事の摂取時間、量、内容、提供者(作る人とか外食ばかりとか)、嗜好、同居者や支援者の有無、どの程度今の状態が嫌か、治したい、症状を軽くしたいと思っているか腹水による呼吸困難、肝性脳症によるフラッピング、意識障害、腎症、透析どの程度治したいか、軽減させたいかの思いを把握する。全く治したいと思ってない人もいるため、その人の意思を尊重する。ただし、選択したものに後悔しないよう、メリットデメリットの情報提供は十分に行うきーなさん
年齢、性別、家族構成、仕事の有無、サポートの有無、食習慣、運動生活習慣腹水が悪化することによる倦怠感、呼吸困難。腎不全悪化による尿毒症症状腹水が増えたときの症状について覚えておいてもらい、症状があれば来院してもらう。また、尿量を注意してもらい、尿毒症の症状についても覚えておいてもらい、受診を促すもまさん
食事内容、辛いもの、味が濃いものなど塩分が多いものを日頃から摂取していないか、たんぱく質が多く含まれている肉類の摂取をしていないかなど普段の食生活の情報を得る必要があると思う肝硬変から肝臓がんに移行するリスクがあると思う指示された、塩分量を守るように、良質のたんぱく質の摂取をするように、食後の安静を保つようにと再度伝える美少女さん
入院前の生活、治療歴、食生活など。腹水がたまるほどの肝硬変なら以前に治療歴があるかもしれず、それでも食事の誘惑に負けて食事療法を実施できていなかった可能性もあるため肝がんや、糖尿病の合併症を起こすしリスクがあると考えられます患者さんの思いを受け止め、はじめは慣れない指導内容を実施することが難しいと考えられるが、少しずつ慣れていけることを伝えます。また、わからないことがあるときの相談先を紹介しますまなさん
入院前の食生活、今の病状に対しての気持ち、病識。今後の食事は誰が作るのか気分不良、嘔気、嘔吐、黄疸が出て羽ばたき振戦あり。尿量減少、食欲低下、体重増加、自力体位変換困難、身体の疼痛や苦痛食事についての指導を受けたうえ、きちんと栄養素を取り入れて摂取。暴飲暴食を避けるような生活指導ゆうこさん
家族構成、家族の協力の程度、公的介護や援助の必要性の有無、自宅での生活が本当に可能か、病識病状の進行、異常時に速やかに対処してもらえない、治療の継続が困難等が考えられる。理解ある家族や援助してもらえる人と暮らすなら異常時に対処できるが、独居やまわりの協力が得られないなら体調不良でも放置し、正しい食事や生活上の注意点が守られず、病状悪化が容易に起こる実現可能な内容の指導を行う。具体的にわかりやすく行う。家人に必要性を確実に理解してもらう。訪問看護や介護の利用。食事提供の業者の利用デラックスさん

山内先生の解説

どういうタイプの人なのかキャラクターをつかんで指導する

まずは、事例からみていきましょう。事例の患者さんは、2型糖尿病と肝硬変、さらに糖尿病性腎症を発症しているとあります。糖尿病性腎症3期であるとたんぱく制限食または、低たんぱく食を指導されますが、この患者さんも医師からたんぱく質と塩分を制限されています。患者さん自身に関しては、理解力はある、とだけ書かれています。

では、みなさんの回答を見ていきましょう。Q1では、患者さんを指導するにあたり、どのような情報を収集する必要があるかを考えてもらいました。ほとんどの人が、普段の食生活やキーパーソンは誰なのか、病識があるのかどうかを挙げています。これから指導をするのですから、こういった基本的な情報収集は必要でしょう。また、本人がどんなキャラクターなのかということもしっかりおさえておきたい部分ですね。

例えば「どんなふうに食事を摂っているのか」ということを聞いてみるだけでも、その人がどれくらい真面目なのかがつかめるのではないでしょうか。そうやって、患者さんの様子をみながら、傾向をつかむことも大切だと思います。
どんなリスクが想定できるかをQ2では聞きました。腹水や肝性昏睡、腎不全、神経障害などさまざまなリスクを挙げてくれています。糖尿病、糖尿病性腎症、肝硬変というキーワードから、これだけのことを想定できるのはさすがですね。たくさんのリスクがあることを患者さんに知ってもらい、こういった状態にならないように指導していかなければなりません。

リスクを挙げたところで、実際にどのようにアプローチするかを聞いているのがQ3です。病識を確認し、しっかりと説明する、リスクを伝えるなど、さまざまな方法を挙げてくれています。

多くても少なくてもダメということを念頭におく

このQ3の回答の傾向をみると、制限されているたんぱく質と塩分を多く摂りすぎないようにするために、制限を守らせるにはどうアプローチすればよいのかを考えているようです。これまでの経験で糖尿病の患者さんは、制限を守れない人が多いというイメージがあるのかもしれません。ですから、放っておくと制限をオーバーするものだという前提があり、ではどうしたらよいかを考える、という流れになっているのでしょう。

多すぎることも問題ですが、少なすぎることも問題ではないでしょうか。少ない場合は足せばよい、という気持ちからあまり問題に思っておらず、「多すぎないようにする」というほうに気持ちが向かっているように感じました。

次ページは事例の続きを見ていきます。

事例つづき

必要な指導をして在宅に戻りましたが、数カ月後には腹水の貯留で入院となってしまったうえに、肝硬変と腎症のバランスが難しく、本人はもともとたんぱく質の摂取量を少なめにしていたようで、極端にたんぱく質を減らしてしまったようでした。
 現在はたんぱく質制限もなく、塩分制限のみで入院にもならず安定しています。医師の指示があっても、患者さんがどのくらい摂取していて、そこからどの程度減らすのかを明確に指導すべきだったと反省しています。


事例を提供してくれたmacoさんはしっかり患者さんに伝えることができていたようです。その結果、患者さんはたんぱく質を制限することに成功しています。ところが、もともとたんぱく質の摂取量を抑えていたため、低アルブミン血症となり、より腹水が貯留することとなってしまいました。事例を読んでどう感じましたか。まさか制限しすぎてしまうとは、と驚いた人も多いのではないでしょうか。

みんなの回答

Q4 事例の続きを踏まえて、再度この患者さんに指導するとしたら、どんなところに気を付けて指導しますか。

・ 頑張ってきたことを尊重する。そこから、もっとも大切である食事療法を再度説明。体重測定を促す。(翡翠さん)
・ 極端にたんぱく質を減らしたとのことなので、良質のたんぱく質を摂ること自体が難しいと考える。良質でなくても、手に入りやすいたんぱく質の具体例を知らせる。また、アルコールの摂取はないか聞く。(匿名さん)
・ たぶん急変したりするのが怖いのだと思います。でも、身体にはたんぱく質は絶対必要なので、最小限の量は摂る必要があります。良質のたんぱく質を最低限、摂るように指導。(qさん)
・ 家でどの程度のたんぱく質を摂っていたか、具体的に情報を得る。その上であとどれだけたんぱく質を摂るべきかを話す。(ななさん)
・ 摂りすぎも少なすぎもよくない。指示された量が治療となることを説明。お金に困っていないならば、治療食の配食サービスの紹介も含めて栄養士と指導に入る。(毛玉ネコさん)

山内先生の解説

あるべき姿と患者さんの思いをつなぐ役割を

みなさんには事例のつづきを読んでもらい、再度どんなところに気を付けて指導するかを聞きました。全体的にQ3の回答よりもより具体的に、慎重に指導するようになっています。そのせいか、Q3よりも栄養士に指導してもらうという回答も多くみられました。

また、回答にもありますが、入院してきた患者さんを責めるのではなく、たんぱく質を制限できていたことをまずはねぎらうことも必要です。その上で、今回のようにただ減らせばよいのではなく、ちょうどよい加減への調整が求められるということを伝える必要があるでしょう。こういった指導をするためにもやはり患者さん本人のキャラクターを把握しておきたいところです。

また、慢性疾患の場合は、その人が療養生活に対してどのように考えているのかを聞き出すことも大切です。急性期の疾患と違い、一時的に我慢して治療を行うというものではありません。こうあるべきだというのを押しつけてしまうと患者さんが疲れてしまいます。看護師さんは真面目な人が多いため、ついそういった話の仕方になってしまいがちです。そういったアプローチの仕方ではなく、看護師は治療を行ううえでのあるべき姿と患者さんの思いとの接点を探して、調整していく役割を担えるとよいですね。

今回の事例では、多くても少なくてもダメ。「ちょうどいい加減」というバランスをとることが大切だということを覚えておいてほしいと思います。


次回の事例
[ももさん から提供された事例]
持続モニターを装着している患者さん。酸素飽和度がときどき低下することがありました。正常値を保っていたと思ったら不意に下がり、しばらくすると持ち直すということを繰り返していました。様子をみていたら低下したまま上がらなくなって、あわてて報告した。
→あなたならどの段階で医師に報告した?

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