聖マリアンナ医科大学病院
監修者の記事一覧褥瘡の予防のポイントをご紹介します
第一回は褥瘡の大きな要因である『ずれ』に着目して予防ケアのポイントを交えながらお話しさせていただきます。 褥瘡は骨の突出した部分などに圧迫、ずれ、摩擦などの外力が加わって発生します。 垂直に組織に圧迫がかかった場合であれば、骨の突出した部位を中心に発赤が生じます。 しかし、発赤を発見した時に骨の真上ではなく、少しずれた位置に発赤が生じていることはないでしょうか? また、褥瘡がある患者さんの褥瘡を観察し、一定方向にだけポケットができていることはないでしょうか? 褥瘡を良く観察するといろいろなサインが見えてきます。 サインを見逃さず、悪化させないケアを一緒に考えていきましょう。
ずれが生じやすいポイント
ずれが生じやすい場面と言えば、ヘッドアップ(ベッドの頭側挙上)があります。 ヘッドアップをすると、身体は自身の重みで臀部方向に下がろうとします。 逆にベッドは頭側へと上がろうとするため、ベッドに接した背部の皮膚との間には摩擦及びずれが生じます。 体内では骨に付着した組織が引き伸ばされるとともに、毛細血管も引き伸ばされたり、ねじれたり、引きちぎられたりといった状況が起こります。 このため血行が阻害されて深部組織が損傷し、褥瘡が発生したり悪化したりしやすいのです。

このままずれたままにしておくと、『残留ずれ力』となって、身体に悪影響を生じます。 仙骨部・尾骨部、背部などにある褥瘡に縦方向にポケットが発生している場合、『残留ずれ力』が原因となっていることが考えられます。 斜め方向にポケットが生じていたり、組織損傷がある場合は、ヘッドアップ後の座位姿勢の崩れが考えられます。 ずれに対して、ちょっとしたケアを加えることで、褥瘡の予防や悪化させないケアをしていくことができます。 ※ 30°以上の頭側挙上はずれを引き起こしやすいので、通常は30°以下で対応することが推奨されています。

ずれの起きにくいヘッドアップ(頭側挙上)方法
Point! 御使用中のエアマットレスに『背上げ』ボタンがある場合はあらかじめ押しておきましょう。

- ベッドの屈曲部分と患者さんの大転子部を合わせる
- はじめに下肢側の挙上をする (体型によってはベッドの脚の屈曲部が体に合わないため、膝窩や大腿部の下に隙間ができる場合は小さめのクッションなどを入れるとヘッドアップした時にずれにくい)
- 下肢側と頭側を交互に少しずつ挙上する(頭側の挙上時は踵を見ながら実施するとわかりやすい。踵がずれ始めたら下肢側挙上⇒頭側挙上を繰り返す)
- 希望位置までヘッドアップができたら、下肢側の挙上を少し下げる(腹圧の解除)
- 「背抜き」を行うとともに、背部の寝衣のしわを伸ばす(密着していた背部の皮膚とベッドを離し、皮膚にかかっていた残留ずれ力を解除する)

One Point! 『脚抜き』
体幹にずれが生じると共に、下肢や踵部にもずれは生じています。 特に、浮腫がある方は皮膚が非常に脆弱になっていますので、下肢のずれの解除も重要なケアとなります。 具体的には、「背抜き」後に片足ずつ下肢を持ち上げるようにしてベッドと下腿の皮膚を離すようにします。 膝関節を屈曲するようにして、大腿の後面まで浮かすようにすると楽に効果的なケアができます。 ※『腰抜き』 リハビリスタッフの間では、ヘッドアップの際に後傾してしまった骨盤を戻すために『腰抜き』も推奨されています。 腰を持ち上げるようにして、骨盤を立てるようにします。 持ち上げるのが困難であれば、骨盤を左右に向けるだけでも臀部のずれが解消され、効果があるといわれています。
ヘッドダウン時のケア
ヘッドアップと同様に、ベッドを水平位に戻した時にもずれが生じています。 簡単なケアを加えることで、安楽が保て、皮膚への負担を軽減できます。 1. 患者の様子を見ながら頭側と下肢側を交互に下げベッドを水平に戻す。 (一気に水平位まで戻すと、体よりも頭が下がったような感覚が生じる) 2. 患者の体を左右に側臥位にしながら背部の皮膚に生じたずれを解除するとともに寝衣のしわを直す。 (大きく側臥位が取れない患者の場合は、仰臥位になっている患者の体の下に手を入れてベッドマットを押すようにして、皮膚とベッドを離すようにする)

ずれが生じにくい寝具
エアマットレス
エアマットレスイメージエアマットレスを使用している場合は、エアマットの特徴でもある圧切り替え構造(エアセルに空気が抜けたり入ったりする事)などによってずれが助長されることがあります。ヘッドアップ時のずれを抑えるためには、身体とベッドの接触面を増やすことが重要で、背上げ機能があり、底付きしない構造の二層式エアセルマットレスの選択を考えます。 また、従来よりも細かいエアセルで身体に追従して、ずれを防ぐことができる構造のエアマット『NEXUS』があります。

身体に隙間の無いようにエアセルが配備され、エアセルが身体に追従することでずれが生じにくく、座位姿勢も安定してとることができる特徴があります。 また『背上げボタン』を押すことでエアセルの圧切り替えを静止させるとともにヘッドアップに適した圧力に設定します。 しっかり身体を保持しながら底付きを防止するとともに適切な体圧分散効果を得ることができます。

ベッド
電動のベッドでは、ずれが生じにくいようにヘッドアップ時に身体に合わせて床板が伸び、腰部が緩やかに曲がる製品があります。 ボタン一つでヘッドアップと同時に下肢側が挙上され、一定の角度まで上がると、下肢側の床板が下がり、過度な腹部への圧迫がかかるのを防ぐことができます。 ※体型によってベッドの屈曲部位と合致しない事もありますので、確認しながら選択・使用してください。 今月はずれに着目した予防的看護ケアについてお話しさせて頂きました。
\ この記事をシェアする /











