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長谷川 睦

日本赤十字社医療センター 救命救急センター外来/災害看護 専門看護師

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トリアージとは

トリアージとは、フランス語のtrierが由来とされ、「選別する」という意味をもちます。災害医療の最大の目標は、Preventable death(防ぎえた死)を低減させることです。多数の傷病者が発生し、医療の需要と供給のバランスが大きく崩れた状況では、傷病者の緊急度や重症度を素早く見極め、優先順位をつけていくことが必要となります。そこで、トリアージを実施し、傷病者の治療や搬送順位の決定を行うことで、できるだけ多くの傷病者を治療し、防ぎえた死の低減につなげます。

トリアージを行う際は、基本的にトリアージオフィサーと呼ばれる指揮者を1人立てます。日本救急医学会はトリアージオフィサーについて、「現場において最も経験のあるものがトリアージオフィサーになる」としており、必ずしも医師がなるとは限らず、災害や救急医療の経験がある看護師が行うこともあります。

START法は何を判断するもの?

START法は、Simple Triage and Rapid Treatmentの略称です。名前のとおり、単純かつ迅速に選定を行う方法で一次トリアージとも呼ばれ、傷病者の緊急度を判定し、ふるい分けを行うために用います。緊急度は赤:最優先治療群、黄:待機的治療群、緑:保留群、黒:治療困難群に選別します(表)。

START法は特別な道具を必要とせず、誰しもが画一された方法で優先順位をつけることが可能です。そのため、災害時に限らず、事故などで多数の傷病者が発生した現場(例:混雑した交差点に車が突っ込み、多数の傷病者が発生するなど)において、消防(救急)隊が優先順位をつけるために、START法によるトリアージを行うこともあります。

また、原則としてトリアージを優先させるため、基本的には処置などは行いません。ただし、「用手的気道確保」と「活動性の出血による止血処置」の2つの緊急処置については行ってもよいとされています。

表 トリアージの区分

トリアージの区分、赤、黄、緑、黒の意味と優先順位

START法はこう使う!

START法によるトリアージの手順

START式トリアージは、フローチャート(図1)に沿って進行していきます。A:気道、B:呼吸、C:循環、D:意識が正常から逸脱していないか判断し、逸脱している場合は緊急度が高くなります。具体的には、次のような方法で緊急度を判定していきます。

STEP1

まずは、歩行可能か否か判断するために、歩ける人を誘導します。歩ける人は緑とし、緑エリアで待機してもらいます。

STEP2

動けなかった傷病者に声をかけていき、反応の少ない傷病者から優先して自発呼吸の有無を確認します。用手的に気道を確保しても、自発呼吸が認められない場合は黒となります。気道確保により自発呼吸が認められれば、その時点で赤となります。基本的に、トリアージ実施者はトリアージを優先的に行う必要があるため、別の医療従事者が気道確保を行いながら赤エリアまで搬送します。

STEP3

呼吸を評価します。1分間の呼吸回数が9回以下もしくは30回以上であれば赤と判断し、赤エリアに搬送します。

STEP4

脈拍を測定します。橈骨動脈の触知ができなければ赤とし、赤エリアへ搬送します。触知可能であれば黄色と判断し、黄色エリアへ搬送します。

STEP5

最後に意識の確認を行います。呼びかけを行い、手を握ってもらうなど簡単な指示を行い、指示が通れば黄色とし、黄色エリアへ搬送します。指示が通らない場合は赤となり、赤エリアへ搬送します。

図1 START法フローチャート

START法フローチャート

トリアージタッグの使い方

傷病者の基本情報(氏名・年齢・性別・住所・電話番号)、傷病名や主な症状、トリアージ実施者、トリアージを実施した場所、収容医療機関名、バイタルサインズ、受傷箇所や行った応急処置など、トリアージに関連する情報はトリアージタッグ(図2)に記入していきます。トリアージを行うたびに情報を記入していくことでカルテとして活用でき、現場だけでなく収容先まで傷病者の状態を把握できるようになります。トリアージタッグは3枚つづりとなっており、1枚目は災害現場用、2枚目は搬送機関用、3枚目となる本体は収容先機関で保管する必要があります。

トリアージ区分については、該当する区分までもぎります(トリアージ区分が赤の場合は、黄色と緑色の部分をもぎる)。時間の経過に伴い、傷病者の状態が変化することもありますが、状態が悪化した場合はその区分までもぎり、軽快した場合は最初に使用したトリアージタッグに大きくバツをつけ、新しいトリアージタッグを追加します(修正前のトリアージタッグは残しておく)。

なお、原則として、トリアージタッグは傷病者の右手首に装着しますが、右手首が離断している場合や外傷などがあり装着が難しい場合は、左手首→右足首→左足首→首の順番で装着できる箇所へ装着します。また、衣服の上に装着すると、脱衣の際に取れてしまう可能性があるため、素肌に装着します。

図2 トリアージタッグ

トリアージタッグ

練習問題

START法を用いたトリアージにチャレンジしてみましょう。

START法を看護に活かす!

START法によるトリアージはあくまでも簡易評価であり、緑エリアや黄色エリアに搬送された傷病者が必ずしも優先順位が低くなるとは限りません。トリアージ時点で優先順位の低かった傷病者も待機している間に状態が変化し、優先順位が高くなる可能性があります。そのため、傷病者の一番近い位置でケアを行っている可能性が高い看護師はその変化に気づき、再トリアージの実施やバイタルサインズの測定などを行い、傷病者の状態変化に合わせた緊急度の変更を判断していく必要があります。

近年、トリアージによる訴訟問題も発生しています。2011年の東日本大震災において、発災時に多くの傷病者を受け入れた病院で、トリアージで軽症の「緑」と判定された要介護度5の女性が3日後に脱水症で亡くなるという事案が発生しました。これに対し2018年、遺族が「トリアージによる判断に過誤があり、必要な対処を怠った」として、病院側に損害賠償を求める訴訟を起こしました。その後、和解が成立しましたが、現在の日本では災害時のトリアージについて医療者の免責規定などが整備されておらず、法制度化に関して課題が残っています。

一般に、トリアージの10~30%が誤判断とされていることに加え、START法では30秒程度で1人の傷病者を評価していかなくてはなりません。そのため、確実な方法の会得や実践可能になるための訓練を行っておくことが重要です。

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