人工呼吸器のアラームとは
人工呼吸器のアラームは、患者さんの状態変化や機器の異常を知らせる重要なサインです。一番初めにアラームに遭遇する機会が多い看護師には、そのアラームが「見逃してはならない変化」であるかどうかを見極める力が求められます。 アラーム発生時には迅速にアセスメントを行い、必要な対応を講じるとともに、患者さんの生命に直結する状態が疑われる場合は、速やかに医師へ報告しなければなりません。
ここでは、特に緊急性の高い「気管内上限アラーム」「気道内圧低下アラーム、低換気アラーム(分時換気量低下アラーム)」「無呼吸アラーム」の3つのアラームを中心に、それぞれの原因や対応のポイントを解説します。
気管内圧上限アラーム
痰の貯留や気管チューブの屈曲、激しい咳嗽、気道狭窄などが起こると、気道内圧の上昇に伴い「気道内圧上限アラーム」が生じます。この場合、呼吸音に左右差や副雑音がないか、気道分泌物が吸引で除去できるか、チューブの位置や固定がずれていないかなどを確認します。
痰の粘稠度が高くチューブ内で固まって除去が困難な場合や、何らかの要因でチューブが屈曲して内腔が閉塞しかけている場合は注意が必要です。これらは患者さんと人工呼吸器の間の空気の通り道が塞がっている「気道閉塞」の状態であることを意味し、チューブの抜去や入れ替え(再挿管)といった医師による処置が必要になるため、速やかに報告します。
気道内圧低下アラーム、低換気アラーム(分時換気量低下アラーム)
回路の外れやカフリーク、回路・チューブの破損が生じると、気道内圧の低下あるいは換気量の低下によって、「気道内圧低下アラーム、低換気アラーム(分時換気量低下アラーム)」が生じます。この場合は、呼吸音が聴取できるか、呼吸による胸郭運動が保たれているかなどを最優先に確認しつつ、どこから空気が漏れているかを特定します。
例えば、チューブのカフや回路そのものに破損が生じている場合は、設定どおりの圧を保てず、十分な換気量を確保できないため、患者さんは低換気状態に陥ります。チューブの不具合であれば入れ替えが必要になりますし、回路の破損であれば、回路が交換されるまでの間、バックバルブマスクやジャクソンリースを用いた用手換気で生命を維持しなければなりません。これらは看護師1人では完結できない対応であるため、直ちに医師へ報告し、応援を要請する必要があります。
無呼吸アラーム
CPAPやSIMVなどの人工呼吸器のモードでは、患者さんの自発呼吸の状態にアラームが影響を受けます。何らかの要因で無呼吸になったり、設定回数よりも自発呼吸が少なくなったりした際に「無呼吸アラーム」が生じます。
原因としては、鎮静薬の調整中や意識障害など、ある程度推測可能なケースもあります。しかし、脳卒中の急性期における病状悪化による自発呼吸の消失や、チューブの位置に異常が生じて人工呼吸器が適切に換気できなくなった際にも突発的に発生します。これらは、患者さんの状態悪化や生命維持に必要な換気が行われていない危険なサインです。
アラーム発生時は、人工呼吸器が一時的に強制換気を行うバックアップ換気に切り替わります。直ちにアセスメントを行い、バックアップ換気が作動しているか、自発呼吸の再開があるかを確認するとともに、速やかに医師へ報告し、設定変更などについて指示を仰ぐ必要があります。
アラームへの対応ポイントと医師に報告するタイミング
人工呼吸器のアラームに対応する際には、アラームの種類を確認することも必要ですが、まず患者さんをみることが大切です。自発呼吸の有無、呼吸パターン、胸郭運動の有無や左右差、SpO2の推移、意識レベル、発汗、チアノーゼなどを観察し、アラームの原因が人工呼吸器による機械的要因なのか、あるいは患者さん側の要因で生命に危機的状況が生じているのかを迅速に見極めます。
例えば、頻回にアラームが鳴っていても、患者さんが穏やかに呼吸していてSpO2が安定していれば、体動や咳反射、一時的なリークなどが原因であると考えられます。この場合は、吸引や体位の調整といった実施できる介入を行いながら、経過を観察することも許容されるでしょう。
しかし、適切なケア行ってもアラームが頻発する場合は、患者さんの呼吸パターンと人工呼吸器設定のミスマッチ(ファイティング)が要因となっている可能性もあり、医師に報告すべきタイミングといえます。グラフィックモニタで経時的な呼吸波形やトレンドの変化を確認したうえで速やかに医師に報告し、対応について相談する必要があります。
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