医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。しかし、看護の現場では、複数の患者への治療や処置が決められた時間に適切に実施されなければならないことが日常的です。また、心身が辛い中で療養している患者は、忙しそうに働いている看護師に対して、自分から治療や生活上の悩みや困難を訴えるのも勇気のいることでしょう。
そこで、患者の病いの語りをデータベースとして提供しているDIPEx-Japanのウェブサイトから、普段はなかなか耳にすることができない患者の気持ち・思い・考えを紹介しながら、よりよい看護のあり方について、読者の皆さんとともに考えてみたいと思います。
認知症や重度身体障害を抱えた家族を介護することは、身体的に大変な負担を引き受けるだけでなく、精神的にも絶えず緊張を迫られ、逃げ場のない重圧で押しつぶされそうになるものです。周囲の人間は、そんな相手にいつ、どんな言葉をかけ、どんな態度を示すのが良いか分からずに悩みます。
孤立を支える言葉
I.C.さん(仮名:インタビュー時34歳)は、大手電機メーカー技術者の厳格な父親と陽気な母親の間の一人っ子として生まれました。19歳で専門学校を卒業し就職先も決まった矢先に父親が脳卒中で倒れ、障害者1級認定の重い後遺症が残りました。
娘があり持ち家もあるという理由から生活保護も適用されず、I.C.さんは希望の就職先も諦めざるを得ませんでした。昼は不動産屋、夜はガソリンスタンド、明け方には集配と働き詰めで、その合間に父親の入浴や食事の介護を行う毎日が続きます。
さらに父親はアルツハイマー病も合併していることがわかり、まもなく母親も倒れてしまいます。友人とも疎遠になり、うつ状態に陥って、両親を道連れに心中しようとガス栓を捻ったところ、飼い犬の吠え声で我に返り、思いとどまったこともありました。
家族も自分も皆ネガティブなスパイラルに入ってしまったときに、ある友人がかけてくれた言葉がI.C.さんを支えてくれます。
19歳のときから脳卒中で倒れた父を介護してきたI.C.さん(インタビュー時34歳)
介護者が、与えられた状況を受け止め、困難に耐える孤独な生活から抜け出して、介護を中心にした日々の営みに、より積極的な意味や価値を見出すためには、その人の存在を常に心にとどめて、見守っている周囲からの支えが必要なのです。
この本にこんなことが書いてあったとか、講演会や家族会でこういう話があったなどの具体的情報だけでなく、家族が最近脳梗塞で倒れたという人に「自宅できるリハビリについてアドバイスしてあげて」と、自分の経験や知識が役立つ場面を用意してくれる配慮がありがたかったと、I.C.さんは話しています。
また、医師・看護師・ケアマネージャーなど医療福祉専門家から得る情報でも、仕事上の付き合いにとどまらず本当に感情のこもった接し方をする人から得る情報には、質・量の違いを感じたと語っています。
「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(通称:DIPEx-Japan)
英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。
\ この記事をシェアする /


![[医療改革] 自治体病院が危機的状況、国へ緊急要望 全自病開協・全自病協](/_next/image/?url=https%3A%2F%2Fimages.microcms-assets.io%2Fassets%2Feb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f%2F147015bae3574ded81b01c90e7523ada%2F%25E5%258C%25BB%25E7%2599%2582%25E6%2594%25B9%25E9%259D%25A92-0831.png&w=3840&q=75)
![[医療改革] 中医協がOTC類似薬の議論に着手、診療側は医師の負担増を懸念](/_next/image/?url=https%3A%2F%2Fimages.microcms-assets.io%2Fassets%2Feb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f%2F3113ced9e28d4cda994e6ab1f7a8f226%2F%25E5%258C%25BB%25E7%2599%2582%25E6%2594%25B9%25E9%259D%25A90831.png&w=3840&q=75)
![[医療提供体制] アレルギー疾患対策推進、指針改正案を協議会が承認](/_next/image/?url=https%3A%2F%2Fimages.microcms-assets.io%2Fassets%2Feb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f%2F2a1fc8fb756c4596a1983b1a6df2c37e%2F%25E5%258C%25BB%25E7%2599%2582%25E6%258F%2590%25E4%25BE%259B%25E4%25BD%2593%25E5%2588%25B60831.png&w=3840&q=75)
![[介護報酬] 介護人材確保に向け賃金水準の底上げは喫緊の課題 意見相次ぐ](/_next/image/?url=https%3A%2F%2Fimages.microcms-assets.io%2Fassets%2Feb0d1a2254c045f4b87e572f39f0244f%2F0605755b1410462eaace4bc1f47b06bc%2F%25E4%25BB%258B%25E8%25AD%25B7%25E5%25A0%25B1%25E9%2585%25AC0831.png&w=3840&q=75)











