医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。
そこで、患者の病いの語りをデータベースとして提供しているDIPEx-Japanのウェブサイトから、普段はなかなか耳にすることができない患者の気持ち・思い・考えを紹介しながら、よりよい看護のあり方について、読者の皆さんとともに考えてみたいと思います。
認知症の人を介護することは大変です。次第に進む症状と向き合いながら、いつ終わるともしれない介護に、不安やいら立ちを募らせたり、介護うつになったりする家族もいます。認知症人口が増加する今、大変さばかりに焦点があてられる認知症の介護ですが、本当に辛く大変なことばかりなのでしょうか?
家族を介護するという相互作用の中で得られた大切なこと
次のお二人は、葛藤の中で自己を振り返り、自己成長ともいえるご自身の変化について語られています。
アルツハイマー型認知症の実母を自宅で介護する娘(インタビュー時:48歳)
若年性アルツハイマー型認知症の妻を介護する夫(インタビュー時60歳)
介護を継続するなかで語られた「母親が大好きだし自分が変らないと」という気づきや、「この病気には家族の愛が大切」という言葉に共感する人は多いことでしょう。介護する相手と真剣に向き合い、その相互作用によって自分自身に気づくこと。介護には、自分の問題を発見し、それを受け入れて自己変容していく力や、優しさを引き出してくれる側面があるのです。そして、このお二人のように介護の状況を兄弟姉妹や友人、家族会の方々に話すことによって、心が平常化したり、分からなかったことが分かるようになったりして、介護を通した自己成長を実感することができるようになっていくのだと考えられます。
認知症の人と家族介護者の双方を支える役割を担う看護師は、このお二人のケースのように、大切な人(家族)の介護を行なっているからこそ得られる、介護を通しての気付きや自己成長があることを理解しておきましょう。そのことを理解した上で、家族介護者の戸惑いや混乱、怒り等の過程に寄り添う看護師と、そうではない看護師では、家族介護者の心理面を支える力に大きな違いがでると思われます。葛藤の中に隠れてしまいがちな優しさや愛に意識を向けて、認知症の人と家族介護者を見つめ、支える力をつけていきましょう。
「健康と病いの語り ディペックス・ジャパン」(通称:DIPEx-Japan)
英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。
\ この記事をシェアする /














