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なぜ胸腔ドレーンを挿入するのか

胸腔ドレーンは気胸や胸水貯留、あるいは肺の手術後に使用される身近なデバイスですが、「水封部に入れるのはなぜ生理食塩水ではなく滅菌蒸留水なのか?」と疑問に思うこともあるかと思います。この疑問をひも解くには、そもそもなぜ胸腔ドレーンを挿入するのかを理解しておくことが大切です。

通常、肺の表面を覆う臓側胸膜と胸壁側を覆う壁側胸膜の間を(胸腔)は陰圧に保たれており、それによって肺は胸郭に引っ張られるように広がることができます。しかし、気胸で胸腔内に空気が入ったり、血胸や胸水で液体が貯留したりすると胸腔内の陰圧が失われ、肺が十分に広がれなくなります。そこで胸腔ドレーンを挿入し、胸腔内の空気や液体を体外へ逃がし、肺が広がれる環境を整えます。

水封の役割

胸腔ドレーンを挿入すると、胸腔内と体外が直接つながる(交通する)ことになります。そのままでは外気が入り込んで胸腔内の陰圧が失われ、肺が広がらないため、胸腔内と体外の交通を遮断する必要があります。その役割を果たすのが水封(ウォーターシール)です。

患者さんの胸腔内から出てきた空気は、水封部の水を押しのけて外へ抜けますが、吸気時に胸腔内圧が下がっても、外気は水封部の水に阻まれて胸腔内へ逆流しない構造になっています。つまり、水封部の水は「体内の空気や液体は外へ出すが、外気は中に入れない」という一方通行の弁として働いているということです。一般的な水封式胸腔ドレーンでは、この弁を正しく機能させるため、水封部に規定量の水を入れる必要があり、決められた水量のラインを維持することが求められます。

水封部に滅菌蒸留水を用いる理由

では、なぜ生理食塩水ではなく滅菌蒸留水が使われるのでしょうか。考えられる理由として、水封部の水は、ドレーンシステムの逆流防止弁として働く液体だからということが挙げられます。そのため、無菌性が保たれていること、目盛りどおりの水位で安定していること、呼吸性変動やエアリークを観察しやすいことが求められます。

生理食塩水にはナトリウムが含有されているため、長期間の使用や水分の蒸発によって塩分が結晶化(析出)し、ドレーンバック内に沈殿物が生じたり、目盛りの視認性や液体の透明度が落ちたりするリスクが考えられます。電解質や不純物が付着することで、呼吸性変動の動きに影響を与える可能性も否定できません。一方、滅菌蒸留水は電解質や不純物をほとんど含まないため、目盛りが見やすく、長時間の観察・管理に適しているといえます。

胸腔ドレーン挿入中の観察ポイント

臨床現場で大切になるのは液体の種類以上に、胸腔ドレーンの水封が正しく機能し続けているかを継続して観察することです。日々の看護では、以下のポイントを適宜確認しましょう。

  • 水封部の水位が規定に到達しているか
  • ドレーンバッグが患者さんの胸腔より低い位置に置かれているか
  • チューブが屈曲していないか
  • 接続の緩みがないか
  • 呼吸性変動がみられているか
  • 持続的なエアリークがみられていないか

胸腔ドレーンは患者さんの呼吸状態に直結するデバイスです。もし管理に迷ったときには、製品の添付文書や自施設のマニュアルを確認し、異常があれば医師へ報告します。

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