聖マリアンナ医科大学病院
監修者の記事一覧褥瘡の状態評価の重要性
褥瘡をケアする際に、創の状態はどのように評価されていますか?
褥瘡の治療にあたっては、創の状態を知り、どのように取り組んでいくのかを知ることが重要です。しかし、ケアにかかわるメンバーが共通の視点で創の状態を判定しないと、同じ褥瘡に関わっているにもかかわらず、バラバラのケア・治療方法を選択してしまうということが起こりかねません。
そこで、統一の評価ツールを用いて創の状態を客観的にアセスメントしてゆけば、その評価を見直し、チームで統一した治療およびケアに役立てることができます。わが国では2002年に日本褥瘡学会学術教育委員会によって開発された、DESIGNという褥瘡状態判定スケールが広く用いられてきています。
そして、2008年にDESIGNが改訂され、『DESIGN-R』というスケールが公表されました。
今回は、DESIGNの評価方法とDESIGN-Rへの変更点の解説します。
DESIGNの特徴
DESIGNスケールの特徴は、褥瘡の重症度を分類して治癒の過程を数字で示す(数量化)ことができます。
継続的にDESIGNを用いてアセスメントすることで、褥瘡が治癒傾向にあるのか、悪化しているのかを客観的に判断でき、その後の褥瘡治療・ケアに生かすことができます。
また「褥瘡経過評価用」と「重症度分類用」の2種類があり、「重症度分類用」では簡単に重症度がわかり、治療・ケアの指針を得ることができます。
※各表については、日本褥瘡学会のホームページからPDF文書で掲載されていますので、ご参照ください。


左表:褥瘡経過評価用 右表:重症度分類用
DESIGNの評価項目
DESIGNは、
1. 深さ(Depth)
2. 滲出液(Exudate)
3. サイズ(Size)
4. 炎症・感染(Inflammation / Infection)
5. 肉芽組織(Granulation tissue)
6. 壊死組織(Necrotic tissue)
の6項目のそれぞれ英語の頭文字をとって、DESIGNと表記されました。
また、褥瘡治療においてポケット(Pocket)の有無はとても大きな要因となりますので、ポケットがある場合『P』の項目を評価します。

重症度が高いほど点数が高くなり、治癒してくれば点数が減少する仕組みになっています。
創の評価をした際には、アルファベットと該当する点数の数字を並べて表記します。
DESIGNの評価の視点
1)Depth:深さ
創の中でいちばん深いところで判定します。真皮全層の損傷までをd、皮下組織を越えた損傷を[D](深い創)と判定されます。
[D](深い創)の治癒が進み、創底が浅くなってきた場合は、それに応じて評価も[D]→[d]と変化します。
皮下組織に達する創(深い創)では、創底から肉芽組織が盛り上がり、徐々に浅くなるとともに、創周囲から上皮の遊走が進んで創が閉鎖し、治癒していきます。
真皮より浅い創(浅い創)では、創底に残存する基底細胞から上皮が形成されるのと、創周囲からの上皮の遊走によって、皮膚が再生され治癒に至ります。

2)Exudate:滲出液
滲出液の量は、ドレッシング交換の回数で判定します。
ドレッシング材の種類は詳しく限定されていません。1日1回以下の交換の場合を[e]、2回以上の交換の場合を[E]とします。
3)Size:大きさ
褥瘡の皮膚損傷部位の長径(cm)と、それに直角に交わる一番長い径(cm)を測定し、それぞれを掛けた数値により分類します。
毎回、同一体位で測定することが重要です。体位が変わってしまいますと、皮膚のたるみなどで創の大きさが変わり、正確に評価できないことがあります。
4)Infection/Inflammation:炎症/感染
創および創周囲の感染兆候を評価します。
創周囲に発赤・腫脹・熱感・疼痛などの炎症兆候がある場合は[i]とし、炎症の4兆候に加え、排膿・悪臭・全身の発熱などがある場合は[I]と評価されます。
[I]感染については、「局所感染」と褥瘡部の感染が原因で全身の発熱を来しているなど「全身に影響を及ぼしているか」を見極めて分類します。
5)Granulation:肉芽組織
この項目では、良性肉芽が創面に占める割合で評価します。
良性肉芽が50%以上を占める創は[g]、50%未満の創には[G]と評価します。
肉芽であっても、血流が豊富な、赤く適度な湿潤のある良性肉芽でなくてはなりません。(「牛肉色の肉芽」と言い表わされている海外の文献もあります)
貧血や低栄養などで肉芽が白っぽく(「豚肉色の肉芽」)なっていたり、浮腫状態の肉芽などは良性肉芽には入りません。
また、[d]浅い褥瘡の場合は、創の治癒過程が肉芽を形成して治癒するのではなく、上皮の遊走によって治癒するので、この項目は[g0]の評価となります。
6)Necrotic tissue:壊死組織
壊死組織がない場合は[n]、壊死組織があれば[N]と分類されます。
[N]は壊死組織の色ではなく「柔らかい」か「固い」か評価をします。
“黒色壊死”でも、柔らかければ[N1]となりますし、黄色や白っぽくても固く乾燥していれば[N2]となります。
7)Pocket:ポケット
ポケットの測定方法は、ポケットの範囲を特定し、ポケットと創面全体を合わせて一番長い径と、それに直角に交わる一番長い径を測定し、かけ合わせます。
そして、その値から[S]で導き出した値を引き算し、値を算出します。
ポケットの大きさも体位によって異なりやすいので、必ず同一体位で測定します。

DESIGNの評価の視点
DESIGN評価によって、その褥瘡が良くなったか、悪くなったかの判定基準とはなりますが、別々の褥瘡を比較したときに、「どちらの褥瘡の重症度が高いか?」は判断できません。たとえば以下の褥瘡の褥瘡AとBを比較すると、明らかに“創A”の褥瘡のほうが重症度が高くとも、点数は同じという現象が起きます。

『DESIGN』→『DESIGN-R』への改訂
そこで、DESIGNスケールによって褥瘡の経過を評価をするだけでなく、重症度も判定できるスケールに改訂するように、日本褥瘡学会学術教育委員会では2005年に“DESIGN改訂ワーキンググループ”を立ち上げ、2008年に『DESIGN-R』へと改訂されることとなりました。

DESIGN-Rの表でピンクに色づけされている部分が、今回変わった箇所です。
1)[Depth:深さ]の項目
『[D5]:関節腔、体腔に至る損傷または、深さ判定が不能の場合』を分割した
DESIGNでは、創底部に壊死組織が覆っている等で「深さの判定が不能」の場合、「関節腔、体腔に至る損傷」と同じ点数と評価され、重症度が最も高い評価の[D5]となっていました。
しかし、DESIGN-Rでは、『[D5]:関節腔、体腔に至る損傷』と、『U (unstageable):深さ判定が不能の場合』と区別されました。
[Depth:深さ]の点数は合計点に加えない
[Depth:深さ]の点数は、その他の[滲出液][大きさ][炎症/感染][肉芽組織][壊死組織]と関連して変動するため、褥瘡の重症度は[深さ]を除いた6項目の合計点数で評価することとなりました。
DESIGNの評価の視点
2)点数に「重み」がついた
DESIGNでは各項目とも、0~5点など各項目ごとに順番に番号をふって点数化していました。DESIGN-Rでは、重症度は各項目の点数の合計で記されます。合計点数に重症度を反映するため、各項目の重症度への影響の度合いを考慮し、点数に「重み」づけをしました。
その結果、[滲出液]には6、[大きさ]は15、[炎症/感染]は9、[肉芽組織]6、[壊死組織]6、[ポケット]24の重みづけがされるようになりました。これに従い、先ほどの褥瘡AとBの評価をしてみると、図のようになりました。

37点の褥瘡は、17点の褥瘡と比較し、重症度が高いと判定できるようになりました。
これによって、褥瘡を複数保有する患者の褥瘡や、異なる患者、他施設の患者などの褥瘡の状態を客観的に比較することが可能になりました。
DESIGN-Rの表記方法
DESIGN-Rの表記は、[D]と[ESIGN]の間に「-(ハイフン)」を入れることで、2002年度版のDESIGNとの区別を図っています。したがって、先述した「症例1」の表記は、下図のようになります。

いかがでしたでしょうか?褥瘡学会では『褥瘡予防・管理ガイドライン』のなかで「褥瘡経過評価用がDESIGN-Rに移行しても2002年版DESIGNがなくなるわけではなく、2002年版とDESIGN-R(2008年改訂版)とは併存しうる」と明記しています。
ですので、ご自身の施設の状況に応じて、DESIGN-Rでの評価の導入を考えていけば良いようです。
今回は、DESIGNをケアにどう生かしていくかまでは至りませんでしたので、次回はそのご説明をしたいと思います。
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