苦手意識をもつ看護師が多い人工呼吸器のアラーム。しかしその対応を一歩間違えれば患者さんの生死に直結してしまいます。
ここでは、苦手意識の理由を探るとともに、アラーム対応時の基本的な姿勢と考え方について解説します。
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人工呼吸器のアラームの原因と対応
人口呼吸アラーム対応の基本
人工呼吸器のアラーム、3つの役割
アラームは誰のためにあるのでしょう。人工呼吸器は医療者が管理するものであり、アラームも医療者のための警笛であると考えられがちですが、その使用者は患者さんであり、患者さんの声の代わりと考えてよいでしょう。
人工呼吸器を装着した患者さんは、挿管されていたり鎮静の状態にあるため、訴えを伝えるコミュニケーション手段をもちません。そこでアラームが患者さんの“声にならない声”を代弁しているのです。あくまでも私たち医療者は、アラームという声を聞き、患者さんをサポートする立場に立っています。このように考えるとアラームは「3つの声」をもっています。
「息が十分に吸えなくて苦しい」「空気が多すぎてもう吸えない」など患者さんの呼吸状態を知らせる声が一つ、「回路のどこかが詰まっている」「どこかから空気が漏れている」など人工呼吸器本体の故障や回路の不備を知らせる声が一つ、そして「酸素が供給されていない」「電源が抜けている」など環境・設備の不具合などを知らせる声が一つです。
さらに、一つの人工呼吸器に備えられているアラームが何種類にものぼるのも、アラームには、緊急度によるレベルがあるためです。
このように、アラームには患者さんを危険から回避させて守る役割があり、看護師には患者さんのサポーターとしてアラームが発する声を受け止め、対処する能力が求められています。少しでも早くリスクを避け、危険を回避させるためには、看護師の「気づく力」が不可欠となります。
自分が人工呼吸器装着中の患者さんだったら……
アラームの原因は患者さんにありますから、患者さんを見ればわかることはたくさんあります。ところが機械ばかり見ていても原因に気づくことはできません。そこで余計にわからなさからくる不安が高まり、パニックになり慌ててしまうのです。
患者さんを見たときに、気づくトレーニングはOJT(On-the-JobTraining)で培います。このときのポイントは“自分が今この患者さんだったら” と常に考えることです。
呼吸数の増加を示すアラームが鳴っていれば、発熱や疼痛、不安、呼吸苦など、自分が頻呼吸に陥るときの状況を想像しながらバイタルサインや生体情報モニターを観察します。このように自分に置き換えて考えていく習慣をつけることで、対応への道筋をよりシンプルにすることができます。
原則原理を知って慌てずに対処しよう
人工呼吸器の機種の多さは、設定方法の違いや各部の名称における表記の不統一も生んでいます。例えばアラームの名称では、同じ内容のアラームにもかかわらず、「最高気道内圧アラーム」=「回路内圧上限アラーム」=「気道内圧上限アラーム」と、メーカーによって名称もまちまちです。
同じメーカーであっても年式によって名称が異なるものもあり、Bennett760の「ハイプレッシャーアラーム」とBennett7200の「回路内圧上限アラーム」が同じ内容であることなどがその例です。
このように設定や名称が統一されていないために、取扱説明書を読んでも理解しにくいところに、アラームは患者さんの命に直結しているという緊張感が重なり、いざ作動したときに「アラーム=怖い」という苦手意識が植え付けられてしまっていると考えられます。
だからこそ、人工呼吸器とアラームの原理原則を知ることが不可欠であり、しっかりと押さえておくことで慌てず対処しやすくなるのです。
人工呼吸器だけでなく生体情報モニターのアラームにも注意!
人工呼吸器のアラームが、万一、正常に作動しない、あるいは何らかの原因で人工呼吸器自体が停止した場合に備えて、独立した生体情報モニターを併用し、緊急時の早期発見に備える必要があります。
生体情報モニターには、心拍数・血圧などの基礎的なバイタルサインを観察するもののほかに、人工呼吸器装着時の患者さんの酸素化状態である動脈血中酸素飽和度(SpO2)を測るパルスオキシメーターや、呼気中の二酸化炭素を測定するカプノメーターがあります。
換気していない、あるいは患者さんから呼吸器が外れた場合には、炭酸ガスの排出が停止するため、カプノメーターはただちにアラームを発します。また、その状態が持続すると動脈血中酸素飽和度が低下するため、パルスオキシメーターもアラームを作動させます。人工呼吸器のアラームが作動していなくても、これら生体情報モニターがアラームを発している場合は、早急に対処しなければなりません。
そのとき大切なことは、患者さんの安全を確保することです。まずは用手換気に切り替え、患者さんの呼吸を確保した上でゆっくり原因を探します。
このように生体情報モニターは、低酸素状態や低換気状態を早期に発見し、正常な状態へと回復させるために重要なモニターなのです。
頻回にアラームが鳴る場合は履歴を確認しよう!
臨床現場でよく遭遇するのは、アラームが鳴って消音した後に、リセットしていないために繰り返し作動してしまうケースです。メーカーや機種にもよりますが、リセットしないかぎりアラームを消せなかったり、モニター上にアラーム履歴が残る機種があります。消音後にたびたび鳴る場合は、「リセットせよ」という機械の呼びかけですから、正しく作動させるためにも必ずリセットします。
また、本体の故障をいち早く知るためにも、モニター上の履歴を確認する習慣をつけましょう。人工呼吸器は原則としてトラブルが起こったりアラームが出ても、セーフティ機能が働いて動き続けるため、トラブルの発生そのものに医療者が気づかないことも少なくありません。モニターの近くを通る際には、必ず履歴の確認を習慣づけると本体の故障という高いリスクを回避できます。
なお、故障の履歴を目にしたときは、慌てずにとりあえず用手換気に切り替えるか、人工呼吸器そのものを取り替え、換気を確保してからゆっくり原因を探すようにします。
アラームが鳴ったら、人工呼吸器の作動チェックを!
人工呼吸器の機種によっては始業点検できるものもありますが、アラーム機能には作動チェックが必要です。作動チェックの方法は、例えば接続したテスト肺を圧迫して広がりにくい状態にするなど、回路内圧上限アラームが作動するような状況を人工的に作り出し、まずアラームが発生するかどうかを確認します。
次に、アラームが鳴ったら、人工呼吸器が安全な作動をするかどうかを確認します。アラーム作動時は、例えば高圧アラームが発生した場合、送気を停止し、設定された圧以上に気道内圧を高めないようにするなど、患者さんを危険から回避するように設定されています。
このようなセーフティ機構がきちんと作動するかどうかを確かめます。また、無呼吸アラームが鳴ると、多くの機種では安全機構としてバックアップ換気が開始されますが、このようなアラームに対するバックアップ作動も確認します。
なお、点検では確認できませんが、人工呼吸器には万一機器が何らかの故障で止まっても、窒息させないためにバルブを全開放する仕組みがあります。
*次ページは「病態とアラームの関係」について解説します。
病態とアラームの関係を知っておこう
アラームに対処するとき、病態によって作動しやすいアラームの種類を知っておくことも大切です。病態とアラームとの関係を把握しておくことで、より無駄なくストレートに患者さんの状態をアセスメントすることができるからです。
アラームに注目して患者さんの呼吸の異変をキャッチする
人工呼吸器の取り扱いは、本来ならば臨床工学技士や理学療法士など多職種がチームとして行うべきですが、苦手であってもそうでなくても、人工呼吸器の管理では看護師の役割によるところが非常に大きいのが現状です。
人間の呼吸はいつも一定ではありません。昨日と今日、一時間前と今、一つ前と今の呼吸はそれぞれ違います。たとえ人工呼吸器で流量や圧を規定していても、気道内の状態は呼吸ごとに変化しています。だからこそ患者さんの呼吸状態をよく観察し、アセスメントして、「呼吸のゆらぎ」に対応していくことが大切です。そして、この「ゆらぎ」を逸脱する危険を知らせるのがアラームです。
苦手意識の克服のためには、アラームはどこまでも患者さんを守るためのものであるという大原則を忘れずに、患者さんの一番身近にいる医療者として、その仕組みと病態との関係を理解することで、人工呼吸器を恐れずアラームを怖がらずに付き合いましょう。
■呼吸回数上限アラーム (頻呼吸アラーム)
発熱や痛みによる代謝亢進、不安によって息を詰めるなどの行為があると、溜まった二酸化炭素を排出しようとして頻呼吸が起こります。また頭蓋内圧の亢進では、脳への血流を増やそうと頻呼吸が現れ、このアラームが鳴りやすくなります。腹膜炎などによる敗血症性ショックでも、組織への酸素供給量を高めるため、頻呼吸となり、アラームが作動しやすくなります。
■呼吸回数下限アラーム
糖尿病性昏睡では、代謝性アシドーシスを呼吸で代償しようとして、クスマウル呼吸といわれる大きく深い過呼吸が出現し、呼吸回数が減って、このアラームを作動しやすくします。
■無呼吸アラーム
呼吸の停止を示すこのアラームが作動するのは、心停止、頭蓋内圧亢進などの生命に直結する緊急場面です。その他、頻呼吸(過換気)後にも無呼吸になることがあります。
■呼吸回数上限アラームと無呼吸アラーム、分時換気量下限アラーム
このアラームを混在させて鳴らすものでは、頻呼吸と無呼吸を繰り返すチェーンストークス呼吸が象徴的です。頭蓋内圧亢進、髄膜炎、腎不全、脳腫瘍の術後などに起こりやすい呼吸です。
■呼吸回数上限アラーム、分時換気量上限アラーム
糖尿病性ケトアシドーシスや大量出血などによって、深大なクスマウル呼吸が出現すると、これらのアラームが作動しやすくなります。
■気道内圧上限アラーム、低換気量アラーム
1回の換気量を規定した場合、気道の狭窄や閉塞によって気道内圧は上昇することから、喘息重積発作や気道浮腫、異物などによる気道狭窄で起こります。気道内圧上限アラームが発生すると、これ以上ガスを送ってはいけないと判断して換気を止めるため低換気になり、続いて低換気量アラームが鳴ります。また痙攣などで体の硬直が起きたときも気道内圧上限アラームの発生につながります。
■ウィーニングの過程で鳴りやすいアラーム
ウィーニングの際には、自発呼吸トライアル(SBT)で評価を行いますが、呼吸回数上限アラームを30回/分に設定し、これを超えた場合はウィーニングを中止します。人工呼吸器の使用中に休んでいた呼吸筋を、呼吸回数上限アラームが鳴るほど使って換気している状態は、ウィーニングの失敗であり、見直す必要があるためです。また、発熱時にはエネルギー消費量が高すぎるため、ウィーニングは避けたほうがよいでしょう。
*次ページは「各種アラームの原因と対応のキホン」について解説します。
各種アラームの原因と対応のキホン
メーカーや機種によって、表示も名称も異なるのが人工呼吸器のアラーム。たくさんの種類をすべて記憶するのは大変難しいことです。そこで今回からは、人工呼吸器にとって主要なアラームをピックアップし、原理原則と対応の基本をまとめました。
1.電源アラーム――電源が断たれたことを知らせてくれる
■どんなアラーム?
電源の供給に異常があること、つまり人工呼吸器が止まる危険性があることを知らせます。主な原因は、「電源プラグが抜けた」「停電した」「そのほかの理由で電力の供給が絶たれた」などです。
また、停電などの最中に、内蔵バッテリーや外付けのバッテリー(無停電電源装置)で作動していた状態で、バッテリーが切れ、ほかからの電力供給がなくなった場合にも電源アラームが鳴ります。
■対応の原理原則
まず応援を呼び、換気を確保するため、ただちに用手換気を開始します。次に電源プラグを調べ、抜けていたり、停電時に一般電源につながっていたりしたら、非常電源につなぎます。それでも解決しない場合は、人工呼吸器をほかのものと交換し、臨床工学技士やメーカーに連絡して、点検・修理を依頼しましょう。
人工呼吸器は、停電時にも電力が供給されるように、非常電源に単独で接続します。一般電源への接続やタコ足配線は厳禁です。その機種がバッテリー内蔵型か外付け式か、バッテリーで何分程度動くのか、バッテリー作動中であることを示す表示はどこかを知っておくことも大切です。
また、緊急時には、ただちに用手換気を開始できるように、ベッドサイドには、バッグバルブマスクなどを常備しておきましょう。
■アラーム防止ポイント
1. 人工呼吸器は必ず単独で非常電源につながっているか
2. バッテリーだけで作動できる時間を知っているか
2.ガス供給アラーム――供給ガス圧の低下を知らせてくれる
■どんなアラーム?
人工呼吸器に供給される酸素や圧縮空気の圧力が低下していることを示します。酸素と圧縮空気の圧力低下を別々に知らせるアラームを備えた機種と、まとめて「供給ガス圧低下」などと表示するアラームを備えた機種があります。
アラームの主な原因は、配管端末器(アウトレット)と人工呼吸器をつなぐ耐圧ホースの接続部のはずれやゆるみ、接続プラグの劣化やホースの破損による漏れ、ホースの折れ曲がりによる閉塞などです。また、コンプレッサーの不具合や、まれには中央配管の異常もあり得ます。
■対応の原理原則
まず応援を呼び、用手換気と必要に応じて酸素ボンベによる酸素供給を開始します。その上でアラームの原因を調べます。接続部がはずれたりゆるんでいたらつなぎ直し、部品や機器に異常があれば、臨床工学技士やメーカーに連絡して交換するか、人工呼吸器自体を交換します。配管端末器に問題があるなら、正常に動作する場所に移動し、異常箇所を管理部門に報告します。
このような事態を防止するには、耐圧ホースの接続を確実に行うこと、ホースや接続部の劣化や破損の有無について、日々チェックを欠かさないことが大切です。病院の安全システムとして、中央配管や配管端末器の点検も定期的に行う必要があります。
■アラーム防止ポイント
1. 耐圧ホースの接続を確認し、劣化や破損の有無を日々チェックする
2. 中央配管や配管端末器の点検を定期的に行う
*次ページは「酸素濃度アラーム」について解説します。
3.酸素濃度アラーム――酸素濃度センサーの故障が主な原因
■どんなアラーム?
吸気の酸素濃度が設定された範囲をはずれたことを知らせます。下限より低くなった場合は低酸素症を、上限より高くなった場合はそれにともなう肺障害を起こす恐れがあります。
このアラームが鳴る主な原因は、酸素濃度のセンサーの異常です。また、まれに中央配管や配管端末器のトラブルが原因になることもあります。人工呼吸器に酸素を供給する耐圧ホースがはずれたり、中央配管からの供給が止まってしまった場合には、前項のガス供給アラームが優先されます。
■対応の原理原則
まず応援を呼び、用手換気に切り替えて、酸素ボンベで酸素を供給します。その上で酸素の配管と酸素濃度の設定を確認します。配管や設定に問題が見つからなければ、ほかの酸素濃度計で吸気の酸素濃度をチェックします。もし機械的なトラブルが考えられる場合は、臨床工学技士やメーカーなどに連絡して部品を交換するか、人工呼吸器を交換します。
酸素濃度センサーの耐用期間は1縲怩Q年(機種によって異なります)とされていますが、期限を超えないよう常に早め早めに交換するようにし、交換日を正しく記録しておきます。なお、高濃度で酸素を使い続けると、酸素濃度センサーの消耗が早くなる傾向がありますので注意しましょう。
■アラーム防止ポイント
1. 耐圧ホースの接続を確認し、劣化や破損の有無を日々チェックする
2. 中央配管や配管端末器の点検を定期的に行う
(『ナース専科マガジン2012年12月増刊号 一冊まるごと呼吸ケア』より転載)
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