検査値を患者さんの病態とどうつなげて考えればよいかわからない──。
そんな声に応えて、入院時からの経過と検査値の推移を見ながら、数値の示す意味や看護への活かし方を、4つの事例で検討します。
事例3
痛みと発熱の症状から心内膜炎の診断に至った患者さん
Cさん(77歳、男性)は、未明より背中と首の痛み、頭痛、発熱を訴え、整形外科を受診しました。
X線とCT検査、血液検査を実施したところ、椎体・椎間板炎が疑われました。
白血球数も増えており、痛みが強かったため、Cさんはそのまま入院加療となりました。
入院翌日に熱が39℃に上がり、嘔吐もありました。
同日の血液検査では、CRPが25.89mg/dLと大幅に増えています。
熱と頭痛から髄膜炎が疑われたため、腰椎穿刺を行い、髄液の検査と血液培養を実施しました。
その結果、髄液の細菌は陰性でしたが、血液からはMSSAを検出。
敗血症と診断され、Cさんは内科に移りました。
内科では、敗血症と椎体・椎間板炎を起こしているものの、髄液には細菌は入っていないことから、髄膜炎は否定されました。
そこで、感染性心内膜炎を疑い、経食道エコーを行ったところ、心臓の僧帽弁付近に細菌の固まり(疣贅=ゆうぜい)があることがわかりました。
細菌はMSSAだったので、4週間の抗生物質の投与で順調に回復し、退院になりました。
検査値の推移



診断・治療のポイント
- 椎体・椎間板炎の症状は整形外科領域ですが、「これをみたら敗血症を疑え」と言われています。椎体・椎間板には、外部から細菌は入りませんが、血流が豊富で流れがゆっくりしているため、血中の細菌がつきやすい部位です。
- 入院の翌日に髄膜炎を疑い、髄液検査を行った結果、髄液の蛋白定量は310mg/dL、細胞数が234mm/3と増えていました。こられの検査値は、髄膜炎のデータに近いものの、髄膜炎なら下がるはずの糖定量が96mg/dLと下がっていません。そこで、細菌培養検査が行われましたが、髄液培養は陰性でした。
- 髄液が椎体・椎間板炎の影響を受け、あたかも髄膜炎のような反応を示していたものと思われます。
- 血液培養は陽性で、細菌はMSSA(メシチリン感受性黄色ブドウ球菌)であることがわかりました。
- 血液検査から、白血球数が初診時に10290/μlと多く、CRPは初診時が0.60mg/dLなのに対し、入院翌日には25.89mg/dLと大幅に上昇していることから、細菌感染があることがわかります。感染症が起こっていても、最初の数時間はCRPが上がらないので、初日の検査値が低いからといって安心はできません。
- 白血球数は初診時の10290/μlから、入院翌日の9070/μlと増えていませんが、重症の感染症では白血球は増えないことがあります。
- 血液培養検査が陽性を示し、敗血症であることはわかりました。原因追究のため、経食道エコーで調べてみたところ、心臓の僧帽弁付近に細菌の固まりがあることがわかりました。感染性心内膜炎による敗血症と、椎体・椎間板炎を起こしているという診断になりました。
- Cさんは順調に回復しましたが、もし細菌の固まりが心臓の弁を壊し、急性心不全を起こせば、緊急手術が必要になります。症状が収まり、病態が安定しているからと油断せずに、バイタルサインや血液データをチェックして、常に観察することが大切です。
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