「現代は〇〇社会である」と表現することがありますが、こんにちの私たちの社会は専門職なしには成り立たない、専門職に支えられて成り立つという意味で、「専門職社会」だといえるでしょう。専門職社会における専門職は、担う役割の大きさから、専門職としての矜持、いかに行動すべきかといった職業倫理の遵守が求められます。
前回は、専門職としての看護師と介護職員の思考スキームの違いについて述べました。今回は、専門職がどうして生まれたのか、専門職が成立するメカニズムについて考えてみましょう。ここでは2つの視点から考えてみます。それは「分業論」と「知識論」です。
分業論としての専門職
そもそもすべての人間の営みは他者とかかわることなく成立する状態(自給自足)があり、それが出発点です。しかし、人間が村落や地域社会をつくり、より大きなシステムの中で生活するようになると、狩猟専門家(狩人)や宗教的専門家(神官、僧)等の分業が起きることになります。分業は人間が集団生活をするようになった古来より行ってきています。
しかし、私たちの生活を一変させるほどの規模で分業が起きたのは近代以降となります。産業革命によって製造業が大幅な規模拡大を遂げました。それまで職人の手作りで担われていたモノづくりの多くはシステムとして分業化され、機械化された工場内で生産されるようになりました。 この大規模な製造システムを効率的に機能させるための方法として、有史以来最大の分業が起きました。これは工業社会の出現と同時に世界中で起きた現象です(図1)。
図1 分業化

そして、医療福祉の分野でも同じように近代以降、一貫して大規模化が進みました。医師がすべてを一括して担当していた時代は過ぎ去り、医療は看護師をはじめとした専門職によって分業化されるようになります。近代社会ではこれらの高度に分業化したシステムがなければ医療を提供することはできなくなりました。
日本では介護保険制度の施行によって大規模化し、介護福祉士が専門職化されることになりました。これらの経緯を通して、医療福祉分野の専門職人口は爆発的に増加することになりました。
知識論としての専門職
知識論からみれば、専門職集団は自分たちの実践(practice)から知識を抽出し、それを蓄積するプロセスによって、自分たちの専門性(専門的知識)を強化します。自らの専門職としての有用性を基にして、社会から信任を得ていくのです。専門職にとって、現実の「実践」の中で自らが経験した知識を蓄積することこそが、専門職の正当性の源泉なのだといえます。
異なる専門職は、それぞれが「実践の現場」についての独自の認識を持っています。同じ現場でもそれぞれの専門職の流儀で知識が抽出され、蓄積されていきます。この蓄積された専門的知識が、他の職種との思考の共有を難しくさせるのです。図2は、専門性が高まることで他の専門職や非専門職との乖離が大きくなるということを示しています。
図2 専門性の高さと乖離の程度の関係

このことは図3に示すような「専門性の濃縮サイクル」でも説明できます。専門職はそれぞれの専門的知識を実践の現場に応用することで職務を遂行します。その実践によって価値を提供しますが、同時に実践遂行によって得られる知識を抽出して蓄積します。このサイクルを繰り返すことで専門性は濃縮され、独自性の強い専門的知識が作り上げられます。
図3 専門性の濃縮サイクル

以上のような専門職の実践にまつわる現象は、本来専門性を高める大切なメカニズムです。しかし、多職種連携という点でみれば、互いに乖離する方向に導いてしまうメカニズムとして機能しているのです。
放っておけば、お互いに離れていってしまう。そういったものを少しでも近づけて社会としての一体性を保とうとする努力こそが多職種連携であり、分業によって分断化してしまう社会をつなぎとめる大切な社会的機能なのです。
次回は、多職種チームのコミュニケーションがうまくいっているかどうかを「見える化」する手法について述べます。
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