今回からは、意識状態が悪い人のアセスメントについてです。この事例から、フィジカルアセスメントとはどういうことなのかを考えていきます。
事例
[Yさんから提供された事例]
SCUに入院中の患者さん。麻痺の有無と程度のアセスメント、どうする?
SCUに入院中の患者さん。意識レベルは、JCS I-3、GCS E4V1M1でした。時折、指先をかすかに動かしたり、不随意運動かもしれませんが、ぴくっと一瞬動かすことはありますが、それ以外は普段、動くことはありませんでしたし、力も入っていませんでした。この患者さんの麻痺の有無の程度をアセスメントに困りました。
→あなたはどうアセスメントする?
まずは、みなさんの投票結果とコメントを見ていきます。
みんなの回答
今回もナース専科コミュニティ上で、みなさんに投票してもらいました。総投票数は897票。どのような結果となったのか、見てみましょう。

一連の行動で行っていることなので、選ぶのが難しい
投票は、897票と多かったのですが、アセスメントしたコメントを書いてくれた人は、10人という結果になりました。
今回の選択肢を見ると、どれも欠かせないことであって、例えば「指をかすかに動かした、など見たままをカルテに書いておく」を選んだ人も、バイタルを見ていないかというと、そういうわけではないはず。
敢えて順位をつけるとしたらどうなるかという非常に答えにくい問題形式だったので、投票した人もすごく悩んだのではないでしょうか。
このように難しい状況で、どう考えたかを書いてくれた10人の方のコメントをすべて紹介します。
■指をかすかに動かした、など見たままをカルテに書いておく
- ●見たままのほうが、伝わりやすいと思います。(よっし~さん)
- ●これで、アセスメントしろっていう方がどうかしている。(クラウスは揚げたジャガイモが好きさん)
- ●見たままを記録というか、どういうときにどういう反応が得られたか を記録する。Locked-in症状じゃないですよね? 四肢が動かなくても瞬きができるとか……。(脳男さん)
- ●痛み刺激などでの反応を観察する。(にゃんこさん)
- ●他のバイタルも一緒に観察するが手を動かしたなど些細な情報もしっかりと記載します。(ありちゃんさん)
■麻痺の有無は判断できないので、意識状態を経時的にアセスメントする
- ●JCS が一桁ならば、いつどのような状態で動いたのか、対光反射だけではなく、バビンスキー反射などの反射と、バイタルサイン、心電図も注意深く経過観察。呼名に対して反応があるのか、偶然体動が起こっただ けなのか、従命は出来るのか、などの観察にも注意して経時記録し、変化がないかなどを私だったらみるかもです。(ピチューさん)
- ●情報からは何とも……。(ももさん)
■その他
- ●指を動かしたかどうか、バイタルサイン、意識状態、対光反射などすべてを継続観察、記録。(375さん)
- ●レベルがJCSI-3とのことですが、意思疎通ができるのでしょうか? もしオーダーが入るのであればMMTを使用するのがいいかと思います。(superhornetさん)
- ●より正確にアセスメントしたいので、たったこれだけの情報だけでアセスメントはしません。評価ではなく予想になってしまう。病巣はどの領域? どの程度? 左右は? 麻痺をアセスメントするために 患者さんに負荷をかけていいのかどうかも……?(ポンコツナースさん)
次ページは事例のつづきと山内先生の解説です。
事例のつづきとこの事例とみなさんの回答に対する山内先生の解説を紹介していきます。
事例つづき
カルテには「オーダーは入らず、麻痺の有無はかわらない」や「リハビリ時、右上に3cmほど挙上あり」「指先をかすかに動かしている」とそのときに見たままを記載していました。
その後、脳卒中地域連携パスにかけるか、療養型病院へ転院するかを家族と相談している間に、リハビリ病棟に転棟になりました。
山内先生の解説
今回の選択肢はどれもアリ!?
では、今回の選択肢とみなさんのコメントを見ていきましょう。
今回は非常に選びづらかったのではないかと思います。というのも、「バイタルサインを見る」というのと「意識状態を見る」というのは、ほぼ一緒にできることです。
さらに呼吸数、血圧、脈拍、体温にプラスして意識レベルも含めてバイタルサインとする考え方もあるので、なおさら選びづらかったでしょう。
これが、「アセスメントでやらなければならないことを3つ挙げる」といった質問だったら、迷わなかったかもしれません。「バイタルサインを見る」「意識状態を見る」、この2つを選んだ人は、どちらも行うけれど、敢えて選ぶとしたらということで選んだのではないでしょうか。
「指先をかすかに動かした、など見たままをカルテに書いておく」を選んだ人は、おそらくバイタルサインや意識状態を見るのは当たり前として、さらに観察で得た情報をカルテに記載しておくという意味で選んだのでしょう。
「対光反射などで状態をアセスメントする」を選んだ人もやはり、当然バイタルサインは確認しているという前提があって選んだのではないでしょうか。
対光反射が見られないくらい中脳が障害されていても、呼吸が保たれている場合はあるけれど、呼吸はしていないのに中脳の機能が保たれているということは、まずあり得ません。
より生命に直結するほう(呼吸が保たれているか)を飛ばして、対光反射を確認するというのは、順番が違いますよね。
というわけで、これを選んだ人は、前提としてバイタルサインの確認はしていて、さらにより情報を得るために対光反射の確認を行おうと思ったのでしょう。
アセスメントとはどういうことか
コメントにもありますが、今回の情報だけではアセスメントはできない、と思った人も多いでしょう。
確かに今回の情報だけでは疾患名もわかりませんし、意識レベルが低下している状態ということしかわかりません。
ですが、アセスメントできないとは言いきれないと思います。この認識の違いは、看護師が行うフィジカルアセスメントをどういうものと認識しているかということに関係します。
お料理に例えると、「おいしいきゅうりが1本あります」といわれたときに「これで料理をしろっていうほうが無理」という人もいれば、「塩もみすれば丸かじりしてもおいしい」という人もいるでしょう。
どちらが正しくて、どちらが間違っているということではなく、料理に対しての認識の違いですよね。
ズッキーニなんとか風という料理はできなくても、おいしいきゅうりという価値はある。アセスメントもこれと同じ。
疾患名がわかるまでアセスメントできなくても、今現在、患者さんはどういう状態にあるか、というのは捉えられる。これもアセスメントなんです。
次ページはアセスメントとはどういうことを指すのかを考えていきます。
看護師にとって、アセスメントをするというのは、どういうことなのかを考えていきます。
疾患名は患者さんの状態を把握するために情報の一つ
アセスメントの話になると、疾患名が気になる人が多い。例えば、呼吸をするときにヒューヒューといった呼吸音が聞こえたとき、「これは喘息ですか?」とすぐに疾患に結びつけてしまいがちです。
確かに喘息でもそういった状態になるけれど、誤嚥でもなる可能性はあるでしょう。
疾患名が明らかにできなくても、本当は楽に呼吸ができるのが普通なのに、空気の通り道が狭まっていて苦しそうだ、ということはわかりますね。これも十分アセスメントといえると思うのです。
疾患名がわからなくたって、その患者さんの状態を知ることはできるでしょう。
今、こういう状態にある人ですって明らかにするのも一つのゴール。疾患名を知ることが何より大事なのではなく、疾患名という手掛かりがあったほうが、その人を捉えやすい、活用できる情報の一つだと思うとよいでしょう。
なんのために行うアセスメントなのか
アセスメントは入り口もゴールもバラバラで、ものすごく幅があります。
求められる程度は、職場や治療方針、患者さんのニーズによっても違います。
疾患名に結びついた処置が必要な職場であれば、より端的に表せたほうがよいでしょうから疾患名まで落とし込んでいったほうがよいのかもしれません。
でも訪問看護なら、疾患名がなんであれ、その人が自分の暮らしができるかどうかの評価を優先しますから、疾患名の重要性は前者よりも薄まるでしょう。
アセスメントの加減をどうすればいいのかは、ゴールがなんなのかをしっかりと認識することです。
例えば、前述した訪問看護の場合のゴールは、この人が在宅にいていいか、病院へ行ったり医師にすぐに報告したりしたほうがいいかの判断をすることです。
これを判断するために必要な情報を集めるのがアセスメントです。
アセスメントを行う際には、どうしたいのか、何のためのアセスメントなのかをしっかりと考えて、どこまでアセスメントすることが必要なのかを見極めていってほしいと思います。
次回の事例
[ご老体さんから提供された事例]
食思不振で、慢性期病棟に入院中の原疾患に心不全を持つ患者さん。バイタルサインを測定したところ、血圧が90/72mmHgや104/88mmHgとなっており、脈圧が低い状態で頻呼吸も見られました。
その他に、患者さんの訴えとして、倦怠感、胸・腹部不快感があるとのこと。治療の方針が栄養状態の改善と食事量をアップさせ施設に帰すことだったからか、リーダー看護師に報告しても取り合ってもらえません。当院は医師に報告する際にはリーダー看護師を通さなければならず、医師に報告することができませんでした。
→こんな状況で、あなたなら患者さんのどこを注意して観察する?
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