
臨床で出合った疑問「?」や予想外の結果「!?」を、ついそのままにしていませんか。そんなとき的確なアセスメントができたなら、今よりも一歩進んだ対応が可能になります。さまざまな症例を通して、看護師が身につけておきたいアセスメントのコツを解説していきます。

執筆:青柳智和先生<水戸済生会総合病院 看護師特定行為研修室長/株式会社ラプタープロジェクト代表>
青柳智和先生のYoutubeチャンネルのご紹介
臨床に役立つアセスメントのコツを10分程度の動画で紹介しています。今回は、尿道留置カテーテル感染に関する実態調査についての報告もあります。ぜひご覧ください。
今回の症例|熱があったので解熱薬を使いました……これではダメなの?
患者像
76歳男性。ADLは自立していたが2カ月前より手足に力が入りにくいことを自覚し、また動作が緩慢であることを家族に指摘されていた。1週間前に自宅で転倒し、右大腿骨頸部骨折の診断。骨接合術を施行し、その後意識レベルや食事摂取量、創部にトラブルがないため、徐々に荷重をかけていく方針であった。
一方で、術前からの力の入りにくさは持続しており、術後7日目に38.2℃の発熱を認めた。尿道カテーテルは手術翌日に一旦抜去したが、尿閉がみられたため現在再留置となっている。
何が起こったか
38.2℃の発熱に対する予測指示として、「非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)座薬 25?使用」とあったため、指示通り実施しました。血液培養については「38.5℃以上で実施」という指示だったので見送りました。その3時間後、呼吸数24回/分、血圧 88/48?Hgとバイタルサインに変調がみられました。 GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)による評価はE 3、V 4、M5で、持続開口、項部硬直および四肢のこわばりも確認されました。主治医から「血液培養と尿培養も行ってほしかった」と言われたので、血液培養は38.5℃以上の指示だった旨を伝えると、「それはそうだけど……」と不満そうでした。
この症例をどう考えるか
この患者さんは尿路感染症および敗血症です。抗菌薬を投与する前に尿のグラム染色を行ったところ、グラム陰性桿菌が確認されています(図1参考)。通常男性は尿路感染症を起こしにくいものです。しかし、尿道カテーテルが留置されていることを考慮すると、複雑性尿路感染症の可能性がありました。
図1 グラム染色によって色付いたグラム陰性桿菌の例

また、術前から持続している力の入りにくさや転倒の既往、さらには術後の持続開口、項部硬直、四肢のこわばりから、パーキンソン病、パーキンソン症候群、進行性核状性麻痺などの変性疾患が疑われ、これが尿路感染症の遠因かもしれません。
では、主治医はなぜ血液培養も行っておいてほしいと言ったのでしょうか?
アセスメントのコツ
●発熱の原因も意識するようにしよう
発熱は生体防御反応の一つであるため、安易な解熱は避けたいものです。しかし発熱には酸素消費量を増加させる懸念があることを考えると、解熱薬を使用するかどうか時に悩みます。一方で、発熱時に必ず行わなければいけないことがあります。それは熱源精査です。もし原因が感染であれば、切開排膿ドレナージおよび抗菌薬の使用が検討されますが、感染以外ではどちらも必要ありません。とはいうものの、厄介なことに感染症であった場合初期はわかりにくいうえ、発見が遅れると敗血症性ショックに移行し、最悪死亡するという可能性もあります。
本症例は術後だったので、発熱に対して解熱薬を使用することは適切かと思います。ただし、それに加え、担当看護師に、「なぜ熱が出ているのか?」という視点があれば、さらによかったと思います。
入院中の発熱の原因検索の際、医師はその原因を「8D」として頭に入れています。これは、Decubitus (褥瘡)・Debris(胆泥、胆嚢炎)・Drug(薬剤性)・Device(デバイス関連感染)・DVT(深部静脈血栓症)・Pseudogout(偽痛風)・CDI(クロストリディウム・ディフィシル感染症)、Deep Abscess(深部膿瘍)の頭文字(一部頭文字ではないので覚えにくいですね)を表したものです。特に深部膿瘍については、副鼻腔炎、咽後膿瘍、椎体炎、腸腰筋膿瘍、子宮付属器感染症、前立腺炎などさまざまです。この患者さんは、骨折手術を受けてはいますが、人工物感染と判断するには時期的に少し早いかもしれません。しかし、少なくとも尿道カテーテルが留置されているので「Device(デバイス関連感染)」には当てはまります。その場合、尿路感染症から敗血症となり、さらに人工物感染を招くと、治療には多くの時間を要します。「血液培養と尿培養も行ってほしかった」という主治医の言葉の裏には、「38.2℃でも尿路感染症の可能性はありますよね」という気持ちがあったのだと思われます。実際、その後に意識レベル低下、呼吸数増加、血圧低下の症状が現れました。quick SOFAスコア(表1)で評価すると3項目が当てはまり、敗血症を疑わなければいけない状況に陥っています1)。

●看護師に求められる判断と役割を考えよう
担当看護師はどうすればよかったのでしょう。「先生、38.2℃の発熱がみられていますが、肺炎の症状や創部の異常などはなく、熱源としては尿道カテーテルによる尿路感染症も十分に疑われる状況です。予測指示のNSAIDs座薬使用だけでよろしいでしょうか?」と確認することが最適解であったかもしれません。しかし、正直なところ「医師には聞きにくい」というのが実情かと思います。
2022年6月に日本看護協会からタスク・シフト/シェアについてのガイドライン(図2)が出されました。これによると、プロトコールを準備することで上記の検査を行うことは看護師の判断で可能であるとの見解が出されています2)。時代は変わっています。いつの時代も看護師による適切な判断は 求められますが、時に は医師の予測指示に疑問をもつことも必要ではないでしょうか。私は、このガイドラインが看護師の働き方を大きく変えると期待しています。皆さんも熟読して、ガイドラインを実践できる看護師にな っていきましょう!
図2 看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド2)

プロフィール
青柳 智和(あおやぎ ともかず)
水戸済生会総合病院や近森会近森病院などでICU、ER、手術室、一般病棟、RRT(ラピッド・レスポンス・チーム)、PICC (末梢挿入中心静脈カテーテル)チーム、看護師特定行為研修制の創設を経験。2006年から行っている臨床で必要とされる基礎看護教育のセミナー「出直し看護塾」は9万人を動員。診療看護師。看護学修士。医学博士。
参考資料
1)日本集中治療医学会:日本版敗血症診療ガイドライン 2020.日本集中治療医学会雑誌.2021;vol.28 Suppl (2022年7月11日閲覧) https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm28Suppl.pdf
2)日本看護協会:看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド(2022年7月11日閲覧) https://www.nurse.or.jp/nursing/shift_n_share/guideline/pdf/tns_guideline.pdf
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2022年10月号 TiaraNo.139より転載しています。
