
臨床で出合った疑問「?」や予想外の結果「!?」を、ついそのままにしていませんか。そんなとき的確なアセスメントができたなら、今よりも一歩進んだ対応が可能になります。さまざまな症例を通して、看護師が身につけておきたいアセスメントのコツを解説していきます。

執筆:青柳智和先生<水戸済生会総合病院 看護師特定行為研修室長/株式会社ラプタープロジェクト代表>
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臨床に役立つアセスメントのコツを10分程度の動画で紹介しています。今回は、芍薬甘草湯内服中に低カリウム血症による心室細動を繰り返した一例を紹介・解説。ぜひご覧ください。
頭痛、胸痛、倦怠感、めまい、脱力の訴えで手足を触っていると……突然VTに!


患者像
自立している80歳女性。2型糖尿病、高脂血症、高血圧、狭心症(カテーテル治療歴あり)、甲状腺機能低下症などの基礎疾患があり、それぞれ内服治療を行っていた。1週間ほど前に呼吸困難と乏尿を認めて受診し、急性心不全および急性腎障害と診断される。
入院して、3日間CHDF(持続的血液ろ過透析)を実施。さらに、フロセミド(ループ利尿薬)を40mg/日の内服から100mg/日の静脈内投与に増量することで利尿が得られ、入院5日目からは60mg/日の内服に変更となった。呼吸困難は消失し、バイタルサインの安定が確認できたため、食事が開始され、安静度はトイレ歩行まで拡大。心不全の原因として冠動脈狭窄の進行が疑われており、今後冠動脈造影の検査が予定されていた。
何が起こったか
7日目の昼間、本人から「気分が悪い」とナースコールがあり、訪室すると「気分が悪い、吐き気がある、頭が痛い、胸も痛い、体がだるい、めまいもする、全身に力が入らない」と立て続けに訴えがありました。顔面は蒼白で、手を触ると冷たく湿っており、脈を振れようとしたところ、ナースステーションからナースコールで「〇〇さん、大丈夫ですか? VT(心室頻拍)です。誰かいますか?」と連絡が入りました。同時にほかのスタッフが訪室し、さらにAEDと救急カートを持ったスタッフおよび医師が駆け付けてきました。モニターがVTを示していたのです。
その後も女性に意識の消失はありませんでしたが、脈拍は微弱で、血圧の測定は困難でした。標準12誘導心電図は、QT時間(QTc)が0.486と延長しており、洞調律と心室頻拍を繰り返していました(図1)。血液ガス分析がpH 7.481、PaO282.0mmHg、 PaCO239.9mmHg、HCO328.9mEq/L、Na135mEq/L、K 2.9mEq/L、Ca‐不明)であったことから、速やかにリドカインおよび硫酸マグネシウムの静脈内投与を実施し、同時にカリウムの補正が行われました。
図1 12誘導心電図の変化

この症例をどう考えるか
VTは非常に危険な不整脈ですが、実は脈がある場合と脈がない場合があります。脈がない場合は、意識がなく、急変していることが認識できますので、そこから自身の行動を選択することは容易です(一次救命処置を行います)。しかし今回の症例の場合は、「明らかな異常」とは思っていても、症状に一貫性がなく、人によっては「不定愁訴」とも捉えかねないものでした。幸い、心電図モニターが装着されていたこと、その波形を監視していたスタッフがいたことで早期発見につながりました。しかし、退院間近でモニターが外されていたり、夜間でナースステーションのスタッフが手薄になっていたとしたら、早期の対処が難しかった可能性は拭えません。
この症例は、ループ利尿薬によく反応していたため、薬剤性の低カリウム血症を起因とする心室頻拍でよいと思われます。血清カリウムの異常は非常に怖く、高値でも低値でも不整脈を起こします。乏尿であれば高カリウム血症を疑い、利尿薬の効果が出ている場合は低カリウム血症を心配する必要があります。今回の症例は、カリウムは2.9mEq/Lと低値で、心電図とも治療背景とも矛盾はありません。
ただし、心電図はQTcが延長しているようにみえ、実際心電図の自動解析でも0.486と延長しています。しかし、血清カリウムが低値であったことを考えると、平低下したT波と増高したU波と考えるべきでし ょう(図2)。こういうときに限って、Caが測れないといったことは経験上不思議とよくあることですが、利尿がよいことから低カリウム血症という判断に矛盾はないでしょう。もし、実臨床で仮に看護師がQT時間が延長していると判断したとしても、治療の決定は医師であるため問題はないと思われます。
図2 平低下したT波と増高したU波

アセスメントのコツ
●みるべきものを意識できるようにしよう
この症例からの学びは、現れたさまざまな症状を説明できるかどうかという点です。一見一貫性がなく、自分自身が理解できないと「せん妄? 不定愁訴? 変なこと言ってる?」と頭が混乱してしまうかもしれません。しかし、全体を見直してみると「気分が悪い、吐き気がある、頭が痛い、胸も痛い、体がだるい、めまいもする、全身に力が入らない」という症状は、脈あり心室頻拍による血圧低下と低カリウム血症の症状と考えて間違いないでしょう。薬剤の副作用から何らかの症状が出現することは珍しくありません。
心不全で利尿薬を使用した場合、呼吸困難の有無やSpO2、尿量、体重は当たり前のように確認していると思いますので、ぜひそこに低カリウム血症という視点を入れてほしいと思います。具体的には、T波の平低化やU波の有無です。みるべきものがわかっていれば、みえないものがみえてくるものです。
●見逃しがちな食事量の低下にも目を向けよう
この患者さんは前日から食事が始まっていますが、実はその朝は食事をほとんど残していました。もしかすると、そのころから気分の不快が出現していたのかもしれません。しかし、「たまたま食べたくないのかな?」と看護師が勝手に解釈したことで、早期の介入が遅れた可能性はないとはいえないでしょう。
私たちも食欲のない日くらいあります。しかし、よくあることと流してしまわずにしっかり考えるようにすると、そこにある理由がみえてきます。食事量が低下していたということにも目を向けてみると、異常の早期発見につながるかもしれませんね。
プロフィール
青柳 智和(あおやぎ ともかず)
水戸済生会総合病院や近森会近森病院などでICU、ER、手術室、一般病棟、RRT(ラピッド・レスポンス・チーム)、PICC (末梢挿入中心静脈カテーテル)チーム、看護師特定行為研修制の創設を経験。2006年から行っている臨床で必要とされる基礎看護教育のセミナー「出直し看護塾」は9万人を動員。診療看護師。看護学修士。医学博士。
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年12月号 TiaraNo.146より転載しています。
