
地域包括ケアシステムのなかで、看護職はどのような役割をもち、どのような現場で活躍しているのでしょうか。地域でのさまざまな看護のかたちを再確認していきます。今回は「訪問看護」です。

解説:當山 典子 先生<聖ヨハネ会小金井訪問看護ステーション 所長>
訪問看護をめぐる現状
厚生労働省によると、介護が必要になった場合、在宅で介護して欲しいとする人は35.7%、また自宅で人生の最期を迎えたいとする人は30.9%となっており1)、高齢者のみならず小児や精神領域も含め、在宅療養者の数はさらに増加すると考えられます。今後、医療は「病院完結型」から、地域全体で支える「地域完結型」へと移行し、在宅医療はさらなる充実が望まれます。
訪問看護サービスも在宅医療推進の観点から充実が図られています。1994年の健康保険法等の改正で訪問看護の対象が高齢者以外にも拡大し、2014年には機能強化型訪問看護ステーションの評価が創設されるなど、制度の整備が行われました。
2019年の訪問看護ステーション(居宅サービス事業所)数は1万1580カ所、従事者数は12万2989人で、うち看護職は8万3384人となっています2)。また、2017年の全訪問看護ステーションの利用者は22万2588人を数えます3)。これらの事業所数、従事者数、利用者数ともに増加傾向にあり、今後も増加していくことが予測されます。
表 訪問看護利用者が利用した主な看護サービス(2019年9月中/複数回答)

訪問看護サービスの内容
訪問看護では、在宅療養者を対象にそれぞれに必要な看護サービスの提供を行います。提供する看護サ ービスの内容は、対象となる療養者の疾病、病状、介護状況などによって異なり、多岐にわたります。
2019年の介護サービス施設・事業所調査によると、訪問看護利用者が利用した看護サービスで最も多いのは「病状観察」で、次いで「本人の療養指導」「その他リハビリテーション」「家族等の介護指導・支援」などとなっています(表)。
訪問看護師に求められること
訪問看護師にどのような動きとスキルが求められるのか、1つの事例を通して説明しましょう。
2人とも介護認定されたご夫婦がいました。介護サービスをほとんど利用していませんでしたが、次第に転倒や失禁など療養生活上の問題が散見されるようになり、訪問看護サービスの利用が始まりました。訪問看護師は、サービスの利用に積極的ではなかったご夫婦に対し、生活状況、困っていることを聴くことから始め、本当に必要なことからタイムリ ーに看護ケアを導入。また必要に応じ、ケアマネジ ャーと連携しながら、ヘルパーの導入や薬剤師との連携、権利擁護事業の利用なども進めていきました。
最終的には2人きりでの生活が困難となり施設入所となりましたが、それまでの間、週1回の訪問看護を通し、変化する状況をとらえ、その時々の困りごとを多職種と連携しながら解決し、ご夫婦の療養生活を支えていきました。
求められること(1)アセスメント力
訪問看護は、常に患者さんのそばにいる医療施設での看護とは異なり、訪問時に「点で支えること」で療養者の療養生活を支えます。1週間でどのような変化があったのか、なかったのか、現在どのような状況にあるのか……毎回訪問するたびに、病状に加え生活状況も含めてアセスメントを行い、療養者の変化に応じた看護サービスを提供する必要があります。また、場合によってはほかの専門職と連携し、サービス内容を調整する必要があるかもしれません。事例でも「ご夫婦の変化する状況をとらえること」がまずは重要でした。的確に状況を把握し、そのアセスメントに基づいてケア内容の調整を行うため、訪問時の短い間で的確に状況を把握するアセスメント力が大切です。
求められること(2)自分および他職種への理解と調整・連携
訪問看護師には「自分の役割を、さらにほかの専門職の役割を、きちんと理解して動けること」が第一。まずは自分自身を理解することが必要で、そうでなければほかの人のことは理解できないと思います。その理解に基づき、さまざまな専門職が連携して療養者の療養生活を支えていくことが求められるのです。在宅医療では、多施設の多職種が「ワンチ ーム」として協働して療養生活を支える必要があります。事例では「困りごとを多職種と連携しながら解決すること」でご夫婦の在宅生活を支えました。
地域とのかかわりと訪問看護の今後
訪問看護においては、医療専門職に限らず、行政や福祉関連の専門職とも幅広く連携していくことが必要です。地域ではさまざまな人が療養生活を送っており、求められるサービスも多様です。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延など思いもしないことが発生したとしても、目の前に療養者がいるなかで、私たちには即時にその状況に対応することが要求されます。幅広いニーズに応えるためにも、地域のなかで幅広く多様な人々とつながり協働することが、地域での療養生活の可能性をさらに広げていくことになります。
日本の少子高齢化、また医療の発展を支えていくために、また新たな健康課題に対処していくために、訪問看護師は新たな問題への対応能力を高めなければなりません。そのうえで、地域の人たちの在宅療養生活を支えていくため活動することが期待されています。
プロフィール
當山 典子(とうやま・よりこ)
琉球大学医学部保健学科卒。病棟での看護を経験後、1989年より訪問看護に携わる。1997年より現在の職場に勤務。
参考資料
1)厚生労働省政策統括官付政策立案・評価担当参事官室:平成30年高齢期における社会保障に関する意識調査報告書、2020、17-18.
2)厚生労働省:令和元年介護サービス施設・事業所調査(2021年11月4日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service19/dl/gaikyo.pdf
3)厚生労働省 中央社会保険医療協議会:中央社会保険医療協議会 総会(第370回) 在宅医療(その4)について 参考資料 p.12 訪問看護ステーションの利用者 ?利用者数の推移 保険局医療課調べ(平成13年のみ8月、他は6月審査分より推計、平成29年は暫定値)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000186845.pdf
4)「政府統計の総合窓口(e-Stat)」、統計データを探す−介護サービス施設・事業所調査 / 令和元年介護サービス施設・事業所調査 / 詳細票編 / 居宅サービス事業所 / 訪問看護ステーションの利用者(厚生労働省)(2021年11月4日閲覧)
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2022年3月号 TiaraNo.135より転載しています。
