
これまで、地域包括ケアシステムのなかで看護職が活躍する各現場をみてきました。今回は地域内での看護職の連携のかたちとその際必要となるものを、あらためて確認していきます。

解説:掛本 知里 先生<東京有明医療大学 看護学部 学部長 教授>
地域の医療を取り巻く現状
厚生労働省の病院報告1)によると、病院の平均在院日数は、2019年で27.3日。前年比で0.5日短くなっており、近年減少傾向にあります(図参照)。10年間でみると平均5.2日短縮。特に療養病床は約40日、精神病床は約35日とその日数は大きくなっています。これには、医療技術の進歩に伴う療養にかかる期間の短縮化、在宅で提供される医療技術の向上、診療報酬制度の見直しなどが影響しています。

注:東日本大震災の影響により、平成23年3月分の報告において、病院の合計11施設(岩手県気仙医療圏1施設、岩手県宮古医療圏1施設、宮城県石巻医療圏2施設、 宮城県気仙沼医療圏2施設、福島県相双医療圏5施設)は、報告のあった患者数のみ集計した。
熊本地震の影響により、平成28年4月分の報告において、熊本県の病院1施設(阿蘇医療圏)は、報告がなかったため除いて集計した。
平成30年7月豪雨の影響により、平成30年7月分、8月分の報告において、広島県の病院1施設(尾三医療圏)は、報告がなかったため除いて集計した。
1)より引用、一部改変
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり(2025年問題)、日本では超高齢社会が続くことが予想されます。そのなか、日本財団の調査2)では、人生の最期は、9割の人が「治療して延命」より、「無理に治療をせずに、体を楽にさせることを優先」したいと考えているという結果が示されています。こうした人々の思いを実現し、高齢者の増加に伴う医療・介護のニーズを満たすためには、在宅医療をさらに充実させていくことが望まれています。
一方で、2014年の医療法の改正に伴い、都道府県には地域医療構想の策定が義務付けられました。これにより、各都道府県では、高度急性期、急性期、回復期、療養期の4機能ごとに、具体的な施策のもと医療提供体制の構築を目指す動きになっています。
このように、現在の医療では、在宅医療への移行が推進され、病院の病床機能の分化が進んでいます。ですから、病床がその専門機能を最大限に発揮し、より適切な医療を提供していくために、各組織間の連携・協働が重要になっています。
地域における看護連携のあり方
それでは、看護においては、どのような相互連携を図っていけばよいのでしょう。
国は2025年問題を見据え、地域包括ケアシステムの構築を推進し、地域の医療関係者が相互に連携し、人々が安心して療養生活を送れる地域づくりを目指しています。病院、施設、行政、在宅医療といった、それぞれの場で人々の療養生活を支える看護職には、お互いの仕事を理解し、連携を図ることが求められます。
地域包括ケアシステムでは、療養生活の支援を中心にシステム構築がなされています。しかし、人々が健康を維持・増進し、現在の生活を継続・発展させていくための「健康生活」を支えていくことも重要です。妊娠し、出産し、その子どもが地域で育ち、大人になり、社会活動をするようになる──このようなライフサイクルのなかで、人にはさまざまな看護職とかかわる機会があります。母子健康手帳をもらいに役所に行けば、そこで保健師がいろいろ相談にのってくれるかもしれません。産院に行けば、助産師や看護師が支えてくれるでしょう。出産後、新生児訪問や乳幼児健康診断の際には、保健師や助産師が相談に応えてくれます。学校に入れば、養護教諭が児童生徒の学校生活を健康面からサポートしています。社会人になれば、事業場の保健師や看護師が、より健康的に、よりよく働くための支援を行います。
人は、健康で元気に活動しているときには、病院以外の場で看護職がどれほど活動しているか、なかなか気づくことは少ないかもしれません。でも、ふと振り返ってみると、さまざまな看護職が一生懸命に人々の健康生活を支えている姿がみえるはずです。
地域では多様な場でさまざまな看護職が活動しています。だからこそ、私たちは互いに連携し、それぞれの看護職が、人々の健康生活を支える最高のパフォーマンスを行えるようにすることが大切です。
その第一歩として求められるのは、お互いの役割・機能についての理解です。そのうえで、看護職以外のさまざまな職種やボランティア、地域の人々の活動についても、理解を深めなければなりません。看護職だけでなく、健康生活を支える人々とともに、連携しながら、多様な活動を展開していくことが重要になるのです。1人ではできないことも、みんなで協力すれば、きっとよい結果に結びつくことでしょう。

連携の際に看護職に求められるもの
人々の健康生活を支えるため、看護職に求められるのは、まず人の「生活」についてよく知ることです。自分と異なる年代、背景の人には、自分とは異なった生活があります。人にはそれぞれの生活があることを理解し、それを支える視点をもつことが大切です。
さらに、生活のあり方をアセスメントし、理解するため、人々の生活を観察し、言語的・非言語的コミュニケーション能力を最大限に発揮することが必要です。ちょっとしたしぐさや、ちょっとした会話から、問題解決のきっかけがつかめるかもしれません。
今後社会がさらに多様化、複雑化するなかで、看護のあり方もどんどん変化し、その活躍の場は拡大していくでしょう。今の自分の看護に思い悩むことがあったとしても、看護の可能性を信じ、新たな看護の道を模索してみてください。自分が思ってもみなかったような場で、いろいろな形で、私たちの仲間がきっと素敵な看護を展開しています。
プロフィール
掛本 知里(かけもと・さとり)
聖路加看護大学看護学部看護学科卒業。
NTT東日本で保健師として産業保健看護活動に従事。聖路加看護大学大学院看護学研究科にて博士(看護学)を取得。
2010年東京有明医療大学看護学科専任教員。2015年学科長、2021年に学部長に就任。
参考資料
1)厚生労働省:令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況.結果の概況 ?病院報告(2022年4月20日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/19/dl/03byouin01.pdf
2)日本財団:人生の最期の迎え方に関する全国調査(2021.3.29)(2022年4月20日閲覧)
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2021/03/new_pr_20210329.pdf
本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2022年7月号 TiaraNo.137より転載しています。
