
地域完結型医療を目指す魚沼地域医療再編により、三次救急と高度医療を担う存在として2015年に誕生した魚沼基幹病院。地域内の医療施設と協力し「地域全体でひとつの病院」を形成することを目標としています。その姿勢は感染対策にも現れており、感染管理認定看護師が保健所と連携を図り、地域全体の感染対策の底上げに取り組んでいます。その様子をお伝えしましょう。
人と共に移動する感染症、地域の感染対策を見直す時代に
地域包括ケアシステムの構築が進むなか、医療機関と地域間の人の行き来による感染症の移動は避けられません。地域での感染対策が十分でなければ、感染症は静かに伝播してしまいます。


感染予防対策リーダー養成研修では演習が大切な要素。汚染物の正しい処理の仕方を体験しながら学ぶ
「これまでも施設等で研修会を行うことはありました。でもなかなか継続的な実施には結びつきませんでした」と話すのは魚沼基幹病院医療安全管理室看護係長の目崎恵感染管理認定看護師。地域での感染対策にかねてから問題意識をもっていたといいます。そしてその思いを、開院と共に入職した同院で、「感染予防対策リーダー養成研修(以下、リーダー養成研修)」の実施に結びつけていきました。
「当院は地域連携のハブとしての役割を担う医療機関なので、地域に向けた取り組みには理解があります。早速保健所に声をかけて、どのような取り組みがよいか検討を開始。結局実施までに1年近くかかってしまいましたが、老人福祉施設等を対象とした研修制度を構築しました」(目崎看護師)

1回の研修につき2回程度保健所の研修担当者と打ち合わせを行う。研修内容や進行を話し合う

目崎恵感染管理認定看護師
各施設の問題の解決につなげる感染予防対策リーダー養成研修
2016年度から始まったリーダー養成研修は、1年を通じて行われます。募集は保健所が担当。定員30名の受講生が年間5回コースの研修を受けます。初年度は入所型施設が対象で24施設が参加し、翌2017年度は通所型施設を対象としました。
研修では、「手指衛生」「個人防護具」「感染性胃腸炎」「インフルエンザ」と毎回テーマに沿って講義・グループワーク・演習を行います。受講生は、基本を学ぶと共に自施設の現在の問題点を明確にし「行動目標シート」を作成。行動目標を立ててその回の研修が終了となります。
「次の研修までに目標に向けた取り組みを行い、結果と考察をシートに書き込んで提出します。年間を通じ5回ある研修ごとに問題解決に向けた取り組みを行わなければならないため、受講生はとても大変だと思います。当初は継続してもらえるか不安だったのですが、皆とても熱心に取り組んでくれたのでうれしかったですね」(目崎看護師)
行動目標シートは保健所と共有し、受講生が抱える問題や悩みを把握。それをもとに支援方法を検討し、より適切な働きかけに結びつけています。また、研修会の最終回には、受講生が取り組んだ内容について実践報告会を開催し、各施設での取り組みを皆で共有しています。
「講習は2018年度で3年目となりますが、各施設での感染対策は確実に向上しています。インフルエンザやノロウィルスのアウトブレイクの報告は減少。リーダー養成研修が多少なりとも効果を及ぼしているのではないかと思います」(目崎看護師)

手指衛生の研修では、受講生自らが実際の手の汚染状態を確認

グループワークは年間を通して同じメンバーで。研修終了後は相談し合える仲間になる
保健所との連携が強い力に
介護現場にはディスポーザブル手袋やエプロンなどの使用にまだ抵抗感があると目崎看護師。生活の場での快適性が損なわれると感じたり、コストの問題があるようです。「でも、それが利用者さんと同時に職員も守ることを理解してもらえれば受け入れは進む。受講生が根拠を理解し、自施設の職員に伝えられるよう支援にすることが重要です。行動が結果につながれば、本人の自信にもつながります」と話します。
リーダー養成研修は、現在南魚沼と魚沼の両地域で開催。修了生のフォローアップ研修も行っています。目崎看護師は、今後エリアを拡大し、ゆくゆくは保育園も対象に検討したいと考えています。
「認定看護師1人では難しいと思うことも、保健所と連携が図れたことで、スムーズに研修が開催できました。地域に向けた対策を考えたときには、ためらわずに声を掛けてみることをお勧めします」(目崎看護師)
地域での感染対策の見直しが求められる今、看護師としての取り組みのヒントにしたいものです。

2016年度感染予防対策リーダー養成研修の修了生の皆さん
DATA
新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院
新潟県南魚沼市浦佐4132
http://www.uonuma-kikan-hospital.jp
開設2015年
病床数454床
職員数718名(うち看護師373名)※2019年1月現在
一般病棟入院基本料、急性期一般入院料1
地域災害拠点病院/地域救命救急センター/地域周産期母子医療センター/精神科救急医療施設

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2019年2月号 TiaraNo.120より転載しています。