
和歌山県立医科大学の看護キャリア開発センターは、2014年4月に開設され、学内(附属病院看護職員、保健看護学部学生)と学外(和歌山県内の医療機関で働く看護職と看護有資格者)を対象の2本柱にキャリア支援を行っています。2017年度からは特定行為研修を開講。修了後のフォローにも力を入れています。地域と連携を図り進めているその研修の様子をお伝えします。
地域ニーズを区分選択に反映 eラーニングの導入も
和歌山県立医科大学看護キャリア開発センター(以下、センター)による特定行為研修が開講したのは2017年。「センターでは、特定行為に対する地域のニーズを重視し、2016年度にアンケートを行いました。その結果、気管カニューレの交換や血糖コントロールなどへの希望が多かったため、これを考慮して開講する区分・行為を決めました」と話すのは副センター長の武用百子さん。6区分7行為でスタートし、2020年度には7区分9行為1パッケージでの研修となりました(表参照)。
特徴は、研修期間を1年半と長めに設定し、共通科目の講義は放送大学によるeラーニングを導入して、受講生が時間に余裕をもってしっかり学べるようにしていることです。
「地域のゼネラリストを受講生の中心と考えています。全員が確実に目標に到達できるよう、受講生の理解度や客観的臨床能力試験(OSCE)の結果を参考に、期ごとにカリキュラムの見直しも行っています。フィジカルアセスメントなど科目によっては研修時間を延長しました」(武用さん)


フィジカルアセスメントと臨床推論の研修風景。患者データを踏まえたロールプレイングのなかで、推察を深めていく

(写真左から)関口紗代看護師と武用百子副センター長
患者さんへの支援を高める知識・技術と+αの学びを
取材当日は、2019年度第4期受講生10名が「医療安全、フィジカルアセスメント、臨床推論、特定行為実践」の講義・演習を受けていました。
HCUに勤務する岡本麻里さん(橋本市民病院勤務)は、糖尿病療養指導士としても患者さんとかかわっており、「私にももっと何かができるのではと、血糖コントロールと栄養・水分管理の2区分を受講しました」といいます。また、呼吸器、栄養カテーテル管理、栄養・水分管理の3区分を受講している林好加さん(桜ヶ丘病院勤務)は、「療養型病院なので施設利用者とかかわりをもつことが多いため、慢性疾患を有する高齢者にいろいろな支援が行えるようになりたくて」と受講理由を話しました。
この日は、受講生全員がOSCEで及第点を獲得するために、演習を踏まえて振り返りと考察を行い、臨床推論を展開していました。
「研修を通して、アセスメント力を高めるだけでなく、その際に得た考える姿勢を日常看護にも取り入れてほしい。それは施設全体の看護の質向上にも結びつくと思います」(武用さん)センターで講義を担当している看護師の関口紗代さんは「各施設で中核を担うゼネラリストの受講が増えています。知識・技術の習得だけでなく、研修を自分のキャリア形成を考えるきっかけにしてくれるといいですね」と期待をにじませていました。



フィジカルアセスメントと臨床推論の研修風景。患者さんの状態を推察していくためには、どこを、どのようにみて、そこから何がわかるかをあぶり出す必要がある。学んだことをフルに活用する受講生たち
修了生を地域でバックアップし地域医療を支える看護師に
センターでは、開設当初から、さまざまな研修を通して地域医療機関との連携を深めてきました。特定行為研修でもその関係性を生かし、地域の医療機関でフォローアップが受けられる体制づくりを進めています。すでに、センターと離れた地域の修了生が近隣地域の医療機関で受けられる、指導医立ち合いによる実習が始まっています。
「センターの特定行為研修は、地域での実践を目指しており、知識と技術の維持が重要です。しかし技術については、全員が日常的に実践の機会を得られるとは限りません。特に訪問看護師はそうでしょう。ですから、希望者に対する実践の場を各地域で提供できるようにすることが必要でした」(武用さん)
現在、白浜はまゆう病院、有田市立病院、和歌山ろうさい病院、和歌浦中央病院、公立那賀病院、紀和病院、橋本市民病院の計7医療機関と連携が図られており、今後も増えていく予定です。
「実践以外に、手順書の作成と修了生の役割の開発をサポートすることも重要」とする武用さん。知識や技術を生かすための環境づくりも視野に入れた研修を行っていく構えです。センターだけでなく地域として修了生を支えることで、より堅実な地域医療の構築を目指しています。

実習の前には座学でポイントを確認

(写真左から)岡本麻里看護師と林好加看護師
DATA
和歌山医科大学 看護キャリア開発センター
和歌山県和歌山市紀三井寺811-1
https://www.wakayama-med.ac.jp/med/ncc/index.html
開設2014年
職員数8名(特定行為研修担当者3名)

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2020年8月号 TiaraNo.128より転載しています。