
滋賀県草津市の中核病院として地域の人々を広く支えてきた草津総合病院から、機能分化を図るかたちで開院した淡海ふれあい病院。患者さんの人生と向き合いながら寄り添うNBN(語り・物語に基づく看護)の考え方を取り入れた試みを実施しています。その結果、スタッフ一人ひとりが慢性期にある患者さんの思いを第一に考えた看護・介護を展開。そんな病院の取り組みの様子をお伝えします。
急性期と慢性期の機能を分け地域全体の医療を担う
滋賀県の南部に位置する草津市は、高齢化が進む一方で人口の流入も多く、年齢別人口構成が各世代にわたって散らばっているのが特徴。そのため多くの世代に対応した多様な医療が求められます。この地域の医療を支えてきた草津総合病院は、より患者さんに合った医療提供を行うため、新たに淡海ふれあい病院を開院しました。専門性の高い急性期医療を草津総合病院、地域に根ざした慢性期医療を淡海ふれあい病院と機能を明確にし、地域全体の医療を担っていこうというものです。
淡海ふれあい病院は2020年10月に誕生。草津総合病院(719床)から、地域包括ケア病棟(100床)と医療療養病棟(99床)、じん臓病ケア総合センタ ーを分離し、すでに2019年に介護療養病棟から転換していた介護医療院(100床)を内包するかたちで構成されています。地域との連携を図るための機能も有しており、高齢化によるニーズを満たし、地域包括ケアシステムのなかでその役割を果たしていこうとしています。

プロジェクトとして各病棟で行われている発表の様子

発表者に渡されるサンクスカードは看護部の手作り
NBNを取り入れることで慢性期看護・介護にやりがいを
「新病院としては開院したばACかりですが、院内199床がほぼ満床の状態です(2021年1月現在)。前病院からそのまま入院された患者さんも多いうえ、急性期から転院されてくる方も絶えません。スタッフたちが協力して頑張ってくれています」と話すのは西村寿加代看護部長。慢性期病床の場合、疾患は多岐の診療科にわたり、高齢で医療依存度や介護度が高い患者さんが多くなります。施設基準上、看護職の数は限られ、その業務負担には厳しいものがあるといいます。
このようななか、スタッフに慢性期看護のやりがいに目を向けてもらいたいと取り入れたのがNBN (narrative based nursing:語り・物語に基づく看護)です。NBM(narrative based medicine)の「医療」を「看護」に置き換えました。このNBNへの取り組みは、同院の開設準備が進むなか、現病院長である平野正満先生の発案から始まった「サンクスカード」に端を発します。それを看護部で関連づけた「NBNプロジェクト」として実施しています。

左から、片岡義子師長、堀池昌子副看護部長、田中紀子師長、椿原弘美師長、山田淳子師長。各病棟を支えている

西村寿加代看護部長
同プロジェクトは、毎週1回いずれかの病棟で朝15分程度の発表時間を設けて行われます。平野病院長と西村看護部長、堀池昌子副看護部長が同席し、それぞれの体験から感じた看護観や介護観の発表を傾聴します。発表者には平野病院長からサンクスカードと副賞が贈られます。看護師だけでなく、介護福祉士や看護補助者、リハビリテーションセラピストなど、同じ現場で患者さんと接するスタッフも参加。同僚と看護観などの共有を重ねることで、NBNの考え方は院内全体に浸透し始めているようです。
「患者さんには、これまでの健康状態、病気の捉え方、家族・経済的背景、価値観や信条、いままでの人生や考え方など、医療者に聞いてもらいたい、理解してもらいたいという思いがあります。このような語りに耳を傾け、心を寄せることで信頼が得られる。この信頼をベースに看護・介護を提供していくことを目指しています」(西村看護部長)

同院では院内デイセービスを実施している


病棟の垣根を超えて、参加可能な患者さんが集まる
患者さんから学ぶことがスタッフたちを成長させる
NBNを意識することで、患者さんをよく見るようになり、気づきが増えるといいます。そのためか、スタッフたちの看護や介護にも変化がみえてきたとか。患者さんへの言葉かけひとつにしても、より相手の状況や思いに配慮していることがわかるそうです。西村看護部長は「常に患者さんとその人生から学ばせていただいているという気持ちをもってかかわることが、スタッフたちを成長させているのだと思います」と話します。
人と人とのかかわりを大切にしながら、スタッフと一緒に病院を作り上げようとしている同院。地域の慢性期医療の担い手としての今後が楽しみです。

院内の随所に温かみを感じる演出がなされている。スタッフによる書道作品を展示
DATA
淡海ふれあい病院
滋賀県草津市矢橋町1629-5
https://www.kusatsu-gh.or.jp/ghk/omifureai
開設2020年
病床数199床
職員数250名うち看護職180名(2020年10月現在)
看護体制地域包括ケア病棟10:1、医療療養病床20:1
[主な施設内容]
地域包括ケア病棟、医療療養病棟、じん臓病ケア総合センター、草津介護医療院こころ・なごみ、居宅介護支援事業所ふれあい、草津市在宅医療介護連携センター

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2020年10月号 TiaraNo.130より転載しています。