
柏たなか病院は、2020年まで段階的に増床を実施し、一般病棟に、障害者施設等一般、緩和ケア、回復期リハビリテーション、医療療養、特殊疾患という病棟を加え、ケアミックス型の病院としてより幅広いニーズに応えられるようになりました。これに伴い看護を要する場面が増えたことから、口腔ケアを担う人材として病棟に歯科衛生士を導入。看護業務の分担とケアの質向上を図る取り組みを行っています。
病棟ごとの担当歯科衛生士が継続的に口腔ケアを展開


病棟構成が多様な柏たなか病院では、機能に応じ看護配置が異なるため、病棟によっては看護職の業務に余裕がなくなっているという現状がありました。
「特に医療療養病棟(以下、療養病棟)は、病床の9割以上が医療区分、ADL区分とも2〜3で、医療処置・管理とケア・介助の双方が常時求められます。看護スタッフの疲弊が懸念されました」と副看護部長の佐藤直也さんは話します。一方で看護部としては、療養病棟開設に伴い、長期臥床の患者さんに対する口腔ケアの重要性にも着目していました。そこで、歯科衛生士(以下、衛生士)を病棟に配置することで、看護職の業務負担を軽減すると同時にケアの質も高めたいと考えたのです。
2020年8月の増床に際し、新たに3人の衛生士が入職。以前から在職していた芦田奏子さんに、西部有里沙さん、辻真由美さん、川島聡美さんを加えて4人体制とし、療養病床と特殊疾患病床(4病棟/206床)での口腔ケアを業務の中心に据えました。当初新たなメンバーには戸惑いもあったそうです。
「これまで行ってきた歯科での診療補助や予防処置と病棟での口腔ケアとでは、違う業務をしているように感じました」(川島さん)
そこで2020年度は衛生士が業務に慣れることを第一にし、2021年度から業務体制の構築に着手。増床以前の主な業務であった一般病棟からの依頼や通所リハビリテーション(デイケア)に対するケアについては一定のルールを設けて整理し、療養病棟をメインにして担当制を取り入れました。
「初回介入時にまず評価を行います。口腔内の清掃状況や乾燥状態、歯牙・粘膜に問題がないかなど6項目についてアセスメントし、リスクを判定して介入頻度を決定。月1回のカンファレンスでリスク度合と回数の見直しを行います」(西部さん)
ハイリスク患者さんや口腔内の汚染の著しい患者さんについては、看護職と分担し口腔ケアの回数を増やしています。


療養病棟の看護職からみた業務とケアの変化
衛生士の介入について、4C病棟看護主任の廣瀬理沙さんは開口一番「とても助かっています」と話しました。看護職のみでは口腔ケアが十分でないと感じていたそう。「何より専門職の介入がアセスメントの幅を広げケアの質が上がりました」といいます。
「衛生士の介入後は、患者さんの発熱による抗菌薬の使用が減っているように感じています」と話すのは2C病棟看護師の会沢昌裕さん。洗口液など口腔ケア用品についてもアドバイスがもらえることが、より効果的な日常ケアにつながっています。
4C病棟ではベッドマップに印をつけることで、衛生士の介入状況が把握できるようにしたという廣瀬さん。「お互いにカバーし合うことで、患者さんによりよいケアを提供したい」と考えています。


専門職が各々の能力を生かし働ける看護現場の実現へ
衛生士も継続的な病棟介入による自身の変化を感じています。クリニックや大学病院などで勤務してきた辻さんは「短期目標や長期目標を明確にしてケアに入ることで、新たな発見がありました。自分の経験を生かして患者さんの重症化予防に貢献したい」と話します。芦田さんは「看護職との連携をより深めたい。病棟カンファレンスやサマリーの作成、嚥下リハビリテーションなどにもかかわることができればと思っています。患者さんのために何ができるかを考えていきたいですね」と、衛生士としての今後の動き方を見据えていました。
2021年8月の衛生士介入件数(合計)は平均41.7件/日。すでに衛生士が病棟での看護ケアに欠かせない存在となっていることがうかがえます。
「患者さんの安心・安全、満足のためには、さまざまな専門職の力を得て看護を展開するというかたちがあっていい。ゆくゆくは他病棟でも衛生士の介入を実施できればと考えています」(佐藤さん)


DATA
医療法人社団葵会 柏たなか病院
千葉県柏市小青田1-3-2
https://www.aoikai.jp/kashiwatanaka/
開 設 ●2015年
病 床 数 ●512床
職員数●720名 うち看護職287名(2021年12月1日現在)
看護体制 ●一般病棟10:1など
日本医療機能評価機構認定病院
[般病棟134床、障害者施設等一般病病棟棟構92成]床、一緩和ケア病棟20床、回復期リハビリテーション病棟60床、療養病棟176床、特殊疾患病棟30床

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2022年3月号 TiaraNo.135より転載しています。
