
埼玉県東部地区は全国的にも医師の数が少ないことから、近年新病院の誘致や病床の増床などが急速に進んでいます。そのような状況のなかで、脳卒中や循環器疾患、悪性腫瘍に対して積極的に高度医療を提供している越谷市立病院。周産期医療についても地域の担い手として力を発揮しています。その現場で多くの妊産婦や新生児を支える看護職は、専門職としてそれぞれにテーマをもち、連携しながら、地域にも目を向けた取り組みを展開しています。

母子の安全は自分たちが守る──助産師たちが24時間体制で対応
越谷市立病院の4-2病棟は、産科単科の病棟です。出産件数は全国的な傾向に違わず減少しているとはいえ、2021年度は447件でした。タイミングによ っては5〜6件の分娩が重なる日もあります。24時間体制で緊急搬送に対応しており、NICUでは32週以降の赤ちゃんを受け入れています。
「4-2病棟スタッフは32人全員が助産師。外来と病棟をローテーションで兼務し、妊娠・分娩・産褥の各期を通して、メンタルヘルスを大切にしたかかわりを継続的に提供しています」
こう話すのは師長の草間靖江さん。外来では、妊婦さんの身体的リスクを医師が確認し、助産師が精神的・心理的・社会的リスクをスクリーニングしてレベル判定を行い、プライマリ助産師を決めています。場合によっては、地域の保健センターと分娩前カンファレンスを行うこともあります。
助産師の坂野由布子さんは「プライマリ制ですが、スタッフは常に全員で母子の安全を守っているという意識をもっています」と話します。みんなでお産を見守り、フォローし合い、赤ちゃんの誕生を祝う ──そんなスタッフの姿がみえてきます。



多様なリスクを抱える妊婦さんにも専門性を身につけて支援にあたる
近年ハイリスクの妊婦さんが増えており、精神疾患合併妊婦、若年妊婦、妊婦健診未受診妊婦などの特定妊婦*1が多くみられます。
2019年には、産科医師、助産師、リエゾンナース、ケースワーカーが中心となって「埼玉東部周産期メンタルヘルス研究会」を立ち上げました。助産師の長塩彩香さんは「この活動で、地域の精神科や保健センターとの連携が円滑になり、チームで妊婦さんを支えられるようになってきました」と話します。自身の学びの成果も出ており、周囲が見逃していた強迫性障害*2の状態に気づき、妊婦さんを治療につなげることができたケースもあるとか。
現在は、地域に出てからの母子に対してどのようなサポートができるかを模索中。ゆくゆくは、緊急性の高いケースに誰もが迅速に対応できる地域システムをつくりたいといいます。
一方、若年妊婦さんが抱える問題や子どもの虐待予防に向き合っているのは坂野由布子さん。2020年院内に発足した「子ども虐待対応委員会(CPT*3)」のメンバーでもあります。
「若年妊婦さんの場合、望まない妊娠も多く、家庭環境や親子関係の問題から周囲の支援が得られないケースが少なくない。それが虐待につながることも。そんな彼女たちに、当院がSOSを受け入れる場所であることを伝え続けたいと思っています」と坂野さん。
以前から産科で行っている小・中学校での性教育「いのちの授業」にも取り組み、日本版性暴力対応看護師(SANE-J)*4の資格取得に向け励んでいます。そして、産後の母親を対象とした訪問看護の実施を目標としています。




助産師が自らテーマをもって母子のよりよいサポーターに
草間さんは「スタッフには助産師として輝いてほしい。そのために各自が見出したテーマや思いをかたちにできるようにするのが管理者の仕事だと思っています」と話します。部分休業制度*5を取得しているスタッフが数名いても、お互いをカバーし合える働きやすい職場づくりに努めています。
医療安全管理者として産科病棟ともかかわりをも っている師長の上原由美子さんも「4-2病棟は、若いスタッフの意見をどんどん取り入れて、新しいことに挑戦する姿勢があります。頼もしいですね」と、積極的な取り組みを応援しています。
最後に「コロナ禍で休止している『育児支援サロン』を再開し、毎月定期的に開催したい」と自身の目標についても語ってくれた草間さん。周産期にある母子が抱える多様な問題に取り組む同院の助産師たちは、出産・育児のよりよいサポーターを目指して着実に歩を進めています。


*1 出産後の養育について出産前に支援を行うことが特に必要と認められる妊婦。
*2 意思に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考え(強迫観念)やある行為をしないでいられない強迫行為により、日常生活に影響を及ぼすこころの病気
*3 「Child Protection Team」の略。*4 性暴力被害者支援を行う専門資格として日本フォレンジック看護学会が認定。*5 終業時刻を繰り上げられる院内制度
DATA
越谷市立病院
埼玉県越谷市東越谷10-32
https://www.mhp.koshigaya.saitama.jp/www/index.html
開 設 ●1976年 病 床 数 ●481床
職員数●647名 うち看護職404名[助産師32名](2022年10月現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/埼玉県がん診療指定病院/災害時連携病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年2月号 TiaraNo.140より転載しています。
