
都立の3つの小児病院(清瀬・八王子・梅ヶ丘)を統合し、東京都における周産期・小児医療の拠点として2010年に開設された東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)。多摩メデ ィカル・キャンパス*1内の医療機関と連携し、周産期から小児・思春期の子どもを対象に、一般医療機関では対応が困難な疾患に対して高度で専門的な医療を提供しています。多摩地域に留まらず都内外の子どもたちの生命と健康を守る同院の医療・看護の様子をお伝えします。


子どもたちの笑顔を守るため「森のホスピタル」をかたちに
東京都立小児総合医療センターは、「すべての子どもたちが笑顔になれるよう最善の医療を行う」という基本理念に基づき、(1)東京都における小児医療の拠点、(2)子どもの成長とともに歩む医療の提供、(3)「こころ」と「からだ」を総合した医療の提供、(4)子ども中心の医療の提供、(5)社会とともに創る医療の提供を運営理念に掲げ、子どもの成長過程に対応できる医療体制を整えています。
「子どもたちには敬遠されがちな病院に親しんでもらえるよう『森のホスピタル』を当院のコンセプトにしました。1粒のどんぐりの実が大木に育ち、仲間が集う森になるとういうストーリー*2で子どもの成長を表現しており、院内には森や自然をイメ ージさせる工夫がなされています」
看護部長の佐野美香さんは、1階の奥にあるどんぐりの大木のオブジェに足を運びながら、同院が子どもたちに向ける思いを話してくれました。
病棟の名称もひと味違います。1階の総合診療科は「風の一番地」、病棟は5階が「丘」、6階が「森」、 7階が「空」と名付けられ、各棟がそれに合わせた雰囲気に。子どもたちが少しでもリラックスして療養生活を送れるよう配慮されています。
また、つらいことも多い療養の助けとして、ファシリティドッグの「アイビー」を2019年に導入しています。口腔内の清潔が治療に欠かせない血液腫瘍科の小児患者さんが「アイビーがしているから」と嫌がっていた歯磨きをするようになった例もあり、「アイビー効果」は着実に現れているようです。「少しでも子どもたちが笑顔でいられるような取り組みを増やしていけたらと思います」(佐野さん)



高度で専門的な医療を支える看護職の育成に取り組む
新型コロナウイルス感染症への対応として広く知られるようになったECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)ですが、同院では以前からその導入を進めてきました。背景には気管狭窄に対する気道形成術を先駆的に行ってきたことがあり、術中・術後の呼吸管理に用いています。ドクターカーを派遣し患者さんにECMOを装着・搬送する「ECMO搬送」も数多く実施。遠方からの要請にも応えています。
また、腎移植や造血幹細胞移植にも積極的に取り組んでおり、患者さんをチームで支えています。
「これらは当院が提供する高度専門医療の一部。小児が対象である難しさもあり、看護部では適切な看護実践のために人材育成に取り組んでいます」と佐野さんは話します。その一環として「特定行為に係る看護師の研修制度(以下、特定行為研修)」の受講を進め、PICU(小児専用集中治療室)でも活躍できる看護師を養成。特定行為研修修了者がPICUで医師の診療の補助業務にあたることで、タスクシフトと業務の効率化を実現しています。この取り組みは、日本看護協会「看護業務の効率化先進事例アワード2021」で最優秀賞を受賞しました。


小児専門の医療機関として地域とともに子どもたちを見守る
「子どもの成長発達に合わせた処置や対応、家族へのサポートなど、小児看護には成人に対するのとは異なる知識・技術・経験が求められます。新人看護職がつまずくことも多く、当院ではそれをフォロ ーする教育研修の構築も進めています」(佐野さん)
同院では、この研修実績を生かし地域への情報提供も始めました。2021年度には、地域で生活する医療的ケア児の成長にかかわる保育園、学校、訪問看護ステーションなどに対し、希望に応じて学習会を実施。38件のべ約800人の参加がありました。
佐野さんは「少子化が進むなか、社会の構造基盤としても子どもを育むことは重要だと思っています。子どもたちの未来に向けた歩みを支えられるよう、私たちに何ができるかを考え、かたちにし、実現していきたいですね」と話します。その高度な専門性で子どもたちや家族、そして地域を支える同院の今後の取り組みに期待が寄せられます。


*1 同じ敷地内で、多摩総合医療センター、小児総合医療センター、神経病院が相互連携を図り、新生児、小児から成人まで多様な疾患に対して高度で専門的医療を提供する多摩地域の医療拠点。東京都がん検診センター、府中療育センター、府中看護専門学校も近接している。
*2 同院ホームページで「森のホスピタル」の物語(動画)を観ることができる。https://www.tmhp.jp/shouni/info/m-hospital.html
DATA
東京都立小児総合医療センター
東京都府中市武蔵台2-8-29
https://hospital.city.chiba.jp/kaihin/
開 設 ●2010年 病床数 ●561床
職員数1220名 うち看護職680名(2022年12月現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/外国人患者受入れ医療機関認証制度認証医療機関/東京都総合周産期母子医療センター/東京都こども救命センター/東京都災害拠点病院/小児がん拠点病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年4月号 TiaraNo.142より転載しています。
