
滋賀医科大学医学部附属病院は、同院看護部と同大学看護学科が連携して開発した「臨床教育看護師育成プラン」が、2009年度に文部科学省大学改革推進事業に採択されたことを機に「看護臨床教育センター」を設置しました。以来、同センターでは臨床教育者の育成を軸にさまざまな事業を実施。今回は、滋賀県の依頼でスタ ートさせた「滋賀県在宅医療推進サポート事業」により地域へ広がる活動の様子をご紹介しましょう。

在宅医療・介護・福祉人材を育てる 新たな事業を展開中
滋賀医科大学医学部附属病院看護臨床教育センタ ー(以下、センター)では、?臨床教育看護師育成、?助産師就労支援、?新人教育研修、?看護スキルズラボ運用、?教育交流支援、?地域の看護職・教員・多職種研修という6つの事業を行っています。 2009年度から5年間は文部科学省の事業に採択された「臨床教育看護師育成プラン」により、院内で看護職の育成にあたる臨床教育看護師*(以下、教育看護師)を養成。その間に誕生した教育看護師は、新人看護職員研修、所属部署や同大学看護学科での演習指導などを行い、臨床教育者として重要な役割を果たしています。
「文科省の事業が終了し、教育看護師の養成が軌道に乗ったタイミングで、滋賀県から地域医療再生計画『滋賀県在宅医療に関わる人材育成事業』の依頼があり、『多職種連携共通人材育成プログラム』の作成に着手。以降『滋賀県在宅医療推進サポート事業(以下、サポート事業)』として、在宅で働く多職種に向けた研修を行うことになりました」
センター長・准教授の多川晴美さんはこのように話します。サポート事業は、新たな在宅医療ニーズに対応できる人材の育成とスキルアップの仕組みの構築が目的で、在宅医療・介護・福祉を支える看護師、薬剤師、介護士、介護支援専門員などが対象。多職種が一堂に介してスキルアップを図る研修、訪問や施設の在宅看護職の実践力を高める研修など5つのプログラムを展開しています。
*院内認定資格でクリニカルラダー?以上が受講条件。看護臨床教育センターでの「臨床教育看護師育成プログラム」を1年間受講後、プレ臨床教育看護師の認定を受けて1年間自部署の教育的課題に取り組み、その活動プロセスについて審査を受ける。合格者には臨床教育看護師資格認定証が交付される。



ともに学ぶシミュレーション研修が各職種にもたらす新たな気づき
サポート事業のプログラムのなかで、受講者の多くが新たな気づきを得ているのが「多職種で学ぶ在宅スキルアップ研修」です。テーマに沿って多職種が一緒にシミュレーション研修を行うもので、住居を模した施設で各職種が実際の対応を再現します。「訪問での在宅ケアは、1人で訪れて1人で行うことがほとんどです。看護職は看護の、介護士は介護のことしかわかりません。場合によっては、同じ職種でもほかの人がどんな対応をしているのかわからないこともあります。ですから、ほかの人・職種のケアに触れることは貴重な体験になっているようです」と話すのは、シミュレーション研修のシナリオを作成する講師の小野幸子さん。自身もシナリオ作成や研修を通し、発見や驚きがあったといいます。受講者からは「さまざまな職種の人と話ができ、考えを聞き、自分の行動の見直しができた」「他施設、他職種の人の思いが聞けた」「地域と病院の連携に課題を感じた」などの声が聞かれています。
また「出前研修」も好評です。研修を希望する施設等にセンターが講師を派遣し、現地で研修を行うもので、2019年度には計9回の出前研修を実施。その後コロナ禍により研修機会が減るなかでも、希望に応じて研修を行い、多職種が意見を交わしながら学ぶことのできる貴重な時間を提供しています。
「新型コロナウイルス感染症が発生した当初は感染対策研修への希望が多かったのですが、最近は看取りの研修が増えています。一緒に働く多職種での研修は直接業務に結びつく。施設長が自施設の課題を確認することも多いようです」(多川さん)




多角的な事業を通して地域の人材教育の拠点を目指す
センターは、県内の医療機関(200床以下)の新人看護職員研修も担っています。「これにより各施設の管理者との結びつきも強まりました。当センタ ーが将来的に滋賀県の人材教育の拠点になれればと考えています」と多川さんは話します。
看護部長の小寺利美さんは「教育看護師は物事を俯瞰できる力が養われます。そういった人材が臨床にいることで現場はよりブラッシュアップされる。当院で培った人材育成の仕組みは、地域での取り組みにも結びついていると思います」とセンターの事業を評価。地域の要請に応えながら広がるセンターの事業に、今後も注目していきたいものです。
DATA
滋賀医科大学医学部附属病院
滋賀県大津市瀬田月輪町
https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/
開設 ●1978年 病床数 ●603床
職員数1140名 うち看護職719名(2023年4月1日現在)
看護体制 ●一般病棟7:1
日本医療機能評価機構認定病院/特定機能病院/滋賀県がん診療連携拠点病院/災害拠点病院(地域災害医療センター)/滋賀県総合周産期母子医療センター/滋賀県アレルギー疾患医療拠点病院/小児がん連携病院

本記事はニプロ株式会社発行の看護情報誌「ティアラ」2023年6月号 TiaraNo.143より転載しています。
